「飲食店はいくら儲かるのか?」
これは、みなさんが興味を持っていても、なかなか聞けないことですが、「お店をやってみたい」と思う人にとっては、とっても気になる現実と本音の部分です。さまざまなケースがありますが、平均的な一例をお教えしたいと思います。
飲食店をきちんと経営しようと思った場合、意識しなくてはならない売上に占めるおおまかな費用の配分は以下のとおりです。
・材料:30%
・人件費:30%
・家賃・管理費:10%
・光熱費・消耗品・雑費:10%
・償却や借入れの返済:10%上限
・利益:10%
この基準をベースに、大きな企業が展開する店舗ではなく、個人経営規模のサイズを想定して考えてみましょう。「脱サラしてお店を出したい」と思う人が探す物件の規模は、15~20坪くらいのケースが多いです。広すぎるとリスクも高まるので、目が行き届きそうな広さで、開業資金も個人でも準備できるラインとして15坪のお店を例にします。
●人件費
飲食店は費用のかけ方をスリムにした場合、1坪当たりの月の売上が20万円を超えれば繁盛店といえ、2店舗目の出店が考えられます。15万円/坪の売上でも、費用のかけ方を工夫すれば、2店舗目の可能性も十分あります。ですので、この売上レベルをボーダーラインとして、今回のケースに当てはめてみます。
・15万円/坪の売上 × 15坪 = 225万円
これが月の売上となり、このうちの10%=22万5000円がオーナーの月の利益、取り分です。これはあくまで現場を人に任せた場合です。もし自分が現場のスタッフとして働く場合は、この利益のほかに「人件費」からも自分の分の報酬が入ります。
人件費は費用全体のうちの30%を占めます。15坪のお店をオーナーを含む3人のスタッフで運営したとしましょう。
・月の売上225万円 × 10% = 22万5000円
が人件費としてひとりに支払うべき給料となります。
さらに初期投資を抑えたり、初期投資の回収・償却が終われば、償却10%部分の枠から利益・キャッシュが発生してきます。初期投資の償却が終わる頃になると、店内手直し(修繕)や設備の買い替え等の臨時出費が発生する可能性も高まりますが、うまくいけば売上の10%分=22.5万円/月の上積みも可能です。ただし、この部分は修繕積立や臨時出費の準備金として積立して、できるだけ別枠にしておきたい部分でもあります。
オーナー取り分とスタッフとしての給料を合わせると、上記償却部分を利益から外した場合、月45万円(年収540万円)がそこそこ繁盛しているお店のオーナーの給与となります(初期投資の償却が終わって一部を積み立て、一部を利益とみるなら、年収600~700万円台も可能です)。
●お店の売上の限界を意識する
店舗オーナーは、1店舗だけの経営ですと、売上をさらに伸ばそうと思っても、お店に入れるお客の数に限界があり、かつ客単価にもそれなりに限界があるので、多店舗展開して取り分を増やそうとします。
逆に費用配分が上記のような配分にならずに、少しずつでも「足が出ている」場合、オーナー利益のはずの売上の10%が削られてゆき、利益がなくなってしまい、自身が現場に入っていて1日中あくせく働いて休みも週1日しかないのに、月収22万5000円(年収270万円)といった状況に陥ってしまいます。
これは、レアケースというより、結構みられるケースです。特に人件費を総費用の30%以内に収めることができなかったり、費用をなんとなくいろいろ使ってしまってしまったりするオーナーは、経費を一定枠内に収めることに苦労しています。
また、売上自体を増やそうとしても、そこそこ繁盛しているお店であれば、客数を増やすために回転率を上げるか、客単価を上げるしかありません。
たとえば、月商225万円で25営業日想定だと、昼2.5万円+夜6.5万円で1日平均9万円の売上となります。
こうした店舗で、急激な回転率や客単価の変更はかなり困難です。お店の雰囲気やコンセプトが変わってしまい、お客が離れてしまいます。ただし、最初から回転率を意識したお店のなかには、坪50万円/月以上の売上を上げているお店も存在しています。そんなお店のオーナーは、かなり儲かっています。
坪売上50万円/月×15坪=750万円の月商だと、10%=75万円/月がオーナーの利益になります。各種固定費比率を中心に経費も抑えられるので、1カ月100万円以上の利益が出ることでしょう。
お店を出すには車1台分くらいの開業資金で出店することも可能ですが、出すことよりも続けることのほうが大変です。もし「やってみようかな」と思ったら、儲かりにくいお店にならないよう、最初からお店の売上の限界を意識し、費用の掛け方もスリム化した店舗づくりが大切です。始めてみて「こんなはずじゃあなかった」ということにならないよう、お店の利益や自分の取り分になる給料について、予測はシビアにしっかりしておきましょう。
(文=江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部代表)