中国で越境EC(電子商取引)などのインターネット通信販売が拡大を続けてきたが、急ブレーキがかかった。
2019年1月1日に「電子商取引法」が施行されたためだ。
個人・法人・非法人組織にかかわらず、電子取引業者の登録を義務づけた。違反者には罰金が科せられる。
これにより大打撃を受けたのが「代購」と呼ばれる仕事だ。中国のネットユーザーから注文を受けて商品の代理購入を行う個人事業者のことだ。隆盛を極めた代購ビジネスは終息することになる。
それだけではなく、一般の旅行客にも影響が出る。個人が入国する際に持ち込める商品の限度額は5000元(約8万円)以下とされ、これを超えると課税対象になる。
日本を訪れる中国人観光客は、親戚や知人から頼まれて化粧品や市販されている医薬品を大量に買い求めてきた。だが、8万円以上買えば課税対象になることから、買い控えが起きた。
●美容ローラー「リファ」のMTGの純利益が74%減
中国のEC規制の影響が、日本企業の決算に影を落とした。
18年7月に東証マザーズに上場したばかりの、美容・健康器具を販売するMTG(9月決算)は、18年10~12月期連結決算の売上高が前年同期比12%減の140億円、営業利益は68%減の12億円、純利益は74%減の7億円だった。
減収減益の要因は、中国のEC規制強化に備えて、買い控えが進んだためだ。
人気商品である美容ローラー「ReFa(リファ)」は、日本国内や韓国の免税店で、転売を目的にまとめ買いする需要があったが、これが急減速した。
19年9月期の通期業績は、売上高の700億円(前期比16%増)、営業利益が98億円(同10%増)、純利益は63億円(同14%増)とする従来予想を据え置いた。2ケタの増収増益を見込んでいるが、株式市場は懐疑的だ。
MTGのIPO(株式公開)初値は、公開価格の5800円を2割上回る7050円、18年7月12日には8120円の上場来高値をつけた。09年に発売した「リファ」が累計700万台を超えるヒット商品になったことで、株が買われた。18年9月期のブランド別売上高で「リファ」は同社全体の売り上げの53%を占めた。特に中国からの観光客に人気で、中国人のショッピングの定番品となった。
だが、インバウンド(訪日客)需要の減退により大幅な減益になったことから、個人投資家の売りによって株価は急落。3月25日には上場来最安値の2179円を記録、高値の3割以下に落ち込んだ。
●ドラッグストアの成長に急ブレーキ
ドラッグストアの18年度第3四半期(2月決算会社の9~11月期決算、3月決算会社の10~12月期)で、大手5社のうち4社が減益となった。ウエルシアホールディングス(HD)とスギホールディングス(HD)は2月決算、サンドラッグとマツモトキヨシホールディングス(HD)、ココカラファインは3月決算である。
ドラッグストアは粗利の高い大衆薬(一般用医薬品)を原資に、化粧品や食品、飲料を低価格で販売することでスーパーマーケットなどから顧客を取り込み、売り上げを伸ばしてきた。
近年は、調剤事業が堅調なのに加えてインバウンドへの化粧品の販売が伸び、小売業の勝ち組と見なされてきた。
ところが、第3四半期の3カ月間は、5社合計の営業利益が前年同期比で2%減とマイナス成長になった。
売上高で業界首位のウエルシアHDは、薬剤師や化粧品販売員の採用増が重荷で、18年9~11月期の営業利益は10%減の46億円となった。
人件費の増加が利益を圧迫するなか、中国のEC規制を見越して、インバウンドが買い控えたことが痛手となった。
今年1月からのEC規制で、ECでの転売を目的に商品を買い込む「代購」が減る。代購が大量に購入していた化粧品や大衆薬の売り上げは当然、落ちる。
成長力の鈍化への懸念から、ドラッグストアの株価は冴えない。ウエルシアHDの昨年末の株価は4926円だったが、3月25日には3565円の昨年来安値となった。昨年末比28%安と大きく下げた。昨年来高値は6560円(18年10月3日)。3月25日の終値は3580円。
スギHDの18年9~11月期の営業利益は50億円で同5%減。
株価は昨年来高値が18年5月17日で6770円。同安値は12月27日の4080円。3月25日の終値は4820円。高値と安値を比較すると4割の値下がりだ。
サンドラッグの18年10~12月期の営業利益は97億円で同3%減。高値は5770円(18年5月14日)、安値は3110円(19年3月25日時点)なので、46%の下落だ。3月25日の終値は3115円で安値圏に突入した。
マツモトキヨシHDの18年10~12月期の営業利益は102億円で同8%の増益。1社だけ増益だった。それでも株価は振るわず、同高値は5760円(18年5月21日)、安値は3120円(19年2月12日)で46%安。3月25日の終値は3590円だ。
ココカラファインの18年10~12月期は37億円で同7%減。
株価は高値9020円(18年5月18日)、安値は4375円(19年3月25日)で半値以下。3月25日の終値は4375円で昨年来安値のままだ。
●百貨店は免税売上高が明暗を分ける
日本百貨店協会がまとめた19年1月の全国百貨店のインバウンド向けの免税売上高は、前年同月比7.7%減の262億円となり、26カ月ぶりに前年同月を下回った。
免税売り上げの購買客数は約42万人と0.8%増えたが、1人当たりの購買単価が8.4%減の6万3000円に落ち込んだ。転売業者の買い入れが減ったことが主因だ。
2月4日からの1週間は「春節商戦」だった。
高島屋の2月の免税売上高は前年同月比8.6%増。大丸松坂屋の2月の免税売上高は16.8%増。免税売上高は、地域と店舗によってバラツキが大きい。2月のインバウンド(シェア7.6%)は過去最高の319億円(前年同月比14.8%増)を記録し、客単価も8カ月ぶりにプラスとなった。
(文=編集部)
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