連続テレビドラマ『この世界の片隅に』(TBS系)の最終話が16日に放送され、予想外の結末が大きな反響を呼んでいる。
終戦が伝えられるも、やりどころのない思いを抱えていた北條すず(松本穂香)の元に、実家のある広島で暮らしていた妹の浦野すみ(久保田紗友)から手紙が届き、無事であることがわかったというのが前回までの話。
最終話では、市場に陽気な音楽が流れ、米兵が子どもたちにチョコレートを渡したり、残飯雑炊をすずと義姉の黒村径子(尾野真千子)が美味しいと言って食べたりと、アメリカ軍が日常生活のなかにも入りこんできていた。
そして、いまだに海兵団に行ったままいつ帰ってくるのかわからない夫の北條周作(松坂桃李)を待つすずの元に、草津で暮らす祖母・森本イト(宮本信子)から手紙が届き、すずの父は亡くなり、母は行方知れず、妹は原因不明の病で床に伏せていることを知る。
北條家の人々の勧めもあって、広島に様子を見にいったすずは、すみを見舞った後、実家の様子を見に行くと、酷い状況になっていた。そして、すずが母の姿を探していたように、多くの人が誰かを探して行き交っていた。
その後、広島まで迎えに来た周作と遭遇したすずは、親を原爆の被害で失った幼い女の子・節子と出会う。節子が自分の母と同じように右手を失ったすずを「お母ちゃん」と慕ってきたことで、すずたちは節子を家に連れて帰ることを決意。こうして養子となったこの女の子が、現代版で登場していたおばあさん(香川京子)だったのだ。
ここまでは原作と同じであったが、最終話ではこの後に描かれた現代パートに称賛の声が集まっている。今までは「現代のエピソードはいらない」という視聴者の声も多かったが、最終話にしてこの現代パートの意味が見事に回収されたからだ。
エンディング間際、現代版パートに移ると画面に映し出されたのは、広島東洋カープの試合が行われている野球場。そして、「さぁ、行こう」と節子に連れたられて近江佳代(榮倉奈々)が向かった先には、すずと思われる白髪のおばあさんが赤いユニフォームを着てカープを応援している後ろ姿。そこに、若かりし頃のすずが重なり合うようにして映像が切り替わり「負けんさんなよ~負けんさんなぁ、広島! 負けるさんなぁ!」と、すずと周作、節子が大きな声で叫ぶシーンで幕を閉じた。
これを受け、今年7月に豪雨災害に見舞われた広島の復興を願う応援メッセージだと解釈する人が続出。「『負けんさんなひろしま』か。戦争で大きな被害を被っても復興したんだもの。豪雨の被害からも必ず立ち上がる」「負けんさんなよ広島!! 原爆や災害を乗り越えて今がある。だから負けない! 負けてられないでしょ! 優さに包まれた物語だった」「最後のシーン『負けんさんな広島』のフレーズ。豪雨災害を受けた広島に向けたメッセージにも聞こえた」と、励まされた人が多かったようだ。
さらに、カープは原爆の被害にあった広島市民が復興の旗印として設立されたともいわれており、広島の人々がカープに込められた思いを現代でも褪せることなく引き継いでいくことの重要性も、伝えたかったのではないだろうか。
ドラマの結末は、多くの視聴者にとって予想外だったようで、驚きの声が広まっているが、戦争を体験した人々の思いを、私たちも引き継いでいかなければいけないと感じさせられたドラマであった。
(文=絢友ヨシカ/ライター)