「自分がまわすイベントに来てくれる友達は神!」
東京都心のとある有名クラブでDJをしている友人が、そう語っていた。そこはメインフロアの他に3つの小スペースがある“箱”なのだが、彼がまわしているのは一番奥の小さなフロア。
すべてのクラブイベントがそうとは限らないが、多くの場合、集客ノルマは存在するようだ。もちろん、メインフロアでまわすようなDJやパフォーマーには、そういったノルマは存在しない。なぜなら、その人たちは名前だけで集客が期待できる「スター」だから。
運営サイド側からすれば、彼らに支払った高額なギャラを回収して利益を上げるには、一枚でも多くのチケットを販売する必要があり、そのために無名DJたちは自らの友人をイベントに呼んだり、果ては出番の前後で店頭に立ちフライヤーを配ったりしなければならない。
ちなみにノルマが未達だからといって、金銭的ペナルティはないらしい。しかし、あまりに集客が少なすぎると、フロアに客が集まる時間にプレイさせてもらえなかったり、最悪の場合クビになることもあるので油断はできない。
そんな理由から無名DJや駆け出しのDJにとって、イベントに来てくれる人はかけがえのない存在。そんなファンをひとりでも増やそうと、なかには自分の出番が終わってからクラブ内でナンパ待ちをして、男から話しかけられたら「今度イベントがあるんで来てください!」と積極的にPRする女性DJの姿も目につく。
●ギャラは出ても、ほんの小遣い程度
そういったDJたちの多くが、仕事を掛け持ちしながら、ボランティアでやっているという。大きいクラブだと利益もたくさん出るため、下っ端のDJたちにもギャラを渡しているらしいが、ほんのお小遣い程度とのこと。
一方、海外の一流DJになると巨額の報酬を得ているようで、カルヴィン・ハリスというスコットランド出身のDJの年収はなんと約78億円。デヴィッド・ゲッタというフランス出身のDJの年収は約44億円にも上るというのだから、なんとも夢のある仕事である。
もちろん、そんな大成功をするDJなどほんのひと握り。日本においても、年収1000万円プレイヤーはほんの数人程度。専業DJとしてやっていけているのは1000人に1人といわれ、月収20~30万円を稼いだだけで御の字という世界なのだ。
このように、大きな格差が横たわっている厳しいDJ業界。もし、DJの友人がいて、イベントに誘われることがあれば、たまには顔を出してあげてほしい。きっと、あなたのことを神のようにありがたがってくれて、酒の1杯でもおごってくれるはずだ。
(文=小島浩平/ロックスター)