創業200年以上という老舗食品メーカー・ミツカンが販売する「カンタン酢」が、2008年の発売から10周年の節目となる今年、出荷数が発売初年の約50倍を達成。シリーズ累計の純売上も実に100億円突破という驚異的なヒット商品となっており、話題になっているのだ。
ただのお酢とは異なり、塩気や甘みが最初から加えられているのが特徴で、これ1本で味付けが決まることがウリ。ミツカンのHPには「カンタン酢」を使ったマリネやピクルス、甘酢照り焼きなどのレシピが紹介されており、その汎用性の高さが注目を集めている。健康志向や時短料理ブームといった時流に乗り、口コミでリピーターが増え、現在ではミツカンのお酢で一番の売れ筋商品となっているという。
そこで、「カンタン酢」開発の経緯や特徴、そして同商品を使った簡単料理レシピなどを、ミツカン広報部の花園奈央子氏に聞いた。
●『カンタン酢』開発秘話、想定外の売れ方で大ヒット
まずは大ヒットとなった理由から聞いた。
「ヒットの理由としては、やはり簡便性と汎用性が強みになっていると考えています。1本で幅広い料理に使えることがコンセプトになっているので、酢の物からお肉の料理まで使えるように、塩気や甘みの配分をかなり試行錯誤しました。試作の段階で社内外で幾度も試食をし、ブラッシュアップを重ねた結果、今の味にたどり着いたのです。
実際、味のバランスが一番苦労した点であり、一番こだわった点でもあるんですが、100人以上に試食してもらい、大人でも子供でも美味しいと感じてもらえる酸っぱすぎない味を追求しています。購入理由の調査でも、『いろいろな料理に使える』『これ1本で味が決まる』という評価が出ています」(ミツカン広報部・花園氏)
レモンの爽やかな香りを楽しめる「カンタン酢レモン」、黒酢を100%使用して黒酢特有の風味とコクが楽しめる「カンタン黒酢」、容器を小型化&細身化したボトルにすることで食卓に置ける調味料とした「かけるカンタン酢」と、シリーズ商品も人気に拍車をかけている。こうしたバリエーション展開も功を奏し、発売以来、着実に売上を伸ばしてきた「カンタン酢」だが、その開発のきっかけはどのようなものだったのだろうか。
「もともと、すし酢やらっきょう酢などの調味酢の売上が伸びている、というデータがありました。
「カンタン酢」にはもともと、「お酢をあまり使わない人に手軽にお酢メニューをつくっていただきたい」という思いがあったそうだ。しかし実際の購買層を調査してみたところ、意外な層からの反響が大きかったという。
「当初は、お酢を使い慣れていないけれどお酢料理にチャレンジしてみたい、お酢料理を簡単につくってみたい、という需要での購入を想定していました。つまり、お酢に馴染みのない層が想定購買層だったんです。しかし、実際は50~60代などの年齢が高めの方や、もともと料理が得意な方たちがたくさん購入してくださっており、想定外の人気の火の付き方をしていたんです。以前からお酢を使って料理をしていた方が、『カンタン酢』をうまく使って料理のバリエーションを増やしたり、前よりも料理の手間を省いてラクに美味しい料理をつくったり、そういった使い道で幅広く役立ててくださっていたようです」(同)
2008年の発売時にはコンセプトである簡便性、汎用性が伝わりやすいように『カンタンいろいろ使えま酢』という名前で発売していた。
「特にPRをしていないにもかかわらず、口コミで人気が拡大していったことに手応えを感じ、2012年にラベルの大幅リニューアルとテレビCMの放映を開始しました。そこから売上はさらに右肩上がりになっていきまして、この商品のポテンシャルをさらにストレートに伝えられるようにと、2014年に商品名を『カンタン酢』に変更。それから『カンタン酢レモン』や『カンタン酢黒酢』など関連商品を増やしていき、今に至っています」(同)
●『カンタン酢』を最大限活かす簡単おすすめレシピ
「カンタン酢」のPRのためにミツカンでは数々のレシピを開発しているそうだが、レシピ考案の際に工夫している点とは?
「『カンタン酢』は文字どおり、簡単に料理を作って楽しんでいただくことを目的にした商品ですので、できるだけ買い物がしやすい材料で、シンプルにつくりやすいという点を意識してレシピをつくっています。どこにも売っていない調味料や普段冷蔵庫に入っていない材料などを使わず、ご自宅にあるものや手に入りやすい食材を使用するように気を使っています」(同)
ここからは、ミツカンがそんなコンセプトで開発したレシピのなかから、普段料理をしない方でも簡単にできる料理をいくつか紹介していこう。
●鶏の甘酢照り焼き……ボリューム満点で食べ応えのある鶏肉レシピ
ボリュームたっぷりの主菜を簡単に作れると人気の鶏肉レシピ。
まずフライパンに油を熱し、鶏肉を焼く。十分に火をとおしたら、「カンタン酢」を加えてさらに熱する。次第に液にとろみが出始めるので、鶏肉に絡めながら、液がきつね色になって照りがでるまで煮詰めていく。お好みで食べやすい大きさに切れば、ご飯が進むメイン料理の完成だ。
(ミツカン公式サイトの分量(2人前):鶏もも肉1枚、サラダ油適量、「カンタン酢」1/2カップ、その他お好みで付け合せにキャベツなど)
●ぶりの甘酢照り焼き……脂が乗ったぶりの旨味を活かすレシピ
こちらはぶりを使ったメインのおかずが簡単につくれるレシピ。
まず、ぶりに軽く塩を振り、サラダ油を熱したフライパンできつね色になるまで焼く。十分火がとおったら『カンタン酢』を加えてさらに加熱。次第に液にとろみが出始めるので、ぶりに絡めながら液がきつね色になって照りがでるまで煮詰めれば完成。
(ミツカン公式サイトの分量(2人前):ぶり2切れ、塩少々、サラダ油適量、「カンタン酢」大さじ4、その他お好みで付け合せにししとうがらしなど)
●彩りフレッシュピクルス……簡単にきゅうりなどの野菜が取れるレシピ
最後に紹介するのは、きゅうりやにんじんなどの野菜を手軽に取れるレシピ。
つくり方はいたって簡単で、お好みの野菜を一口サイズに切り、ジッパー付保存袋に野菜と「カンタン酢」をいれ、封をする。あとはよく揉みこんで30分ほど放置するだけ。浅漬け風なので野菜のシャキシャキ感が残っており、食感も楽しめるレシピである。
(ミツカン公式サイトの分量(2人前):きゅうり1/3本、にんじん1/6本、たまねぎ1/4個、赤パプリカ&黄パプリカ合わせて1/4個、「カンタン酢」1/2カップ)
ミツカンでは、「お酢料理に馴染みのない若いファミリー層にも使っていただきたく、家族に喜んでもらえるようなボリュームのあるおかずレシピなどの提案に取り組んでいる」(同)とのこと。紹介した「鶏の甘酢照り焼き」もそのひとつだそうだが、その普及戦略がはまり、近年は若いファミリー層などの購入も増えてきているという。
日々、忙しいビジネスパーソンのみなさんも、「カンタン酢」を使った簡単酢料理を試してみてはいかがだろうか。
(文・取材=A4studio)