国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
5月の最終週に入ったとたん、永田町では衆参ダブル選挙の噂がピタッと聞こえてこなくなりました。
ついこの間まで、ポスターや推薦ハガキの手配、投票日も「7月21日」説や「8月4日」説などが毎日のように流れていたのに……。どうなっちゃったんでしょうね。
●自ら評判を落とした山尾志桜里の愚行
ダブル選の熱が収まった永田町では、「女を買いたい」発言の丸山穂高衆議院議員よりも、山尾志桜里衆議院議員の「無届けで男性と海外渡航」のほうが(秘書的には)ホットな話題です。
6月26日まで国会が開かれていますから、国会議員は連休中といえども海外に出るには所属院議長に届け、議院運営委員会の了承を得なくてはなりません。これは議員の活動の基本のキで、こんな事務手続きを「忘れる」というのはまずあり得ないです。
それに、本人は当然ですが「秘書は何をやっていたのか」という話にもなります。山尾議員の政策秘書は民主党で長いこと秘書を務め、地方議員の経験もある有能な人物なのですが、山尾議員はこの秘書にも黙って渡航していたのですね。
実は神澤は、この秘書が報道の直前に国会の地下通路をうつむいて歩いている姿を見かけたのですが、あまりにもしょんぼりしていて声をかけられませんでした。「元気ないなぁ。どうしたのかな?」と気になっていたので、“文春砲”を見て納得しました。
なぜ山尾議員は秘書にすら黙って、しかも以前から関係が噂されている倉持麟太郎弁護士と海外に行ったのでしょうか? 考えられるとすれば、届けると衆議院広報に掲載されるので「オープンにしたくない」人は届けない……という事情です。
理由はどうであれ議員としての自覚がなさすぎですが、これについてなんの処分もしない立憲民主党もおかしいです。枝野幸男代表も弁護士なので、「弁護士仲間」には甘いんでしょうか。せっかく予算委員会などでのキレのある質問が評価され出していたのに、山尾議員は自ら政治家としての評判を落としてしまいました。選挙区の有権者たちは、とてもがっかりしていると思います。
ところで、山尾議員は2016年の民進党結党時に政調会長(当時)に就任してから「人が変わった」ともっぱらの評判です。それまでは秘書たちにも笑顔であいさつを交わしていたのに、政調会長になってからは「秘書の分際で私に話しかけるなんて100年早い」という態度になって、うかつに近寄れなくなりました。
野党とはいえ中枢にいることで感覚が麻痺してしまい、挙げ句の果てに「無届けの海外渡航」の先に待っている事態を予想することすらできなくなったのでしょうか。山尾議員のことを評価して影ながら応援していた議員も少なくなかったのですが、本人が愚かさをどんどん露呈しているので、残念でなりません。
●丸山騒動の裏で鈴木宗男が火消しに奔走
5月14日に除名処分を下した後も、相変わらず日本維新の会関係者は「丸山議員問題」でバタバタしています。今も、維新の事務所には丸山議員への批判の電話とともに、維新支持者からの「なぜ同志である丸山議員を守らないのか?」という抗議の電話も殺到しているそうです。
「戦争発言」はもちろんですが、「週刊新潮」(新潮社)や「週刊文春」(文藝春秋)が国後島での「女を買いたい」発言を報じ、本人が「適応障害で2カ月の療養が必要」という診断書を提出して議員運営委員会からのヒアリングを欠席したことで、またまた批判が噴出しました。
電話応対に追われる秘書たちは、もともと丸山議員は問題行動が多かったことや、今回の維新の決定(除名および議員辞職勧告決議案提出)の正当性を説明しているそうですが、「お前の話のほうが嘘くさいわ! 丸山議員は必要な国会議員なんや!」と逆に怒鳴られる始末です。本当に気の毒ですが、駅前で酔っ払ってケンカするなど、さんざん“やらかして”きた丸山議員が、なぜ議員としてやってこられたのでしょうね。
特に週刊誌が報じた国後島での“女性問題”はシャレにならないレベルで、「ビザなし訪問事業」自体が中止になってしまうかもしれないとまで言われていました。
なんと、国後島の「友好の家」(いわゆる「ムネオハウス」ですね)の玄関ホールで酔った丸山議員が「女を買わせろ!」とわめいて外出しようとし、同行していた内閣府の職員が羽交い絞めにして制止する様子が撮影されていたようです。関係者らは、「もしこの動画が世に出たら交流事業はおしまいだ」と考え、口を閉ざしたそうです。そのため、記者団の前での「戦争発言」だけが問題にされたのですね。
この「戦争発言」に関しては、すぐに政府も維新もロシア側に「政府や党としての考え方ではない」と説明して理解を求めました。このとき迅速に動いたのは、新党大地の鈴木宗男代表です。
鈴木代表は報道前に「戦争発言」を聞きつけ、すぐに在日ロシア大使に連絡して「あくまでもひとりの愚かな国会議員の言動にすぎない。彼は何も代表していない立場だ。政治案件にすべきではない」と説明したそうです。
ちなみに、鈴木代表は検査で食道がんが見つかったことを5月23日に公表されていますね。過去に二度、がんの手術を受けていらっしゃるそうですが、今回も復帰されることを願っています。手術前の26日には大相撲夏場所の千秋楽を観戦している様子を中継で拝見しましたが、元気そうなご様子に安堵した方も多かったのではないでしょうか。
また、この日は来日中のドナルド・トランプ大統領が観戦し、ほかにも平沢勝栄衆議院議員、河村建夫衆議院議員などの姿もお見かけしました。大相撲中継を見ながら知り合いの議員や著名人を探してしまうのは、実は“秘書あるある”のひとつなのです。
思えば山尾議員も丸山議員も東大卒ですが、エリートだからといって大目に見てきた党の責任も重いですよ。次回は、もっと明るい話題を提供したいと思います。
(文=神澤志万/国会議員秘書)