いよいよ、プロ野球の開幕だ。シーズンを心待ちにしていたファンも多いことだろう。

今年は、メジャー帰りのレジェンドたちの活躍も期待されている。読売ジャイアンツに復帰した「雑草魂」の上原浩治投手、7年ぶりに古巣の東京ヤクルトスワローズに戻った青木宣親選手だ。

 また、今年から中日ドラゴンズのユニフォームを着ることになった松坂大輔投手も話題を集めている。日本球界復帰後、まったく活躍できずに引退もささやかれていただけに、特に注目度が高い。まだオープン戦だというのに先発した試合は観客で埋まり、普段は空席が目立つナゴヤドームもほぼ満席となった。3月25日の千葉ロッテマリーンズ戦では、先発して5回3失点と負け投手にはなったものの、「松坂の投げる姿を一目見たい」という野球ファンがいかに多いかを目の当たりにした。

 近年、筆者はずっと沖縄キャンプを見学しているが、ドラゴンズの1軍キャンプ地である北谷公園野球場の人出は例年の倍以上で、まさに松坂フィーバーの再来だった。しかも、彼は地道な連携プレーの練習にも参加しており、練習後にはサイン会まで催してファンと交流していた。ここ数年、優勝から遠ざかり鬱々としていたドラファンには、まさに暁光に見えることだろう。

 無論、若手も忘れてはいけない。体調不良で開幕1軍こそ逃したものの、北海道日本ハムファイターズの清宮幸太郎選手の活躍を楽しみにしているパ・リーグファンは多いだろう。昨年の最優秀新人賞に輝いた、京田陽太選手(ドラゴンズ)と源田壮亮選手(埼玉西武ライオンズ)の2年目にも期待したい。


 また、今年のセ・リーグは巨人vs.阪神の伝統の一戦でスタートするが、どちらかが広島東洋カープの連覇を阻止できるのか。パ・リーグでは、選手層が厚すぎる福岡ソフトバンクホークスの牙城を、他チームがどう崩していくのか。興味は尽きない。

 しかし、筆者はスポーツライターではないので、専門外の野球についてはここまでにしよう。今回取り上げるのは、いわゆる「プロ野球応援定期預金」について。野球ファンなら、その存在を知っているだろう。なんとなく、「『優勝すればプラス○%』などというように、チーム成績に応じて利率が上乗せになる定期預金」と認識しているのではないだろうか。

 しかし、このプロ野球応援定期、ずいぶんと様変わりしていた。さらには、「これも時代の流れか」という内容も散見された。ファンならぜひ知っておきたい、2018年のプロ野球応援定期預金事情についてお伝えしたい。

●「優勝したら金利7.7倍」を実現させた星野阪神

 プロ野球応援定期がいつから始まったのかは、定かではない。調べると、1998年あるいは99年からの記録があるので、もう20年近く販売され続けている金融商品ということになる。


 しかし、預金の宿命か、マイナス金利のあおりを受けて金利上乗せのうまみはすっかり消えた。尼崎信用金庫が公表している「がんばれ阪神タイガース定期預金」の実績データによると、2002~03年は「優勝したら金利7.7倍」という驚くべき数字を出していた。しかも、03年には故・星野仙一監督の下で見事にリーグ優勝を果たしたのだから、決して夢幻や絵空事ではなかったのだ。

 ところが、18年に発売されているプロ野球応援定期預金では、チーム成績に応じた金利上乗せ型は、セ・リーグは以下の3行しかない。(金利はすべて税引前)

【広島銀行「<ひろぎん>カープを応援しよう!定期預金」】
募集期間……2018年3月1日(木)~7月31日(火)
預入れ金額……10万円以上500万円以下
適用金利……スーパー定期・スーパー定期300(1年物)の店頭表示金利に以下の通り上乗せ。
(1)カープ主催ゲームでの観客動員数が165万人以上の場合は、リーグ優勝で+0.10%、クライマックスシリーズ進出で+0.05%、4位以下で+0.025%。
(2)カープ主催ゲームでの観客動員数が165万人未満の場合は、リーグ優勝で+0.05%、クライマックスシリーズ進出で+0.025%、4位以下は上乗せなし。なお、クライマックスシリーズに進出のうえ日本シリーズに出場した場合も、「優勝」時の金利上乗せを適用

