タレントのヒロミがプロデュースした商品をはじめとする9社が販売する「加圧シャツ」が、消費者庁から「誇大表示」に当たるとして、景品表示法に基づいて措置命令が出された。

 これらの商品は、着るだけで痩身効果および筋肉増強効果が得られるかのように標榜していたが、実際は「そのように見える」だけであって、痩せたり筋肉が増強する科学的データはないとされている。

「自分の体がガリガリとなる可能性もあります」「腹筋を割りたい人に」など、明らかに効用があるかのように謳っているため、騙されて購入した人も多いようだ。

 これに対しインターネット上では、「着るだけで痩せたり筋肉が増えるわけがないというのは明らかで、“騙された”とはいえないのではないか」「多くの人は、引き締まって見えるだけとわかって買っているのではないか」など、オーバーな表現ではあるが、騙された人は少ないのではないかと見る向きもある。

 このような場合、「痩せる」もしくは「筋肉が増強する」と勘違いして購入した人は、メーカーに返品および返金を求めることはできるのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士に話を聞いた。

●返品・返金を求める手順

 この「加圧シャツ」、要するにキツキツのシャツを着ることで体が引き締まって見えるだけ、というものですよね。しかし広告では「腹筋を割りたい人に」などと表現しているので、「見えるだけ」ではなく、あたかも「腹筋が増強する」と勘違いしてしまうでしょう。

 この場合、実際のものよりも優れたものとして表示することになるので、景表法が禁止する「優良誤認」に当たります。

 では、この場合、どのように返品・返金を求めていくかというと、「消費者契約法」という法律を使います。

 具体的には、消費者契約法が「商品の重要事項について事実と異なることを告げられ、これによって、告げられた内容が事実であると誤信して購入した場合、契約を取り消すことができる」旨を規定しているので、販売業者に対し「私は、腹筋が増強すると説明されて(広告を見て)、実際に腹筋が増強すると思って買いました」と主張し、返品・返金を求めていくことになります。

 もっとも、販売業者が「実際のものよりも優れたものとして表示すること(景表法の問題)」と、「商品の重要事項について事実と異なることを告げること(消費者契約法の問題)」は違いますし、さらに「実際に腹筋が増強すると思って買ったこと」も説明しなければならないので、今回の消費者庁の措置命令があったことをもって、イコール返品・返金が認められるというわけではありません。

 とはいえ、今回の措置命令をしっかり反省している販売業者であれば、ウダウダ言わずに返品・返金に応じることでしょう。あくまで突っぱねる販売業者であれば、あとは弁護士の仕事です。


――つまり、「誠実な業者」であれば、すんなりと返金に応じてもらえると考えられるが、もめたら弁護士の出番となるようだ。うっかり購入してしまった方は参考にしていただきたい。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)

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