コラムニストの勝谷誠彦氏が11月28日に「肝不全」のため逝去された。享年57歳。
勝谷氏は自他ともに認める酒豪で、深夜1~2時まで深酒することも多々あったという。8月に重症アルコール性肝炎で入院し、11月には肝不全で不帰の客となられた。
肝不全とは、アルコールをはじめ、体内・血液内の有毒物を解毒したり、脂肪を消化する胆汁を合成したり、人体を構成する60兆個の細胞の主成分であるアルブミン(タンパク質)を合成したりする、別名「人体最大の化学工場」といわれる肝臓の働きが低下、廃絶する病態である。
多量飲酒(正味のアルコール量で1日約70グラム以上、日本酒換算で3合以上)が5年続くと「アルコール性肝炎」が発症し、それが約10年続くと「肝臓がん」になりやすい、とされている。アルコール量70グラムとは、以下の通りだ。
9月にWHO(世界保健機関)が「アルコールが原因で死亡する人が、世界で毎年300万人を超える」という統計を発表し、アルコール好きの小生は、ぎくりとさせられた。それによると、アルコールに起因する病気は約60存在し、主なものとして以下が指摘されている。
(1)アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変
(2)胃炎、逆流性食道炎
(3)口腔・咽頭・食道・胃・大腸のがん
(4)高血圧、それに起因する脳卒中、心臓病
(5)認知症
しかし、日本では昔から「酒は百薬の長」とも、西洋では「wine is old man’s milk」(ワインは老人のミルク)ともいわれるごとく、日本酒換算2合以内での飲酒では、以下の効果があることも医学的に証明されている。
(1)ストレスを発散し、血流をよくして体を温め、免疫力を高める
(2)発がん抑制効果がある
(3)善玉(HDL)コレステロールの肝臓での合成を増やし、また、内皮細胞でのウロキナーゼ(血栓溶解酵素)の産生を促し、脳梗塞、心筋梗塞を防ぐ
(4)糖尿病のコントロールを良好にする
(5)脳を活性化し、病気やアルツハイマー病を予防する
(6)胃液の分泌をよくして、食欲を増す
「一杯は人、酒を飲み、二杯は酒、酒を飲み、三杯は酒、人を飲む」という金言がある。昔の人は、三杯(三合)以上の酒が体を傷めることを経験的に察知していたことになる。飲酒の機会が増える年末年始ではあるが、日本酒換算で2合くらいまでの飲酒を心掛けられるとよい。
●二日酔いの解消法
なお、二日酔い(吐き気、下痢、頭痛など)に効果的な民間療法を次に挙げる。できるものをひとつでよいので試されるとよい。
(1)梅干しを湯のみに入れ、お茶(番茶ならなおよい)を入れる。梅干しの果肉を食べ、お茶を飲む
(2)レモン1個をしぼってグラスに入れ、ハチミツを加えて熱湯を注いで飲む
(3)中国の民間療法でレンコンと梨の同量をジューサーにかけてできたジュース蓮梨汁(リェンリジュー)をゆっくり噛みながら飲む。
(4)コップ半杯~一杯のきゅうりの生汁を飲む
(5)グレープフルーツの生ジュースをコップ1~2杯飲む
(6)さつまいもを芋粥にして、熱いうちに食べる
二日酔いをはじめ、吐き気、下痢の特効・即効薬として「梅醤番茶」がある。
(7)「梅醤番茶」を1~2杯ゆっくり飲む
<つくり方>
1.梅干し1個を湯のみに入れて箸でつついて果肉は残し、種子は取り出す
2.湯のみに生姜汁5~10滴、醤油小~大さじ1杯を加える
3.熱い番茶を湯のみいっぱいまで注ぐ
なお、アルコールを飲む前にあらかじめ柿を1、2個食べておくと二日酔いの予防になる。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)