【もみじ銀行「カープV預金2018」】
募集期間……2018年3月1日(木)~6月29日(金)
預入れ金額……10万円以上1000万円未満
適用金利……カープのリーグ成績により、スーパー定期・スーパー定期300(1年物)の店頭表示金利に以下の通り上乗せ。リーグ優勝で+0.10%、2位で+0.05%、3位以下で+0.025%

【横浜信用金庫「<よこしん>横浜応援定期2018」】
募集期間……2018年3月1日(木)~5月31日(木)
預入れ金額……10万円以上1000万円未満
適用金利……横浜F・マリノスと横浜DeNAベイスターズの最終順位に応じて、契約日のスーパー定期1年ものの店頭表示金利に以下の通り上乗せ。両チームが優勝した場合は10倍、どちらかが優勝した場合は5倍、どちらかが2位または3位の場合は3倍など。

●プラチナチケットが当たる特典も

 数年前に調べたときは、「広島も横浜も、優勝なんて夢のまた夢……」という成績だったことを考えると、今では現実味のありすぎる数字だ。とはいえ、スーパー定期1年物の金利は0.01%なので、最大0.10~0.11%の適用ということになる。
悪くはないが、よくもない。

 しかし、実は金利以上のメリットがあった。この定期に預け入れた顧客には、もうひとつの特典として、観戦チケットが当たる抽選に参加できる。広島銀行の場合はMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダスタジアム)での公式戦の正面砂かぶりシート観戦ペアチケットが50組100名に、もみじ銀行は年間70試合のロイヤルボックス席、S指定席、外野指定席が総計1万4140組に当たるという。

 広島ファンならご存じの通り、マツダスタジアムでの公式戦は入手困難といわれるプラチナチケットだ。100万円預けて優勝で1100円の利息(実際には税金が引かれる)を受け取るより、チケット代のほうがよっぽど高く価値がある。

 横浜信用金庫も、同様に観戦ペアチケットが 50名に当たる。横浜スタジアムでのDeNA戦も、最近はチケットが入手困難な状況だ。もはや、プロ野球応援定期の最大のインセンティブは、金利よりもチケット代かもしれない。まぁ、本来の意義を考えれば当然なのだが。

●中日はチーム最高打率に応じて金利上乗せ

 松坂フィーバーに沸くドラゴンズにも、応援定期がある。

【大垣共立銀行「VIVA!ドラゴンズ『スーパー打率定期預金2018』」】
募集期間……2018年3月30日(金)~4月27日(金)
預入れ金額……10万円以上50万円以内(条件により100万円以内)
適用金利……預入れ時の店頭表示金利に、ドラゴンズ選手の最高打率×1/1000の金利を上乗せ(クライマックスシリーズを除く平成30年セ・リーグ公式戦の最終打率)

 これは、優勝にも順位にも関係なく(その姿勢でいいかは別として)必ず上乗せしてくれるのだから、考えようによっては太っ腹である。
「なるほど、だから預け入れが50万円までなのか」というツッコミはさておき、実際にはどの程度の上乗せをしてくれるのか。

 17年度の個人打撃成績(規定打席以上)を調べてみると、ドラゴンズのトップは大島洋平選手の3割1分3厘。説明書きに「打率は『厘』を四捨五入し、『分』までを金利換算します」とあるので、上乗せ金利は0.031%となる。店頭金利が0.01%なら、0.041%という計算か。なるほど、これなら「もっと打ってくれ」と応援にも力が入る。ドラゴンズの応援で「打て、打て、打ちまくれ!」という掛け声があったが、まさにその通り。無論、これもペアチケットの抽選付きになっている。

