平成最後の大学受験シーズンが終わり、「サンデー毎日」(毎日新聞出版/3月24日号)によって恒例の高校別大学合格者数ランキングが発表されている。まだ速報版の段階だが、関係者はもとより、自身の出身校に誇りを持つ方々などは、今年もまた条件反射のように購読してしまったかもしれない。

もっとも頁を手繰ってみて、いささか白けた気分になった方も多いのではないか。

 もっとも注目される東大合格者数のランキングは例年の通り、開成が他校を引き離して38年連続の首位。2位以下も麻布、聖光学院、灘とお馴染みの名前が続く。京大もまた北野、東大寺学園、洛南と毎年トップグループを形成する顔ぶれが並んでいる。

「まったく意外性のない結果だった。全国区で知られる有名進学校が上位を占めるのはいつものことであるが、近年は日比谷に象徴される都立の旧ナンバースクールの復活や、今世紀に入ってから相次いで設立された公立の中高一貫校の台頭が見られた。それも一段落して進学校の勢力図は一層固定化してしまった印象を受ける」(学習塾関係者)

 予定調和になるのも無理はないのかもしれない。現行のセンター試験を大幅に改変した大学入試共通テストが実施されるのは2020年度からであり、今年及び来年は、長年慣れ親しんだ旧制度の入試制度が続けられる。もともと波乱の起こりづらい状況にはあるわけだ。

 そこで東大合格者数の上位常連校(調査対象は過去3年間の東大合格者50名以上の高校・速報時点で不詳の筑波大付属駒場、女子学院、甲陽学院は除外)を、あまり取り上げられていないアングルから分析してみよう。

●単なる合格者数の羅列だけでは読み取れない

 まずは数ではなく、率を基準にしてみる。少子化の進行、定着に伴って1学年の生徒数が4桁に達するようなマンモス校は珍しくなったものの、高校によって規模は異なる。
実際に上位の進学校でも卒業生の数は100人台から400人台まで、高校によってかなりの差がある。いずれの学校も成績上位層が入学するので、合格者数は大規模校のほうが有利になりやすい。

 それでは卒業生のうち、どのくらいの比率が東大に合格するのか。結果はトップが開成で4割超、続く灘、栄光学園、聖光学院、桜蔭までが3割を超えた。順位については合格者数のランキングと、さほど代り映えはしないものの、トップクラス校の合格率は合格者数と比較すると、かなり拮抗していることはわかる(過去の実績から筑波大付属駒場が合格率では開成をしのぐ公算は高い)。

 さらに男女比を考慮して試算してみよう。東大の合格者数は例年、概ね男子8割、女子2割で推移している。畢竟、合格者数では男子校のほうが有利になり、女子校や共学校は割を食うかたちになる。各校卒業生の男女比から修正を加えると、断然の首位は女子のトップ進学校として知られる桜蔭になった。同じく新御三家の豊島岡や、筑波大附属、学芸大附属、日比谷など共学校が10傑入りしている。

 規模や性差を勘案したランキングからいえそうなのは、一般に強く信じられている、開成一強のイメージが薄らぐことだろう。トップクラスの進学校は、それぞれ優れた資質を持つ一群の生徒を擁しており、開成に匹敵する、さらには凌駕するような進学実績を有している。
このあたりは単なる合格者数の羅列だけでは読み取れないところだ。
(文=島野清志/評論家)

【東大合格率ランキング】
(1)開成0.436、(2)灘0.394、(3)栄光学園0.365、(4)聖光学院0.338、(5)桜蔭0.301、(6)麻布0.297、(7)駒場東邦0.227、(8)渋谷教育学園幕張0.191、(9)ラ・サール0.172、(10)武蔵0.169、(11)久留米大附設0.165、(12)筑波大附属0.151、(13)日比谷0.1454、(14)海城0.1453、(15)学芸大附属0.143、(16)浅野0.118、(17)渋谷教育学園渋谷0.114、(18)東大寺学園0.113、(19)早稲田0.110、(20)西大和学園0.106

【各校の規模・男女比を考慮したランキング】
(1)桜蔭2.75、(2)開成1.00、(3)灘0.91、(4)栄光学園0.84、(5)聖光学院0.78、(6)麻布0.68、(7)豊島岡0.63、(8)筑波大附属0.55、(9)学芸大附属0.53、(10)日比谷0.527、(11)駒場東邦0.524、(12)久留米大附設0.50、(13)海城0.47、(14)渋谷教育幕学園張0.442、(15)渋谷教育学園渋谷0.436、(16)ラ・サール0.393、(17)武蔵0.387、(18)旭丘0.34、(19)西大和学園0.29、(20)浅野0.27

※合格者数は「サンデー毎日」(毎日新聞出版/3月24日号)、卒業生数は同誌及び各校ホームページを参照

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