石原さとみが主演を務める今クールの連続テレビドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の第1話が12日、放送された。
ある日、法医解剖医・三澄ミコト(石原)が勤務する不自然死究明研究所(UDIラボ)を、息子の死因に疑問を持った初老の夫婦が訪れ、遺体解剖を依頼する。
しかし、三澄と久部の粘り強い調査によって、そのクッキーは男性が出張先のサウジアラビアでお土産として買ってきたものであり、さらに2人の死亡直前の状況、そして解剖結果などからMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスが原因であることを突き止めた。MERSは強力な感染症であるため、男性の勤務先をはじめ帰国後に接触した人々に隔離などの処置が行われるなどして社会問題に発展。さらに男性はウイルス感染が疑われる症状があったにもかかわらず普段通りの生活を送っていたことから、接触した取引先会社の女性は死亡し、勤務先をはじめ広くウイルスを拡散させた疑いが持たれ、遺族は大バッシングを受ける。
ところが、男性の恋人・馬場との会話から三澄は、実は男性は出張先ではなく、帰国して3日後に検診を受けた大学病院で“院内感染”した疑いを持ち、UDIラボの同僚で優秀な法医解剖医・中堂系(井浦新)が掴んだ証拠資料のおかげで、その大学病院の研究室から漏れたMERSコロナウイルスによって直近数カ月で同病院の多くの入院患者が死亡していたことを突き止める。三澄の強い説得により、ついに同病院の院長は会見を開き、院内感染の事実を認め、男性の死因もそれが原因であったと釈明し、遺族の名誉は回復された。
●かなり完成度の高いドラマ
以上が第1話のあらすじであるが、結論からいうと、“面白さ”という点ではここ数年の連ドラのなかで群を抜くほどの作品に仕上がっている。たとえば、前半では馬場が犯人だと視聴者に思わせておきながら、実はただの個人的な恨みによる殺人ではなく伝染病であることが明かされ、一気に社会問題として日本中を驚かせる事件に発展し、男性が“加害者”とされバッシングを受けるという展開には見ていて素直に驚いた。
さらにそれでは終わらず、実は男性は検診に行った大学病院でウイルスに感染した“被害者”であり、大学病院による“院内感染隠蔽”という問題に発展し、男性と遺族の名誉が回復されるというストーリーによって、視聴者は2度目の驚きを味わう。いい意味での裏切りが満載で、無駄なシーンも皆無、かなり完成度の高いドラマだ。
こうした縦軸の物語に加え、三澄や久部をはじめとする、さまざまな過去や事情を抱える登場人物たちの人間模様が織り交ぜられている点も、ドラマをいっそう重層的に仕上げる要因となっている。
たとえば三澄は、冒頭で交際相手から結婚のプロポーズをされるのだが、嬉しい半面で本当にその相手と結婚してよいのか、心の片隅で迷いがある。
そんな三澄、そして久部には他人には言えない過去があることが第1話では匂わされており、今後、2人を含む登場人物たちの人間ドラマにも期待が高まる。
このほかにも、特に石原さとみ、市川実日子の掛け合いも見所で、なにより2人の“絵的”な美しさはいうまでもない。女性の私でもずっと見ていたい気になってしまうのだから、多くの男性視聴者は釘付けになっているに違いない。
脚本は一昨年の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(同)の野木亜紀子氏、プロデューサーは『リバース』『夜行観覧車』などの話題作を手掛けてきた新井順子氏。これで面白くないはずはない。『アンナチュラル』、“見ないと損をするドラマ”だと断言したい。
(文=米倉奈津子/ライター)