大塚家具は2018年6月中間決算以降も、同年前月比の売上減少に歯止めがきかない。もはや坂を転がり落ちる石のような状態だが、社長の大塚久美子氏は依然として退任する姿勢を見せることはない。



 大塚家具は「お話しできることはない」(広報担当者)と説明しているが、取引先や金融機関からは不満の声が上がっている。すでに創業者との経営権争いとなった2015年3月の株主総会で久美子社長を応援した主要株主の一社、日本生命は株の売却を進めている。なぜ久美子社長は社長継続にこだわるのか。

「『大塚家具は大塚家のもの』という意識が強い。彼女としては『自分は大塚家の長子だ』という思いが強いのだろう」(大塚家に詳しい事情通)

 久美子社長は株主総会で脱同族経営を掲げて、父で元会長の大塚勝久氏を放逐したわけだが、久美子社長を背後で支えている主要株主は、弟や妹が役員を務める「ききょう企画」。矛盾しているようだが、これは大塚家の資産管理会社であり、129万2000株(6.66%)を保有する事実上の筆頭株主である。「大塚家の人間はきちんとした生活をしなければならない」という勝久氏の思いから、子供たちが株主配当で生活できるよう有償で譲渡されたものだ。

 ききょう企画は当初、勝久氏の長男の勝之氏を社長にするためにつくられた会社という面もあり、勝之氏が50%の株式を保有していたが、その後、勝之氏は大塚家具を辞めて独立。株式は兄弟間に均等に分けられたという。現在、久美子氏の妹、舞子氏が社長を務めているが、「久美子氏は子供のころから兄弟たちの母親代わりとして面倒を見てきた。兄弟の信頼は強い」(事情通)ということから、ききょう企画の実権は久美子氏が持っているとみられている。

●ききょう企画と大塚家

 実は、そのききょう企画が保有する大塚家具の株式が今、大きな問題となっているのだ。
ききょう企画は当初、大塚家具の株式(189万株)を、自己資金と自社が発行する15億円の社債で買い取るかたちをとっていた。ところが社債の償還期限を過ぎても返済がなかったことから、勝久氏側から提訴され、2016年4月に敗訴した。

 久美子氏側は189万株すべてを担保に三井住友銀行から15億円を借り入れ、金利を含めた17億円を全額返済した。担保設定された日は16年4月11日。この日の大塚家具は一株1454円。ききょう企画の保有する大塚株の担保価値は27億4806億円。15億円分の担保としては十分なものだが、こうしたケースでは、実質的な借り入れを必要とする人の連帯保証もとるのが一般的だ。「久美子氏も連帯保証をいれているのではないか」との見方が金融関係者の間の見通しだ。

 その後、同年5月12日には保有株式の約3分の1にあたる60万株分の担保権を解除、レオス・キャピタルワークスに売却した。この時の売却価格は一株1232円、計7億3920万円。三井住友銀行の借り入れは10億円まで減らしている。 

 さらに同年8月4日には三井住友銀行に担保として差し入れていた大塚家具の株式のうち、43万株を三菱東京UFJ銀行に担保として差し入れ、借り入れを行っている。
借り入れはその後、三菱UFJフィナンシャルグループなどにも振り分けられ、現在は「三井住友銀行が5億円ぐらい。三菱UFJフィナンシャルグループは3億5000万円程度で、計8億5000万円程度になっている」(事情通)とみられている。

 しかし、担保の大塚家具の株価は一株280円(今月5日終値)と借り入れた時期の6分の1。総額ではわずかに3億6120万円。5億円近く担保割れを起こしていることになる。

「このままでは、ききょう企画は巨額の負債が弁済できず、連帯保証をしていれば久美子氏も借金を抱え込むことになる。ききょう企画は久美子氏の弟や妹たちの収入源だけに、一族の存続にかかわる問題。何がなんでも社長を続け、配当をし続けなければならないのではないだろうか」(事情通)

 しかし、このまま久美子氏が社長を続ければスポンサーはつかない。いずれは法的整理に追い込まれる恐れもある。もしそうなれば、残るのは借金だけだ。久美子社長には“四面楚歌”の歌が聞こえているのかもしれない。
(構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

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