講談社の女性ファッション雑誌「ViVi」が自民党とコラボレーションしたキャンペーン広告を展開している。ツイッターとインスタグラムを利用したウェブ上の企画だが、大手出版社の有名誌と政権与党のコラボにインターネット上では批判の声が相次いでいる。



「ViVi」は公式サイトで6月10日に、「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?」と題したPRページを掲載。「ViVi girl」のモデル9人に“どんな社会にしていきたいか”を尋ねた内容が紹介され、それぞれの回答は「Be Happy ハッピーに生きていける社会にしたい!」「Look at the Bigger picture 広い視野を持って」などのようにテーマ化されている。

 PRページの最後にキャンペーン概要が説明されており、応募詳細の項目で「どんな世の中にしたいか、自分の気持ちを #自民党2019 #メッセージTシャツプレゼント の二つのハッシュタグをつけてTwitterもしくはInstagramに投稿してね」と説明。問い合わせ先は“「#自民党2019」プロジェクト事務局”となっている。

 なお、「#自民党2019」プロジェクトは新元号施行とともにスタートしており、自民党は「新時代にふさわしい、『新しい政治』の幕開けを宣言する企画」と説明している。公式サイトでは、画家・天野喜孝氏によるイラストが公開されているほか、「あなたが考える“新時代”とは?」のテーマでツイッター投稿を呼びかけている。

「ViVi」の読者層は10~20代女性。夏に控える参議院議員選挙を前に、自民党が弱いとされる若年層有権者の認知度を高める目的があるのは明らかだが、その手段として有名雑誌の人気モデルが広告に起用されたことで、批判の声が続出。

 ネット上では「めちゃくちゃショック……政治利用されたモデルさんたちがかわいそう」「いつの間に自民党の機関紙になったの? ネトウヨ雑誌なの?」「NHK、読売新聞だけでなく、講談社も安倍政権に取り込まれたのか」「Tシャツより年金がちゃんとほしいんだけど」「若者に政治に興味を持ってほしいのはわかるけれど、自民党に絞った企画は完全に読者を無視している」といった声が上がっている。

 なお、講談社はメディア各社の取材に対し、「若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したいと考えました。政治的な背景や意図はまったくございません」と回答しているが、これに対しても「さすがに苦しい言い訳」「政治的意図がないのに特定の政党の宣伝をするのはおかしい」「じゃあ、これから共産党や立憲民主党の広告展開もあるの?」という声が相次ぐなど、火に油を注ぐかたちとなっている。


 折しも、金融庁が発表した「老後の30年間で生活費が約2000万円不足し、資産形成の自助努力が必要」との報告書に批判が集中しているところだ。さらに、国民や野党からの反発が高まったことを受けて、麻生太郎財務大臣が「正式な報告書としては受け取らない」と受理しない姿勢を見せたことで、「選挙前だから臭いものに蓋か」「もうムチャクチャ」「国民をバカにしている」と、さらに非難が相次いでいる。

 また、このキャンペーンには公職選挙法違反の疑いも浮上しているという。プレゼントされるTシャツには自民党のロゴマークも印刷されているが、公選法では政治家が選挙区内でお金や物を贈ることが禁じられている。朝日新聞出版のニュース・情報サイト「AERA dot.」では、政治資金の問題に詳しい神戸学院大学法学部の上脇博之教授のコメントとして、「公職選挙法では、現金や物を渡したり、受け取ったりするだけではなく、事前に受け渡しを約束することも寄付行為として禁止されています。(中略)今回のプレゼント企画は同法に抵触している可能性があります」と指摘。

 また、自民党が178億円の政党交付金を得ており、その原資は国民の税金であることを踏まえて、同じく上脇教授の「今回のTシャツの制作費にも税金が事実上使われていることになります。(中略)税金を使ってプレゼント企画をすることは、たとえ違法ではなくても、政治的・道義的に問題があります」とのコメントを掲載している。

 読者離れを起こしかねない今回のキャンペーンは、予定通り6月21日まで続くという。
(文=編集部)

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