百十四銀行は11月9日、女性行員セクハラ事件発覚後、初めて記者会見を行った。10月末、渡辺智樹会長が突然、辞任。
百十四銀行は10月29日、ホームページ上で、渡辺氏が会長職を退き11月1日付で代表権のない相談役に就くと発表した。理由は、取引先との会食の場で同席した女性行員が取引先から不適切な行為を受けることを止められなかった責任を取るとしている。
新聞各社の報道によると、銀行側が設定した今年2月の取引先との会食で、女性行員が取引先から不適切な行為を受けたという。
5月、社内通報によって問題が発覚。同行は6月、渡辺氏と同席した石川徳尚執行役員・本店営業部長に対して、報酬と賞与の減額処分をした。その後、社外取締役の指摘で第三者の弁護士による再調査をした結果、渡辺氏が女性行員を同席させたり、不適切行為を止められなかったりしたことが問題視されたという。これを受け、渡辺氏本人から「一身上の都合で辞任したい」と申し出があった。
同行は、事件の詳細を明らかにしていない。女性行員は取引先の担当者ではなかったのに、なぜ会合の途中で呼ばれ同席することになったのか。豊嶋正和常務は会見で「会食の場を和らげるためだった」と、驚くべき釈明をした。
つまり、女性行員をコンパニオン代わりに出席させたということになる。
「不適切な行為」とは、具体的にどういう行為を指すのか。「取引先」とは、どこなのか。渡辺氏はなぜ制止できなかったのか。同席した石川氏は何もしなかったのか。石川氏は10月の人事異動で本店から今治支店長に異動したが、今治支店は重要な支店であり懲罰人事ではないとされる。
具体的なことについて百十四銀行は回答を拒否しているため、何もわからない。はっきりしているのは、渡辺氏が突然、辞任したことだけだ。
●会長辞任は「ZAITEN」の報道が引き金?
11月1日発売の月刊誌「ZAITEN」(財界展望新社/12月号)が「代表権者の不祥事に地銀はどう答えるのか――百十四銀行・渡辺会長『女性行員セクハラ事件』」(小誌ハラスメント問題取材班)という記事を掲載した。
この報道が引き金になり、渡辺氏は会長を辞任したということなのか。「ZAITEN」は3ページにわたって報道した。
「小誌の取材によれば、セクハラ行為があったのは、今春に行われた百十四銀行と主要取引先首脳との会合の席。
被害の詳細は伏せるが、関係者によると『セクハラの範疇を超えた行為だった』。また、小誌が取材で得た別の情報でも、セクハラ加害者が往々にして強弁する“言葉の戯れ”を超えたものだったことが確認された。ともかくも、入行間もない20代女性行員が銀行の最高幹部が居並ぶ会合に同席させられた上、想定外の事態に遭って、どのような心理状態にあったかを想像して欲しい」
同誌は取材を受けた広報の異様な狼狽ぶりを伝えている。内々で済ませたはずなのに、外部に漏れたことにショックを受けたのだろう。それにしても、経営トップが自行の若い女性行員が辱めを受けたセクハラを制止できなかったとは、情けない限りだ。
渡辺氏は1952年、香川県高松市生まれ。74年京都大学経済学部を卒業し、百十四銀行に入行。2004年に取締役に就いたほか、東京支店長などを歴任し、08年に専務執行役員、09年に頭取、17年に会長となった。18年10月末に会長を突如辞任するまで、9年間にわたり経営トップとして君臨してきた。
女性行員のセクハラ事件を受け、渡辺氏は高松商工会議所会頭、四国電力の社外取締役も辞任した。
百十四銀行は1878年11月1日に第百十四国立銀行として創業、今年11月に140周年を迎えた。総預金は4兆1147億円(18年9月末現在)。四国8行の地銀のなかで伊予銀行に次いで第2位である。
創業140周年記念行事の数々は、女性行員セクハラ事件で台無しになった。渡辺氏は、疑惑について自ら説明責任を果たすべきとの声が高まっている。セクハラを行った人物(加害者)に対して、百十四銀行はどう対処したのか。処分を要求しているのか。すべてを、うやむやのまま終わらせることなどできるはずはない。
(文=編集部)