神戸製鋼所、三菱マテリアル、日産自動車、スバル、スズキ、ヤマハ発動機などで相次いで不正が発覚し、日本のものづくりへの信頼が揺らぐ事態となった。神戸製鋼所は不正競争防止法(虚偽表示)違反で起訴。

三菱マテリアルの子会社3社と、このうち2社の前社長が同法違反で起訴された。

 そして今度は農業機械大手のクボタだ。9月12日、製鉄所で鋼板をつくる設備の部品について、出荷前の検査で実際の検査結果と異なる数値を検査成績書に記載する不正があったと発表した。国内外の納入先99社のうち、85社の報告書で書き換えが見つかった。

 鋼板を薄く延ばす工程で使う合金製の「圧延ロール」という消耗部品に関する検査報告書が書き換えられていた。2013年10月から18年7月に出荷した2万1035本の16.7%にあたる3512本で、硬さのデータに実際とは違う数値を記載。成分配合データの不正も121本あった。検査成績書に添付する顕微鏡写真を、別の製品の写真と差し替えた事例も765本で見つかった。

 これは7月25日、内部通報で発覚した。8月28日から取引先への説明をはじめ、9月11日に経済産業省に報告した。

 クボタはトラクターやコンバインなどの農業機械の大手。鋳物メーカーとしての技術を生かし、産業用機械などに使われる部品も手がける。
圧延ロールは、兵庫県尼崎市の阪神工場で製造している。18年3月期の売上高は44億円で、クボタの推計によると国内シェアは35%、世界シェアは2~3%という。

 木股昌俊社長は記者会見で陳謝し、経営責任について「再発防止の陣頭指揮に当たることが経営トップの責務」と述べた。

 不正が行われた原因や背景、経営陣の関与の有無など、詳細はわかっていない。外部の弁護士による調査を始め、2カ月後をめどに結果を報告するとしている。主力製品の農業機械や建設機械について、木股社長は「現時点で不適切な行為はない」と言明した。

 14年6月、益本康男会長兼社長の急逝を受けて社長になった木股氏が陣頭指揮を執る。木股氏は若手社員だった時代に益本氏と同じ工場で働いた。2人は「大きなトラクターをつくりたい」「グローバル・メジャー・ブランドのクボタをつくりたい」と夢を語り、世界地図を広げ「この国とこの国に工場をつくろう」と話し合った仲だ。

 緊急登板した木股氏は「グローバル・メジャー・ブランドを目指す」との旗印を掲げていたが、今回の検査不正は、品質をないがしろにした悪質なものだ。失った信頼は小さくはない。

●相次ぐデータ改竄

 さらに、電線御三家の一角を占める、独立系のフジクラでも品質不正が判明した。
送配電用電線や通信ケーブルなど73品種。子会社を含む10拠点で品質データを改竄していた。東京電力ホールディングスや防衛省にも納入。少なくとも66の企業・官庁が納入先だった。株価は下がり、10月11日に480円の年初来安値を更新した。年初来高値は1月23日の1184円で、そこから6割値下がりしたことになる。その後も株価は安値圏で推移している。

 8月31日に記者会見したフジクラの伊藤雅彦社長は「現場とのコミュニケーションが不足した」と語った。年内に原因究明や再発防止策をまとめるという。

 10月に入り、油圧機器大手、KYB(旧カヤバ工業)で免震・制振オイルダンパーの検査データの改竄が発覚。子会社のカヤバシステムマシナリーが手掛ける免震・制振装置の国内シェアは45%と首位だ。ただ、この分野の売り上げは20億円強で、KYBの全売り上げの1%にも満たない。
「日程を守るため作業(手順)を省いてしまった」と10月19日、国土交通省での会見で、カヤバシステムマシナリーの広門茂喜社長は唇をかみしめた。

 改竄は少なくとも15年にわたって続いており、07年に生産拠点がKYBの工場からカヤバシステムマシナリーの工場に移った後も、検査員によって口頭で改竄が引き継がれていた。

 KYBは最短で20年9月までに装置の交換が完了すると説明するが、建設業界の人手不足もあって、21年以降にズレ込む公算が大きい。交換が必要なのは986件とされる。

●北米の小型トラクターがドル箱

 国内で農業機械の約4割のシェアを持つクボタは、農業機械の最大市場、米国で攻勢に出る。

 世界の農機メーカーは、米ディア・アンド・カンパニーが首位。2位はイタリアの自動車メーカー、フィアットの傘下に入ったCHNインダストリアル。3位がクボタだ。稲作向けの農機では圧倒的な強みを見せるが、畑作向けで欧米勢に後れをとっている。

 米国は、広大な土地を持つオーナーが大型から小型まで複数の農機を所有することが多い。中西部の穀倉地帯は、大型トラクターが主力のディア社が圧倒的な地盤を築く。

 クボタは北米市場で、草刈りや庭園管理に使う40馬力以下の小型農機で4割のトップシェアを握り、酪農や牧畜などに幅広く使う40~120馬力の中型機も展開している。


 そんななか、大型トラクターが主力のディア社が、クボタが得意とする小型市場に殴り込みをかけてきた。過去数年にわたる穀物価格の低迷が続き、高額な大型トラクターの売れ行きが鈍っているからだ。

 対抗してクボタは15年、北米に170馬力の大型トラクターを投入した。さらに16年、米農作業機器メーカー、グレートプレーンズマニュファクチュアリング(GP)を495億円で買収した。GPはトラクターでけん引する種まき機や草刈り機が得意だ。クボタは大規模農家向けに、大型トラクターや種まき機のラインアップを強化した。

「北米はクボタのトラクター事業の約51%を占め、17年12月期連結売上高の14%となる2535億円の市場。特に中西部は北米のトラクター売り上げの約3分の1を占める重要な地域だ」(6月20日付日刊工業新聞)

 18年1~6月期のトラクターの販売台数は、40馬力以下の小型機は前年同期比8.3%増、40~120馬力の中型機は同3.0%増。ただ、大型トラクターでは目立った成果を上げておらず赤字。大型トラクターは小型機よりも需要が限られているうえに、ディア社の厚い壁が立ちはだかっている。

 18年12月期決算から、米国会計基準から国際財務報告基準(IFRS)に変更する。売上高の予想は、IFRSの基準で比較すると3.9%増の1兆8200億円となる見通し。
最終損益は当初12.2%増の1510億円としていたが、8.1%増の1450億円に下方修正した。従来予想を60億円下回る。

 稼ぎ頭だった北米の小型トラクターで、ディア社との販売競争が激しくなったことに伴い、販売奨励金(インセンティブ)の負担が増えたことや、トランプ政権が今春、鉄鋼、アルミニウムの輸入関税を引き上げたため、北米で生産する農機や建機の鋼材価格が大きく上昇したことが、利益が伸び悩む理由だ。
(文=編集部)

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