複写機大手リコーの2018年3月期の連結決算(国際会計基準)は、本業の儲けを示す営業損益が1156億円の赤字(前期は338億円の黒字)、純損益が1353億円の赤字(同34億円の黒字)で、いずれも過去最大の赤字となった。6年ぶりの赤字転落だ。

売上高は前期比1.7%増の2兆633億円だが、為替の影響による増収分を除くと1.3%減だった。

 赤字の最大の理由は、低迷する北米事業で1759億円の減損処理をしたためだ。

 08年に約1700億円で買収した米事務機販売大手アイコンオフィスソリューションズの価値を約1400億円引き下げた。リコーは国内市場への依存度が高く、アイコン社の買収は海外市場の拡大が狙いだった。

 だが、北米市場では電子化やペーパーレス化が進み複合機メーカーは苦戦を強いられた。同業他社との競合で複合機のリース契約料金も下落した。

 このほか14年に約170億円で買収した事務所のデータ管理などを手掛ける米ITサービス会社のマインドシフトテクノロジーズも、市場変化を理由に約400億円の減損処理をした。

 17年4月に社長に就いた山下良則氏は、この1年、リストラに邁進してきた。北米で営業職を地元の販売会社に移すなど全世界で計8000人規模の人員削減を実施した。また、15年に不
正会計が発覚したインド子会社、リコーインドへの財務支援を打ち切った。

 国内では、事業所の閉鎖や銀座本社を大田区に移転するなどして経営のスリム化に取り組んできた。リストラ費用を捻出するため、創業者の市村清氏が深く関わったコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス株式を手放した。
保有比率は8.28%に上る1707万5239株だったがすべてを売却し、売却益は18年度に506億円を計上する。

 さらに、女子ゴルフのメジャー大会「全英リコー女子オープン」の冠スポンサーを降りる。リコーは07年から協賛し、これまで10年あまり冠スポンサーとして大会を支えてきた。構造改革で宣伝に使える資金が削減されたため、今年の夏に開催される大会を最後に冠スポンサーから撤退する。

 19年3月期の業績予想は、売上高が1.1%減の2兆400億円、営業利益は800億円の黒字、純利益は470億円の黒字に転換する見込み。拠点の再編や事業の選別など一連の構造改革で業績は回復するとしている。

 リコーの複合機・複写機は世界で約19%、国内で約27%のトップシェアを誇る。複合機・複写機などのオフィスプリンティング部門の18年3月期の売上高は1兆1440億円で、全体の55%を占める。それに付随するオフィスサービスと合せると77%に達する。だが、ペーパーレス化の進展で、オフィスプリンティング部門は443億円の営業赤字だった。

成長分野への投資で出遅れ

 複合機・複写機の一本足打法が足元から崩れようとしている。リストラで解決できるほど生易しいものではない。



 過去にはM&Aをしているが、最近、成長分野には投資しておらず、ほかのメーカーより1周遅れの状態だ。

 ライバルのキヤノンは、デジカメと同様に複合機が大きなウェートを占めていた。東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)を買収。医療という成長カードを手に入れた。

 富士フイルムホールディングスは、デジカメの普及でフィルム事業が衰退。経営危機に立たされたが、がんワクチンの開発権を取得して新薬開発に取り組むなど、がんや再生医療への投資が活発だ。

 かつてリコーは複合機に特化して黄金時代を築いた。だが、ITの進化による書類の電子化、ペーパーレス化が進み、複合機メーカーはビジネスモデルが崩壊しつつある。それにもかかわらず、リコーは複合機から抜け出す方向性を見いだせていない。
(文=編集部)

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