化粧品ブランド、ドクターシーラボを展開するシーズ・ホールディングス(HD)は、米医療機器・医薬品大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)グループと資本・業務提携し、アジア市場での販売をJ&Jに委託する。
J&Jの子会社に、創業者である城野親徳会長、石原智美社長、城野会長の妻である城野智子氏らが保有する株式のうち、822万株を売却する。
J&JはシーズHDの株式を最大19.9%保有する第2位の株主となる。筆頭株主は城野会長の資産管理会社CICで28.8%保有している(2016年1月31日現在)。
資本・業務提携に伴い、シーズHDはドクターシーラボ、ラボラボ、ジェノマーの化粧品3ブランドのライセンス事業をJ&Jのアジア統括会社に譲渡。J&Jが日本以外の国でシーズHDの商品の販売を行う。一方、国内ではJ&Jの化粧品をシーズHDの販路で販売する。
調達した資金は、今年1月に子会社にしたエステティック・サロン、シーズ・ラボの事業拡大に充当する。シーズ・ラボは首都圏や大都市に20店舗を展開している。城野会長の個人会社で、社長は石原氏。
シーズ・ラボの事業拡大のため、エステティック・サロンの運営会社や、女性のための医薬品を製造・販売する会社のM&A(合併・買収)を予定している。
●皮膚科医の知見を生かしスキンケア商品を開発
城野氏は医師である。1963年5月、外科の開業医の家に生まれた。
95年、城野氏は32歳の若さで皮膚科医院のシロノクリニックを開業すると、皮膚に悩みを持つ患者が殺到したという。
城野氏はさまざまな皮膚の悩みを抱える人たちと出会い、スキンケアの研究を始めた。1年かけてアクアコラーゲンゲルの開発に成功。患者だけに販売していたが、口コミで評判が広がった。肌のトラブルに悩む人々の要望に応えるため、99年2月にドクターシーラボを設立。海洋性コラーゲンを主成分とするスキンケア商品の通信販売を始めた。
シロノクリニックは恵比寿、銀座、池袋、横浜、大阪で開所。石原氏が医師と経営者の二足の草鞋を履き、城野氏のビジネスパートナーとなった。
石原氏は専門学校を卒業、95年からシロノクリニックに勤務。99年にドクターシーラボの設立に参画した。
00年3月期に3億円だった売上高は倍々ゲームで急成長を遂げた。石原氏は10年「ビジネス・ステーツウーマン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。ハーバード・ビジネス・スクール・クラブ・ジャパンが、既成概念にとらわれず果敢にチャレンジしている女性企業家を選ぶ賞である。10年3月には、『前向きな不満があなたを変える――私が普通のOLからドクターシーラボの社長になった理由』をダイヤモンド社から出版した。
●グループ売上高1000億円が目標
急成長してきた化粧品通販は今、踊り場を迎えている。国内首位の資生堂や世界トップのロレアルなどの有力メーカーの化粧品がインターネットで買えるようになり、消費者の選択肢が格段に広がったからだ。
そこでドクターシーラボは実店舗での販売にも乗り出した。国内では百貨店などに159店を展開するほか、海外でも18店で買えるようになった。
15年12月、シーズHDに社名変更。
持ち株会社にしたのはM&Aを積極化するためで、エステティック・サロンを買収したのは手薄だった若年層を開拓するのが狙いだ。
16年7月期の連結決算の売上高は前期比6%増の400億円、営業利益は5%増の81億円、純利益は6%増の52億円を見込んでいる。『会社四季報』(東洋経済新報社)の予想では、売上高は380億円、純利益は52億5000万円。
M&Aを積極化して、グループ全体で5~6年後をメドに年商1000億円を目指すという。
化粧品のネット通販に大手メーカーが次々と参入し、競争が激化してきた。J&Jと組むことで、苦戦の通販のテコ入れを図る。17年初頭にシステムを刷新し、継続的に商品を購入してくれる顧客を優遇する販促策を打ち出す。
(文=編集部)