目標はフランス人形。でも、達成率はまだ8%くらい――。
韓国や台湾では受けたことを隠す人もいないといわれるほど“当たり前のこと”になった整形手術だが、日本では今でも口外する女性は少ない。しかし、「フランス人形になりたい」という一心から、総額2億円を超えるほど整形手術を重ねるタレントのヴァニラさんは、テレビやラジオで積極的に自らの体験を語っている。
そんなヴァニラさんが先月掲載された「ORICON NEWS」のインタビュー記事内で次のように発言し、反響を呼んでいる。
「整形をすれば必ず人生が変わるっていうわけじゃない。整形すれば美しくなれるとか楽しくなれるっていう考えだったら止めたほうがいいと思います。こういう顔にしたいという明確な目標がないと、正解がないから永遠に終わらなくなってしまうんです。メイクや髪型、言葉遣いや服装など自分でこれ以上どうにもならないところまで来たら、初めてオペを考える。それで人生が変わる目処がしっかりと立って、目標がある人にはおすすめしますね。でも悩むくらいだったら一度カウンセリングに行って先生とお話してみるのが良いと思います」
そんなヴァニラさんが信頼してカウンセリングに通っている、東京美容外科統括院長の麻生泰氏に、日本の美容整形の現状などについて話を聞いた。
「ヴァニラさんとの最初の出会いは大阪でした。大阪で彼女が働いておられて、僕もまだ駆け出しの美容外科医でした。ちょうど東京美容外科の大阪院を立ち上げた頃だったと思いますね。
美容整形を受けるうえで何が重要なのか。麻生院長は、美容整形を受ける側の患者と、手術をする側の医師との間のマッチングが大切だと語る。
「整形手術をする必要のない人もいますし、手術を受けてはいけない人もいます。これを適用といいます。例えば、胸が大きい人に豊胸手術はしないし、鼻が高い人にさらに鼻を高くする手術はしません。“この手術をこの人にしたら、綺麗になるな”というのがあるんですが、それを本人がわかっていないことが多い。人の美的センスはそれぞれで、本人はそれがいいと思っている。そのあたりがマッチングしないとダメなんです。
でも、『それはおかしいよ』『違うよ』と言うと、ほかの病院に行ってしまったりして、言うことを聞かない人が多い。ヴァニラさんも、僕とマッチングが合わない患者さんのひとりです(笑)。『もう、やめたほうがいいよ』と言っても、『ここを短くしたいから切りたい』とかね。
最近は美容整形に対するイメージもずいぶん変わりました。いまだにハードルがあるとすれば、お金ですよね。手術料金は確かに高いですから。でも、料金を安くすると患者さんが殺到してしまい、とても対応できなくなるので、そこが痛し痒しといったところかもしれません。それでも、来院者数は対前年度比で2倍くらいになっている。この1年くらいで急激に増えてきているのが現状です」(同)
●涙を流して喜ぶ患者
なぜ患者数が急増しているのか。麻生院長はSNSの影響が大きいと指摘する。
「ヴァニラさんのようにコンプレックスから来院する患者さんより、“周りがやっているから”という理由で来院する患者さんが増えているんです。例えばキャバクラで売上ナンバーワンの女性が整形して、それをSNSとかにアップする。それを見て私どものところに来るというパターンです。
整形手術を受けた患者さんの多くは、結果に満足しているのか。なかには手術したことを後悔する患者さんは、いないのだろうか。
「手術したことを後悔すればクレームになりますが、クレームはほとんどないですね。例えば胸にシリコンを入れて、大きすぎるから抜きたいという患者さんはいます。でもそれは後悔ではなくて、体質に合わないとか、息苦しいから抜くわけです。逆にもっと大きくしてほしいという人も当然います。なかには涙を流して喜ばれる患者さんもいますし、ほとんどの患者さんには感謝されています」(同)
では、ヴァニラさんのように何度も手術を繰り返すことで、リスクはないのだろうか。
「ヴァニラさんのように何度も繰り返す人は、それほど多くありません。繰り返すのは、ひとつうまくいったら、次もう1回やればもっと良くなるんじゃないかという心理が働くからです。『この人はあと鼻を手術すれば、ほかは必要ないな』と思っても、『今度は目を手術したい』という人はいます。
ヴァニラさんは手術するところがもうないのですが、勝手につくってくるんです(笑)。
特にリスクが高いのは、同じ箇所をもう1回やる場合ですね。“ここ終わったら、別のところ”ならいいのですが、“同じ箇所をもう1回”という方もいて、同じ箇所を切ってもう1回開くのは大変なんです。ヴァニラさんの場合は、鼻の手術を何回もやられているのですが、最初に私が見たときから皮膚もけっこう限界にきていて、中に入っているプロテーゼが飛び出すリスクもあるので、鼻に関してはもう触らないほうがいいと思っています」(同)
●「整形そのものが人生になってしまうというのは、違うかな」
ヴァニラさんが手術を繰り返すことを、麻生院長はどのように考えているのか。最後に率直な気持ちを聞いてみた。
「ヴァニラさんは整形タレントといわれていますが、彼女が若い頃、こういうふうに整形をアピールするタレントがいてもいいんじゃないかという話をしたことがあるんです。整形したことを隠す人が多いじゃないですか。私も美容外科をもっと一般的なものにしたかったし、もっと幸せなものだということを伝えてほしいと思っていたので、どんどんやってくださいと言ったことがあるんですが、今はちょっとやり過ぎかなと思っています。
彼女はありとあらゆる美容整形の門をたたいて、セカンドオピニオンを求めて僕のところに帰ってくる。『僕はやらないよ』と言うと、別のドクターにやってもらっているみたいです。
整形手術を検討する際には、信頼できる医師にしっかりと相談することが大切といえるだろう。
(文=兜森衛)