 さて、もう一行、忘れてはいけない定期がある。

【尼崎信用金庫「がんばれ阪神タイガース定期預金『必勝虎願(ひっしょうこがん)』」】
募集期間……2018年2月1日(木)~4月27日(金)
預入れ金額……1万円以上300万円未満(ネット支店は10万円以上)
適用金利……スーパー定期1年物の店頭金利で上乗せはなし。
特典……タイガースの成績に応じて、「全国百貨店共通商品券」を抽選で1万人にプレゼント(本定期預金10万円につき1本の抽選権)。リーグ優勝5万円分、2位で3万円、3位で2万円、4位以下で1万円。なお、タイガースが日本一になった場合は超Wチャンス特典として、さらに5万円分の商品券が1000本追加に。


 先述したように、この定期もかつては金利上乗せをしていたが、07年から商品券スタイルに変わった。関西のファンは現物好きということだろうか。ちなみに、観戦チケットプレゼントの特典はない。

●iDeCoやつみたてNISAの“応援投資”も登場

「パ・リーグはどうした」との声が聞こえそうだが、今のところ紹介できるのは2チームだ。

【福岡銀行、熊本銀行、親和銀行「ホークス応援定期預金2018」】
募集期間……2018年3月19日(月)~5月31日(木)
預入れ金額……10万円以上1000万円未満
適用金利……スーパー定期1年物の店頭金利で上乗せはなし
特典……抽選で観戦ペアチケット(S指定席)。福岡銀行180組360名、熊本銀行21組42名、親和銀行75組150名。

 この3行は同じ「ふくおかフィナンシャルグループ」に属するため、定期の設計は同じだ。こちらは福岡・熊本・長崎の3県を中心に九州全域に展開する地域金融グループで、傘下には地方銀行のほかに証券会社、カード会社なども持つ。フィンテックや投資商品を含めた幅広い金融サービスに積極的という企業姿勢もあってか、今回のホークス応援定期預金には「闘心(投信)コース」が登場している。

 こちらは、5万円以上の投資信託の購入や外貨定期預金の預け入れ、積立投資信託の新規申し込み(つみたてNISAも含む)、iDeCo=個人型確定拠出年金の申し込み(福岡銀行のみ)などが対象。特典として、観戦チケットに加え、ホークスの選手とのキャッチボール、選手からのユニフォーム手渡し&ハイタッチ会参加、スーパーボックス(8人部屋)での観戦などが抽選の対象になる。とうとう、応援定期ならぬ“プロ野球応援投資”の時代が来たというわけだ。


 また、金利上乗せというか成績に応じた金利を採用するのは、東北楽天ゴールデンイーグルスの本家である楽天銀行だ。

【楽天銀行「勝つぞ!楽天イーグルス応援定期預金」】
募集期間……2018年3月30日(金)~6月29日(金)
預入れ金額……10万円、20万円、30万円、40万円、50万円
預入れ期間……6カ月(2018年6月30日(土)~2018年12月30日(日))
適用金利……楽天イーグルスの2018年シーズンの最終成績に応じて以下の金利を適用。日本シリーズ優勝で年1.0%(税引き後、年0.796%)、クライマックスシリーズ(CS)優勝で年0.5%(税引き後、年0.398%)、パ・リーグ優勝で年0.5%(税引き後、年0.398%)、それ以外の順位は年0.02%(税引き後、年0.015%)

 なお、ロッテにも千葉興業銀行の「マリーンズ開幕ダッシュ応援定期預金2018」があったが、こちらは3月30日で終了。また、これまで実施していた銀行も、ほかのスポーツ定期にシフトしている。

 プロ野球定期ひとつを取ってみても、時代の流れが透けて見えるようだ。「初心に帰って、球場でひいきのチームを応援したい!」というファンこそ、検討してみる価値があるかもしれない。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)

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