2018年1年間の自殺者の速報値が発表された。警察庁のデータを基に、厚生労働省自殺対策推進室が19年1月18日に公表した。
昨年の自殺者総数は2万598人で、対前年比723人減(3.4%減)。9年連続の減少で自殺者が最多だった03年の3万4427人と比べると4割も減少したことになる。それでも1日当たり56人が自ら命を絶っているわけだ。人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は0.5人改善され16.3人で、1978年の統計開始以来最少となった。
厚労省の昨年11月までのまとめでは、年代別にもっとも自殺者が多いのは50代で3225人。次が40代で3222人と同水準。60代は2811人。40代から60代までで全体の45%を占めている。懸念されるのは、若者の自殺者の増加だ。19歳以下が前の年に比べ唯一増えて543人(16人増)と2年連続の増加となった。未成年女性の自殺者が増加している。
速報値によると、男性は1万4125人(17年比701人減)、女性は6473人(同22人減)。
未成年は男性が35人減ったものの、女性が51人増えたため、前年同期比16人増の543人(男性331人、女性212人)。政府は若者を対象に会員制交流サイト(SNS)で相談体制を強化している。
自殺の原因で多いのは「健康問題」で9450人。次いで「経済・生活問題」3118人、「家庭問題」「勤務問題」などとなっている。未成年では「学校問題」(169人)がもっとも多かった。
●都道府県別では東京都が最多、人口比では山梨県
自殺者数を都道府県別に見てみよう。自殺者数が多いのは東京都2248人、大阪府1210人、埼玉県1186人、神奈川県1119人、愛知県1065人と続く。人口の多い大都市圏が上位を占めている。逆に自殺者数が少ないのは、鳥取県79人、徳島県89人、島根県113人、高知県・福井県133人と、人口が少ない地方の自治体が並ぶ。
人口10万人当たりの自殺者数、「自殺死亡率」で見てみる。山梨県24.8人、青森県22.0人、和歌山県21.5人、岩手県21.4人、新潟県21.1人の順。
自殺者数で使われているデータは、死体が発見された都道府県となっている。その県の住民だけでなく他県から来て自殺した人もカウントされているから、若干割り引いてみなければならない。たとえば山梨県の自殺者数は、18年11月のデータを見ると、死体発見地をベースにした統計では11人だが、住居地では8人となっている。3人は県外から来た自殺者ということだ。
気になるのは自殺者の増加率上位県だ。トップは奈良県で前年比30人(16.0%)増。次いで佐賀県で21人(15.1%)増、山梨県の22人(12.1%)増が続く。逆に低下したのは、徳島県34人(27.6%)減、愛媛県65人(22.4%)減、鳥取県21人(21.0%)減となっている。
●時間帯は昼間、曜日は月曜日
自殺の多い月はいつなのか。
厚労省のデータをさらに検証しよう。「地域における自殺の基礎資料」が年別にまとめられていて、都道府県別の各月の自殺データの詳細が記載されている。自殺者数、職業別、場所別、手段別、時間帯別、曜日別、原因・動機別などに分類されている。直近の18年11月のデータを見ると、手段別では「首吊り」が949件で飛び抜けている。「飛び降り」は144件、「練炭等」が105件、「飛び込み」41件などとなっている。
この資料を18年1月から11月分を集計して、時間帯と曜日をチェックしてみた。時間帯では「12~14時」が1380件、「0~2時」が1299件、「14~16時」が1266件、「6~8時」が1265件、「4~6時」が1252件となっている。自殺者の2割が12時から16時の日中に命を絶っている。
曜日別はどうか。もっとも多いのは週初めの月曜日で2829件。次いで木曜日の2630件。もっとも少ないのは土曜日で2222件、その次が日曜日で2384件となっている。学校や職場が始まる月曜日は気が重くなりがち。土日の家族や友人とのコミュニケーションの図り方が、自殺を思いとどまらせるポイントになってくるのではないだろうか。
自殺者の総数が減少傾向を続けているとはいえ、年間2万人という数字は重い。とりわけ、これからの日本を担っていく未成年の自殺者が増加傾向にあることは深刻だ。学校や就職を取り巻く環境をいかに改善していくか。
年間の自殺者は1997年まで2万人台で推移したが、98年から14年連続で3万人を超えた。最多は2003年の3万4427人。最少は1981年の2万434人だった。
(文=山田稔/ジャーナリスト)