「カラダに良い油を摂ろう」とか「油で痩せる」などと考え、ココナッツオイルやアマニ油、荏胡麻油などを摂っていませんか?
かつては、油はとにかく体にマイナスで、摂ると体重が増えるとか、生活習慣病の原因になるなどということから避けられる傾向にありました。
ところがです。
でも残念ながら、ココナッツオイルもブームが去り、継続して摂る人が少ないことをみると、効果を感じなかった人が多かったのだと思います。そしてこのブームが去るとともに、逆にココナッツオイルを摂ることで悪玉コレステロールの増加や、それにともなう心臓や血管の病気が指摘されるようにもなっています。
また最近は、アマニ油や荏胡麻油、EPAなど、体に良いという油がメディアで頻繁に取り上げられ、どんどん摂るように勧められていたりします。
でも、どんなに体に良い油でも、すべての油は1g当たり9kcal。高エネルギーというのはかわりません。そこで2回にわたって、油の上手な摂り方についてお話します。
●やっぱり油は太る
「これを食べると○kcal」といわれたり、商品にもエネルギー量が表示されていますが、エネルギーはたんぱく質と糖質、脂質の3つの栄養素がどのくらい入っているかで決まります。たんぱく質と糖質は1gが4kcalで、脂質は1g当たり9kcalです。つまり脂質(=油)は、同じ量で比べると2倍のエネルギーなのです。
だからステーキを食べるとして、脂質の多いサーロインと赤身のヒレでは、エネルギーが2倍もサーロインのほうが高くなるのです(100g当たり:サーロイン498kcal 、ヒレ223kcal)。
また、てんぷらやとんかつなどの揚げ物の衣も、はがすことで多くのエネルギーをカットできますが、からあげの衣ははがしてもあまりエネルギーはかわりません。それよりも、揚げ物の場合は肉か魚かで油の吸収が変わることを覚えておきましょう。実は、魚のほうが油をよく吸うのです。ですので、揚げ物を食べるときに「魚のほうが肉よりも低脂肪だから」というイメージで選んでしまうと、より高エネルギーになってしまうことがあるのです。
ですから、油からの余計なエネルギーを抑えるには、肉料理を食べるときにはサーロインよりもヒレなどの部位を選んだり、皮などを避けるだけでだいぶ違います。また揚げ物の場合は上手に種類を選びましょう。
さてここまでが一般的な油を摂り過ぎないための食事のお話です。
●肉の油、魚の油
では次に、最近摂ることが勧められている油のお話をします。
実はカラダに良いといわれている油は、すべて「オメガ3」です。油は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大きく分けることができます。簡単にいえば飽和脂肪酸は肉に含まれる油で、不飽和脂肪酸は魚に含まれる油です。
ですから多くの人が思っている、「体にとって肉の油は良くない、魚の油は良い」というイメージは半分は当たっています。
肉の飽和脂肪酸は多く摂り過ぎると悪玉コレステロールが増加して、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが増加します。健康診断などの血液検査でLDLコレステロール値が高い人は、飽和脂肪酸は摂り過ぎないようにしましょう。
ただ、ここで間違えないでほしいのが、LDLコレステロールが高い人は、肉そのものがダメなのではなく、肉の脂身が原因だということです。肉は先ほど紹介した、脂身が少ないヒレやもも肉を選ぶ、もしくは皮は摂らないなどの工夫をすればよいのです。
そして、ココナッツオイルに多く含まれている油も、実は飽和脂肪酸だったのです(もちろん飽和脂肪酸にもさらに種類があり、このお話は第3回にて)。
また体に良いイメージのある魚の油も、摂り方によってはマイナスになることがあります。魚の油はEPAやDHAです。「魚を食べると頭がよくなる」という歌がありましたが、これは魚そのものではなく、DHAのことでした。EPAも魚の油ですが、こちらは心筋梗塞などのリスクを下げる脂質です。ですが、どちらも加熱に弱く酸化しやすいのです。
もうおわかりですね。魚の良い油は焼き魚よりも刺身のほうが摂れるわけです。とはいえ、焼き魚が食べたいこともあるでしょう。その場合は、焼いたらすぐに食べるようにするのです。良いアブラのEPAやDHAは、加熱や酸化に気をつけることが摂り方のコツです。
次回ももう少し、体に良い油のお話をします。
(文=川端理香/管理栄養士)