1月に行われたセンター試験を皮切りにして、大学受験の季節が本格化した。昨年来、醜聞と不祥事の連続で面目を失った最高学府ではあるが、受験生からすれば平成最後の年に、何がなんでも栄冠を手にしたいところであろう。
ただ周知の通り、大学といってもその格差は年々拡大しており、内容は天と地、月とスッポンになっている。難易度、知名度、社会での実績を軸にしたブランド力によって、少子化の進行する下でも、相変わらずの狭き門を維持している大学もあれば、毎年定員を埋めるために教職員自らが学生集めに奔走する大学もある。
さらに最近では長い冬の時代の影響で、長年貯えてきた内部留保が底を尽き、運営そのものに赤信号が灯っている法人も生じている。不測の事態が生じた際に、赤字補填に転用することのできる特定資産がゼロになっている法人は少なからずあり、なかにはキャンパスの土地、建物を担保にして、金融機関から多額の借り入れを行っている大学さえある。もちろん、この種の法人が運営する大学や短大はブランド校とは対極に位置するものが多く、世間一般の評価が財務内容にもそのままトレースされていることになる。
いわば予定調和ではあるが、一方で数多くの受験生が試験に挑むブランド校、マンモス校の内情はどうなのであろうか。財務内容が大学の評価に則したものであるのか、気になるところだ。そこで各校を運営する法人の直近の決算(2018年3月期)を財務分析で用いられる代表的な指標を用いて調べてみた。対象としたのは2018年時点で学生数の多い私立大学50校を運営する法人である。後述するリストからもわかるとおり、国内の有力私大はほぼ網羅されている。結果は次のようになった。
【流動比率ベスト10】
(1)愛知淑徳1051.7%、(2)帝京平成597.5%、(3)甲南370.9%、(4)拓殖368.1%、(5)神奈川366.8%、(6)九州産業348.5%、(7)東北学院328.1%、(8)名城316.0%、(9)愛知学院315.1%、(10)立正312.9%
【固定比率ベスト10】
(1)愛知淑徳70.5%、(2)帝京平成91.3%、(3)立正91.9%、(4)関西外国語93.1%、(5)拓殖94.3%、(6)東洋94.4%、(7)大東文化95.1%、(8)東京農業95.4%、(9)九州産業95.8%、(10)甲南96.2%
流動比率は法人の短期的な支払い能力を示すもので、この比率が高いほど資金的な余裕があることになる。
いずれの指標でもトップ10入りしたのは愛知淑徳、帝京平成、甲南、拓殖、九州産業、立正の6校だった。なかでも際立っているのは愛知淑徳であろう。抜群の好財務と評価される上場企業でも、流動比率が4桁(1000%)に達するところは数少ない。
上位の顔ぶれから感じるのは、地味系の大学が目立つことであろうか。良家の子女が集まるイメージのある甲南や、金満法人として知られる帝京系はともかく、他の上位校は堅実な二番手校との印象を受けるところが多い。トップ校やライバル校の草刈り場になりやすい二番手校ゆえに、守りを一層固める必要があったのかもしれないが、生き残りに向けて消耗戦が始まっているなかで、鉄壁の財務が得難いオプションになることは間違いあるまい。
もっとも大学やそれを運営する法人が、好財務を広告などで訴求することは憚られることらしい。
「もともと学校法人は営利を追求することを目的としておらず、いたずらに好財務を謳えば、補助金や教職員の覇気にも影響してくる懸念がある」(大学関係者)
要するに藪蛇になるということなのだろう。
(文=島野清志/評論家)
※サンプルとした50校
日大、早稲田、近畿、立命館、東洋、明治、法政、関西、慶應、東海、同志社、中央、関西学院、帝京、龍谷、立教、福岡、専修、神奈川、青山学院、東京理科、駒澤、名城、京都産業、国士舘、上智、中京、東京農業、明治学院、大東文化、神戸学院、東北学院、愛知学院、関東学院、中部、関西外国語、九州産業、國學院、立正、帝京平成、愛知、南山、千葉工業、愛知淑徳、拓殖、桜美林、甲南、東京電機、学習院、獨協