国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
先週の米朝首脳会談は、永田町の住人たちも興味深く注視していました。
しかし、会談の結果に、永田町界隈は与野党問わず不満たらたらでした。事前情報もあって期待が大きかっただけに、がっかり感が強かったのです。「拉致問題は日朝の話で、今回は米朝の会談なんだから仕方ない」という声もありますし、北朝鮮側の情報がなかなか入ってこなかったので、トランプ大統領も対策のしようがなかったのかもしれませんね。
●ロッドマンも泣いた米朝融和
各種報道や永田町での情報から分析すると、全体的に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長のほうが「外交上手」という印象を強く持ちました。北朝鮮は孤立しているように見えますが、意外に多くの国と国交がありますし、金委員長も暗殺されたとされる兄の金正男氏も、学生時代はスイスのインターナショナルスクールに在籍しています。
そのスクールには30を超える国々のセレブの子息たちが集まっており、なかにはジョン・レノンの息子さんなどもいたそうです。正男氏と同時期に在籍していた神澤の知り合いは、「あまり友達が多い感じではなかった。北朝鮮ではなく、韓国の財閥の息子だと思っていた」と当時の感想を語ります。金委員長も正男氏も、英語を中心にいろいろな国の学生たちと接して、コミュニケーション能力を身につけたのでしょう。
そういえば、ちょっとおもしろいアクシデントもありましたね。CNNのキャスターが、シンガポールから中継しているリポーターに「金委員長はどのくらいの英語力があると思いますか? どのくらいの英語の教育を受けているという印象ですか?」と質問すると、唇にピアスをしたガラの悪いリポーターが下品なことを言っているのです。
なんと、彼はリポーターではなく、プロバスケットボールリーグ(NBA)の元スター選手のデニス・ロッドマン氏でした。ロッドマン氏はこれまでに何度も訪朝し、金委員長とはバスケを通じて親交を深めてきたそうです。カメラの前で、会談の成功を泣いて喜んでいました。
もっとも、トランプ大統領は「私はロッドマンが好きだし、いい奴だ。でも(首脳会談には)招かれていない」と憮然としていたようですが。しかし、ロッドマン氏がアリなら、いつか日朝首脳会談が実現したときには、ぜひ引田天功氏にリポーターをやってほしいです(笑)。
●永田町では「安倍首相は甘い!」の声も
日朝首脳会談が開かれるとなれば、拉致被害者の帰国問題は避けて通れません。多くの国会議員が、拉致問題をトランプ大統領に解決してもらおうと思ったこと自体を「安倍首相は甘い!」と切り捨てています。
もちろん、与党内で表立ってそう言える人はいないのですが、「今こそ、我々日本の国会議員が積極的にかかわっていくべきだ」という機運は高まっています。
一方で、その流れに乗れていない議員もいます。特に、立憲民主党国会対策委員長の辻元清美議員は、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)の関係者からも批判されていることは知られています。家族会の前事務局長である増元照明氏は、「辻元氏は拉致問題を政局に利用しようとしている」と明言していますね。
また、国民民主党の大塚耕平共同代表は党会合で「(米朝で)どういうやりとりがあったかは日本政府としてすみやかに説明していただく義務がある」と述べていますが、これに対して「機密性の高い外交政策を『国会で詳細に説明しろ』とは、家族の帰国を邪魔する気か」との批判もあるようです。
辻元議員も大塚代表もがんばっているのはわかるのですが、何かと裏目に出てしまい、努力が伝わってきません。非常に残念ですね。もともと優秀な方たちなのですから、官邸はもちろん関係者のみなさんとのコミュニケーションを増やしてみてはいかがでしょうか。
「党利党略ではない」というのであれば、きちんと説明すべきです。それに、この際、安倍首相と握手すれば展開も早いと思いますよ。
拉致被害者や特定失踪者、さらに関係者のみなさんは高齢化が進んでおり、残された時間は多くありません。今こそ、日本が主体的に問題を解決して家族の早期帰国を実現すべきです。
モリカケ問題が重要でないとはいいませんが、国会の会期中に、国民にとって必要な法案の審議と日朝首脳会談の実現に向けて、一丸になってくれればいいなと思います。
ここで功績を示せば、日本政府の国際的な評価も高まるでしょう。読者のみなさんも、あきれてないで応援してくださいね!
(文=神澤志万/国会議員秘書)