●事故による死亡は死因の6位

 2016年の統計ですが、1年間で約130万7000人の方が死亡されました。24秒に1人のペースなのだそうです。

ところで死因トップ3はご存じでしょうか。保険会社が商品を紹介する時に死因の話をすることが多いので、ご存じの方が多いかと思います。

 死因の1位はがんです。2位は心疾患、3位は肺炎です。ここまではご存知の方が多いと思います。4位は脳卒中で、5位が老衰です。医療の進歩とともに病気の治癒率が向上し、天寿を全うする方の割合は年々増えています。私も老衰で最期を遂げたいです。

 そして6位が不慮の事故です。阪神淡路大震災や東日本大震災で亡くなられた方は事故死としてカウントされるため、その年のグラフでは一時的に増えているように見えます。しかし、それ以外は横ばいです。

 事故死の一つである交通事故死は、法整備や取り締まりの強化のおかげで少しずつ減ってきています。
2018年では3532名の方が亡くなりました。2017年に対して4.4%減少しています。先日、運転免許更新手続きの際に講習会に参加したところ、高齢者と飲酒運転の事故が多いので、規制を強化したという説明を聞きました。

●薬を飲んでいる方の運転について厳しくなった

 薬を飲んでいる方の交通事故死については、禁煙治療薬「チャンピックス」が有名でニュースでも取り上げられました。2011年7月に添付文書の改訂が行われ、運転時に関する指導が行われるようになりましたが、それでも事故が後を絶たないため、10月にも「医薬品・医療機器等安全性情報」が出されました。

 そして2013年には、すべての医薬品について運転注意などの記載をするように通達が出ました。私たち薬剤師は添付文書の情報に基づいて指導することが義務付けられました。当時、近隣病院の医師から「うちで採用している薬のうち運転禁止薬についてリストをつくってちょうだい」と言われ、添付文書を一枚ずつ見てリストをつくりましたが、非常に大変な作業でした。もちろん薬局でもらうおなじみの説明書にも、必ず記載されています。

 また、道路交通法第66条では、「何人も、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」と記載されています。運転禁止薬を飲んでいる時は、これに該当します。2013年に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略して自動車運転死傷行為処罰法)がつくられ、その第2条には次のようなことが記載されています。


 「次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上(最高で二十年)の有期懲役に処する」

 その行為の一つが「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」なのです。この薬物にはもちろん運転禁止薬が含まれます。薬を飲んで眠気やふらつきが起こってしまい、相手を事故で死亡させてしまったらこの法律が適用されます。この取り決めはあまり知られていませんが、私たち薬剤師は説明文書を渡して指導しています。市販薬の場合は添付文書に必ず記載されています。

●市販の運転禁止薬

 うっかり運転禁止薬に該当する市販薬を買わないようにするためには、薬剤師や登録販売者などの有資格者に「日常的に運転しています」と申し出たほうが手っ取り早いです。覚えておくとよいのが、鼻水止め、咳止め、鎮静薬の3つです。これらのすべてが運転禁止薬というわけではありません。CMでおなじみの「アレグラ」「クラリチン」は運転できます。「アレジオン」は「運転注意薬」に該当し、眠気が出ないわけではないので注意して運転してください。

 総合感冒薬には鼻水止めと咳止めは必ずといっていいほど含まれていますし、頭痛薬には鎮静薬が含まれていることが多いです。風邪の時は運転をせず大人しく寝ることが多いでしょうが、頭痛の時は、ちょっと痛みが治まればうっかり運転をしてしまうかもしれません。
頭痛薬を買う時は、鎮静薬が含まれていないものを選んでください。箱に「アリルイソプロピルアセチル尿素」と書いてあるものは鎮静薬なので、それ以外を買うようにしてください。

 また、総合感冒薬に含まれる鼻水止めや咳止めはほぼすべて運転禁止薬です。鼻水止めを配合せず、咳止めを漢方にした「パブロン50」という薬がありますが、これは運転ができます。鼻水が気になる症状の時は小青竜湯に鼻スプレーを組み合わせて使うといいです。

「眠気が出にくい」と箱に書いてあっても、「これは運転ができる」と思わないようにしてください。眠気覚まし効果がある「無水カフェイン」を配合させることで、結果的に眠気が出にくくさせます。この成分は頭をすっきりさせる効果もあるので、解熱鎮痛薬と合わせて取ると頭痛でつらかった症状がすっきりします。あくまでも添付文書に書いてあることが根拠となります。薬を飲んで眠気が出たことがないから大丈夫というわけではありません。眠気を感じないレベルで判断に狂いが出ることがあり、これが事故のもとになります。

 ビジネスパーソンは運転をする機会が多いのでうっかり運転禁止薬を飲まないように注意が必要です。
知らなかった、聞いていなかった、ではすまされません。
(文=小谷寿美子/薬剤師)

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