武豊騎手の実弟幸四郎騎手、アグネスタキオンを手掛けた長浜博之調教師ら6人のホースマンが現役生活に幕を下ろしてから1週間、今週は5人の新人騎手がデビューを控えている。
16年ぶりのJRA女性騎手誕生に沸いた昨年の「菜七子フィーバー」ほどの注目度はないものの、今年は早くも「花の33期生」になるのではないかとウワサされるほどのハイレベル。
中でも一際大きな注目を浴びているのが横山武史騎手だ。関東のトップジョッキー横山典弘騎手の三男であり、「武史」という名前の由来が「武豊騎手の歴史を超えられるように」と願いを込めてつけられたらしいことからも期待の高さがうかがえる。
さらに横山典騎手は『デイリースポーツ』の取材に「アイツは相当なもんになる」と豪語。どうやら酒席での発言だったらしいが「オレが思うに約10年なんだ。トップになれるような才能を持つジョッキーってのは、だいたい10年ごとに現れているんだよ。周期的にウチのやつも"それ"に当てはまる」と息子を“10年に一人の逸材”と力説している。
横山典騎手も相当飲んでいたようだが、確かに昨年が武豊騎手のデビュー30周年であり、10年という周期的には当てはまる。武豊騎手や蛯名正義騎手が競馬学校の3期生で、福永祐一騎手や和田竜二騎手が12期生、新人最多勝記録を作った三浦皇成騎手が24期生と、横山典騎手が話す「約10年周期説」も単なる冗談ではなさそうだ。
「10年周期の根拠ではありませんが、単なる偶然ではなく『環境』の面も影響していると思います。いくら才能を持った新人でも、ある程度強い馬に乗れなければ勝てないのが競馬。つまり武豊や福永祐一といった“スター”が出現するには、本人の才能以上に馬主や調教師といった周囲のバックアップが必要不可欠です。
ある程度の年数がなければ、周囲の関係者にも特定の新人をバックアップする余裕が生まれない。もちろん、毎年同じ関係者が新人騎手を育てているわけではありません。ただ、中心の当事者は違っても、スター騎手が生まれるような大きなバックアップには競馬界全体を巻き込むような広い範囲での協力が必要です。そういった意味で、手塩に掛けて育てた若手騎手が援護を必要としないほど独り立ちするには、だいたい10年くらい掛かるのかもしれません」(競馬記者)
無論、単なる横山典騎手の“親バカ”だけではない。横山武史騎手は模擬レースで3連勝。全8戦で総合ポイントを争う「競馬学校チャンピオンシップ」で見事優勝を果たした通り、同期の中ではすでに抜けた実力を示している。
また、肝心な周囲のバックアップにも抜かりはなさそうだ。
今年の新人騎手に騎手免許が交付された先月13日には、すでに横山武史騎手のデビュー戦の騎乗が決定。デビュー当日となる4日の中山1レースで、加藤征弘厩舎のルーナデラセーラーに騎乗することとなった。当然ながら同期最速。歴史を振り返っても、異例の早さといえる。
それも単なる形だけの“デビュー祝い”ではなく、前出の記者が言うには「ワンチャンスありそうな馬」ということらしい。
「ルーナデラセーラーはデビューしてから大きく負けていませんし、今回と同条件のここ2戦が4着と6着。横山武史騎手なら斤量面で3kgの恩恵がありますし、上位争いをする可能性は充分にあると思います。福永祐一騎手のような“初騎乗初勝利”もあり得るかもしれませんね」(同)
ルーナデラセーラーだけでなく、デビュー週の合計8鞍は同期の中では最多タイ。それも単なる“量”だけでなく、今回が昇級戦ながら前走1着だったクラウンロマンなど“質”も揃っているようだ。
「目標は父(横山典弘)。騎手の腕が試される天皇賞・春を勝ちたい」という横山武史騎手。華々しいデビューを飾り「新時代」の幕開けを告げるのか。ウワサの大型新人がいよいよ今週、そのベールを脱ぐ。