記念すべき第100回「全国高等学校野球選手権記念大会」(甲子園)が21日に閉幕したが、今大会で観客たちをもっともエキサイトさせたのは、間違いなく“公立の星”秋田・金足農業高等学校だろう。しかし、そんな金足農のエース・吉田輝星投手が日本高等学校野球連盟(高野連)から受けた通達内容が物議を醸している。



 神奈川・横浜高等学校、滋賀・近江高等学校など名だたる強豪校を打ち破り、破竹の快進撃を見せた金足農。横浜との試合で見せた高橋佑輔選手の逆転ホームランは観客たちのハートを鷲掴みにし、インターネット上で大きな話題となった。決勝では大阪桐蔭高等学校の前に力尽きたものの、予選から準決勝まで一度も交代せず投げ切った吉田投手への注目度は非常に高く、プロ野球のスカウト陣や野球ファンからは「制球力と集中力はプロ顔負け」という評価も多い。

 吉田投手といえば、“侍ポーズ”と呼ばれる独特のルーティンが代名詞となっている。初回の守備につく時に腰から刀を抜くポーズをとり、最終回の守備前に刀を収めるような仕草を見せる。大友朝陽選手と共にポーズを決める様子はどこかコミカルで、観客たちを大いに沸かせた。野球ファン以外からも多くの支持を得ており、ネット上には「今年の流行語大賞は“侍ポーズ”でしょ」という声も上がるほど。

 ところが、準決勝で西東京・日本大学第三高等学校と対戦した際は、腕を腰のあたりで少し動かした程度で、明らかにそれまでは違った。そのため「今日の侍ポーズは、どこか控えめじゃないか?」と疑問に感じたファンも少なくなかったようだ。吉田投手は試合後、報道陣からルーティンの変化について質問されると、苦笑いで「大会本部から禁止された」と回答した。中泉一豊監督経由で、高野連から通達を受けたようだ。

 禁止令が出ながらも小ぶりのポーズをとった件に関しては、「大友がどうしてもやりたいって言うから。
適当にポイッとやった。できないならできないで、別にいいんですけど」とコメントして報道陣を笑わせた。今大会では、岡山・創志学園高等学校の西純矢投手も、高野連から「必要以上に吠えないように」と、トレードマークとなっていたガッツポーズを禁止されている。

 野球ファンは高野連の警告内容に「頭が固すぎる」と非難の声を上げているが、高野連の措置がひんしゅくを買うケースは珍しくない。

 2016年の甲子園では、グラウンドでノック練習を手伝っていた大分・大分高等学校の女子マネージャーが「強制退場」を受けたことが大きな話題になった。高野連は、その退場の理由に関して「女性はグラウンドに出てはいけない」と説明したが、ネット上をはじめとして「男女差別ではないか」と、さらなる波紋を呼んだ。

 高野連の女性蔑視とみられる対応は、今大会でも議論を巻き起こした。7月に三重・白山高等学校が甲子園見学に訪れた際、同校の川本牧子部長が打席で素振りをすると高野連から注意を受けた。高野連の竹中雅彦事務局長は「女性だからではなく、背番号をつけた選手が見学する場なので注意した」と説明している。しかし野球ファンからは、「いろいろ言い訳しているけれど、ただの女性差別でしょ」「部長が素振りして何が悪いの?」など、疑問視する声が続出した。

 全力で白球を追いかける球児たちの姿が眩しい甲子園。高野連の事情で選手たちの士気が落ちるようなケースは、絶対に避けてもらいたい。

(文=編集部)

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