突然2人の幼い命を奪った大津園児死亡事故。報道や県警の発表によれば、乗用車を運転する52歳女性が、前方から直進してくる軽乗用車に注意を払わずに右折し、62歳女性が運転する軽乗用車と衝突。
乗用車で右折した52歳女性は県警の調べに対して「前をよく見ていなかった」と話す一方、園児の列に突っ込んだ軽乗用車の62歳女性は「乗用車が急に右折してきた。避けるためにハンドルを左に切った」と話しているといい、62歳女性のほうは県警から過失の程度は低いと判断され、8日釈放されている。
結果として園児たちの列に突っ込んだのは62歳女性が運転していた直進車だが、もし上記内容が事実であれば、強引に右折してきた52歳女性の乗用車が起こした事故に、直進車のほうは不運にも巻き込まれた結果とも感じられるが、弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏はこう語る。
「『直進車女性』ですが、民事上では、このような交通事故の際の『過失割合』として『右折車女性』:『直進車女性』=80:20とされており、『過失』はゼロではないことになっておりますが、刑法上の『過失』、すなわち上記の『注意を怠った』と言えるかどうはきわめて疑問です。したがって、私は、『直進車女性』は自動車運転処罰法第5条違反などは問われないと考えます」
この直進車の女性をめぐっては、一部メディアが実名で報道しているが、それについて疑問を投げかける声も聞こえてくる。
「県警はこの2人の名前を報道機関に対し発表しているようなので、実名で報じるかどうかは各社の判断に委ねられており、メディアの間でも実名報道と匿名報道で対応が分かれています。特に直進車の女性は県警から過失の程度は低いと判断されてすでに釈放されており、危険運転をする乗用車に巻き込まれて、結果として避けられずに不幸にも園児をひいてしまうかたちになった可能性も高い。もし仮に今後罪に問われなかったとしても、その名前が世間に公けにされれば、生活するコミュニティのなかで、さまざまな不都合に直面する事態も想定されます。第三者から、いわれのない嫌がらせ行為を受ける懸念もあるでしょう。そういう意味では、現時点で直進車の女性の実名を報道するというのは、配慮が欠如しているのではないでしょうか」(新聞記者)
また、前出の山岸弁護士もこう語る。
「『直進車女性』の実名が報道されていることですが、悲しい交通事故が続いている状況で、再び『高齢ドライバー』であったため、マスコミが“腐った義侠心”にかられて“勇み足”をしたのでしょう。
実名の報道をめぐっては、今後議論を呼びそうだ。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)