2020年の東京五輪・パラリンピック開催に伴う訪日外国人増加に向けて、政府も積極的に推し進めるキャッシュレス化。日本の電子決済普及率は先進国のなかでは低いとはいえ、キャッシュレス決済比率は08年の11.9%から16年は20.0%へと推移しており、今後も着実に浸透していくだろう。
しかし、電子決済ならではのトラブルもある。それがICカード紛失による第三者の不正利用だ。上限いっぱいにチャージしていれば、それだけで被害は大きくなるのに加えて、最近は支払い時に残高が一定額を下回った時点で、登録してある銀行口座などから自動的に入金される「オートチャージ」というシステムがあり、不正利用者はチャージされている金額以上の買い物ができてしまうこともある。
もしICカードをなくしてしまったら、運営会社になるべく早く利用を停止してほしいところだが、そう簡単にはいかないようだ。
●ネットには紛失による被害報告が多数
Twitterで報告されたところによれば、セブンイレブンの電子マネー、nanacoカードを落としてしまったとあるユーザーが、すぐに利用を停止してもらおうとコールセンターに連絡をするも、利用停止は翌日になると言われてしまったそうだ。しかも、その連絡をしている間にカードを拾ったと思われる第三者に、オートチャージされたうえで2万円ものチャージ額を不正利用されてしまい、いずれも補償は一切なかったという。
2万円でも大きい額だが、nanacoカードのチャージ上限額は5万円、最大オートチャージ金額が3万円なので、最悪8万円の被害にあう可能性がある。このような紛失等による第三者の不正利用被害の報告は、インターネット上で後を絶たない。
Visaなどのカード会社であれば、即時に利用を停止してくれるはずだが、なぜnanacoカードはそれができないのか。当カードを運営する株式会社セブン・カードサービスの企画部に問い合わせてみた。
――なぜ、利用停止は即時ではなく翌日になってしまうのか。
「詳細については、セキュリティに関する部分もあるため、控えさせていただきます」
――改善の予定は?
「現時点で予定はしておりません」
――オートチャージは即時利用停止できる?
「クレジット・オートチャージは、お客様からサービスセンターへご連絡いただき『利用停止の登録』手続き完了後に即時利用停止になります」
――不正利用に関する補償は受けられない?
「利用停止後の残高については再発行カードに引き継ぐことができますが、利用停止前に不正利用された部分に関しては、補償の対象にはなりません。
――もし紛失してしまったら残高分は諦めるとして、オートチャージ被害にあわないための対策は?
「すぐにnanacoお問合せセンターにお電話いただき、利用停止のお手続きをしていただければと思います」
ただし、ピークタイムなどは若干電話がつながりづらいこともある。そういうときはオンラインなどから紐づけているクレジットカード自体の利用を停止したほうが、スピーディーな対策となりそうだ。
●即利用停止は電子決済サービス全体の課題?
ちなみに、その他のオートチャージ機能のある電子決済サービスを見ていくと、楽天EdyはEdyカード・おサイフケータイを紛失しても利用停止ができなかったり、PASMOやSuicaは各エリアの駅やバス営業所などへ行って手続きする必要があったりと、電子決済サービス自体、即時利用停止が難しいシステムなのかもしれない。
電子決済はポイントが貯められたりとメリットも大きい。だが、このあたりの対策がしっかり整わないと、腰の重い現金主義者は乗り換えを渋り続けるだろう。
(文=編集部)