東京商工リサーチによれば、GGメディア(新宿区)が11月6日、東京地裁より破産開始決定を受けたという。負債総額は債権者89名に対して約1億3700万円。



 GGメディアはシニア富裕層向けのファッションや雑貨などを紹介する月刊誌「GG(ジジ)」の発行を中心に、インターネット通販も手掛けていた。大手旅行代理店のエイチ・アイ・エス(新宿区)や、雑誌定期購読サービスなどを手掛ける富士山マガジンサービス(渋谷区)などが出資。雑誌「LEON」(主婦と生活社)などの編集長だった岸田一郎氏が取締役に入り、事業拡大を狙っていた。今年10月に「GG」を休刊するなど事業を縮小していたが、負債の処理のため今回の措置となった。

 この件に関しては「週刊文春」(文藝春秋/11月29日号)が『ちょいワルオヤジ雑誌休刊で石田純一にギャラ未払い発生』として、表紙モデルを務めていた俳優の石田純一などのギャラの未払い問題、岸田氏からのパワハラ被害を訴える元編集部員の声などを紹介している。記事のなかでは「今回の件で得をした人は誰もいないんですよ。僕の役員報酬も出なかったし。ただの雇われ取締役、雇われ編集長ですから」「私も被害者とは言いませんが、業務委託でやってたわけですから」という岸田氏の弁明も紹介していたが、そこに出版関係者にとっては気になる言葉があった。

「オーナー(西氏)がこれ以上お金を出せないっていうんで、休刊って判断が下ったわけですよね」

 西氏とは、ベンチャー起業の草分け的存在の西和彦氏だ。マイクロソフトのビル・ゲイツ元会長とは同い年の友人だ。実は西氏が、このGGメディアのオーナーだったのだ。西氏は最近、出版トラブルに見舞われている。
西氏が同様にオーナーだったサブカル出版社のアスペクトでもギャラ未払い問題が発生しているのだ(当サイト記事『アスペクト、作家が印税未払いを告発…一斉に出版契約解除、オーナーはあの有名起業家?』参照)。

 アスペクトでの未払いに巻き込まれた債権者たちは「ここだけの話だが、アスペクトのオーナーは西和彦氏で、同氏は不動産を所有しているので、いざとなれば、すべての社の債務は整理できる」と説明があったために、ビル・ゲイツとも近い西氏であればと、請求を後回しにしていた。だが昨年、編集者などの社員がついに辞表を提出し、未払い賃金請求訴訟に打って出たことから事態が動いた。それを受けて、多くの執筆者が出版契約解除に乗り出したという騒動が今夏にあった。

●未払い額はさらに増加の懸念

 今回のGGメディア騒動では、文春記事によると「ビル・ゲイツが金出してくれるって言ってるから大丈夫」という触れ込みで岸田氏がスタッフを募っており、アスペクト同様の構図が浮かび上がってきた。なお、GGメディアもアスペクトも、表向きの社長は「高比良公成」氏となっている。

 出版関係者は次のように証言する。

「高比良さんがダミーで社長として表に立ち、西さんがスポンサーとして裏で操っているという構図です。2人は、30年来の知人関係なんです。GGメディアの立ち上げは2016年。アスペクトの資金繰りが自転車操業になるなかで、広告収入が期待できるファッション業界に手を延ばしたのではないでしょうか。ところが、時すでに遅し。
ファッション業界からの広告もほとんど期待できず、アスペクトの未払い賃金訴訟も本格化するなかで、西氏がGGメディアを切ったというのが真相でしょう」

 アスペクトの従業員、退職者による賃金支払等事件は9月20日に判決が言い渡された。それまでもオーナーである西氏は姿を見せず、払える資産がないと主張していたが、判決では2000万円を超える従業員、退職者側の請求権が認められた。

「西さん側は控訴せずに結審したのですが、その後、各人に100万円ずつ支払って、あとはなしのつぶて。現在残っている社員への給与遅配が続いているという、ひどい話です」(出版関係者)

 GGメディアはクラウドソーシングサイトなどを通じてライター募集を行っており、未払い額が今後も増えていくことが懸念されている。「GG」のキャッチフレーズは「金は遺すな、自分で使え」だったが、使う金が底をついてしまったのか。
(文=編集部)

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