2000年に始まった中河伸俊氏の連載「ブルース・リリックス」は「歌詞を通してブルースの奥深い世界を知る」をテーマに、現在も「Food For Real Life」のタイトルで続く長寿連載です。その連載記事を元にした書籍『黒い蛇はどこへ 名曲の歌詞から入るブルースの世界』(トゥーヴァージンズ刊)が、2021年8月30日に発売されます。

連載原稿を元にしてはいるものの、大幅に加筆をし、また書き下ろし原稿も多く収録しており、本誌連載を楽しんでいた方も新鮮に読める内容になっています。中河氏は長年黒人音楽について雑誌等に寄稿されてきた方で、本誌執筆陣にもその文章のファンは多く、待望の著書となります。

ブルースの歌詞は一見シンプルなようで、ところどころにわかりにくい表現が登場します。それを理解するには、アフリカン・アメリカンの文化や社会、歴史を知ることが大いに助けとなります。本書では歌詞(原詞と対訳)を掲載し、わかりやすく解説するとともに、歌い手であるブルース・シンガーたちの生い立ちやキャリアにも触れ、ブルース入門書としても役立つ内容になっています。登場するシンガーはブルースの巨人と呼ばれるような人物がほとんどですが、なかには知る人ぞ知る存在も登場します。

本書は35曲を取り上げ、それらを歌詞内容ごとに6つのパートに分け紹介しています。ブルースは男女の関係がもたらすブルーな感情(憂鬱だとかふさいだ気持ちとか)を歌うことが多いですが、愛のよろこびも歌えば、ユーモアとウィットで楽しませ、あけすけな性生活まで披露します。そこには様々なストーリーや社会・文化背景があり、それらを読み解くのも、ブルースを聴く楽しみのひとつです。

もしあなたが「ブルースは何を歌っているのだろう」「ブルースってどんな音楽なのだろう」「ブルースを歌った人を知りたい」と思ったら、ぜひこの『黒い蛇はどこへ』を手に取ってみてください。きっと答えが見つかると思います。

【目次】はじめに.Part I  うちの台所へお入り第一章〈うちの台所へお入り〉ロバート・ジョンスン第二章〈ちょっといっしょに散歩しよう〉ロバート・ロックウッド・ジュニア第三章〈おれのあの娘〉リトル・ウォルター第四章〈チキン・ヘッズ〉ボビー・ラッシュ第五章〈小さな青い鳥〉ジョニー・テイラー.Part II おれは大都会のプレイボーイ第六章〈あの黒い蛇がうめいてる〉ブラインド・レモン・ジェファースン第七章〈チャボの雄鶏ブルース〉チャーリー・パットン第八章〈大都会のプレイボーイ〉エディ・テイラー第九章〈トランプ(放浪者)〉ローウェル・フルスン第一〇章〈ハウンド・ドッグ(猟犬)〉ビッグ・ママ・ソーントン/エルヴィス・プレスリー第一一章〈駆動輪のブルース〉ルーズヴェルト・サイクス.Part III 落ち目になったらだれも第一二章〈落ち目になったらだれも見向きもしない〉ベッシー・スミス第一三章〈つらい浮き世〉Tボーン・ウォーカー第一四章〈トラブルのブルース〉チャールズ・ブラウン第一五章〈悪い運のブルース〉マジック・サム第一六章〈振り返ってみたら〉オーティス・ラッシュ.Part IV ケイティ・メイのような女第一七章〈ひとりぼっちの家〉ライトニン・ホプキンズ第一八章〈おれも苦しいよ〉エルモア・ジェイムズ第一九章〈フードゥー使いのブルース〉ジュニア・ウェルズ第二〇章〈おれはあんたの魔法医師〉マディ・ウォーターズ第二一章〈かわいい一六歳〉B・B・キング第二二章〈どうかわたしに愛する人をください〉  パーシー・メイフィールド.Part V 土曜の夜と日曜の朝と第二三章〈マ・レイニーのブラック・ボトム〉マ・レイニー第二四章〈ブギしなよ、みんな〉ジョン・リー・フッカー第二五章〈なんてこん畜生だ〉ダーティー・レッド第二六章〈カルドニア〉ルイ・ジョーダン第二七章〈パパが最新のスタイルで踊ってる〉ジェイムズ・ブラウン第二八章〈荒れもようの月曜〉ボビー・ブランド第二九章〈尊き主よ、わたしの手をとって〉トーマス・A・ドーシー.Part VI  そのうちクーンが月に第三〇章〈初めてブルースに会ったとき〉バディ・ガイ第三一章〈灯りまぶしい大都会〉ジミー・リード第三二章〈キャディラックの組立ライン〉アルバート・キング第三三章〈デコレーション・デイ〉サニー・ボーイ・ウィリアムスンII第三四章〈おはよう、ちっちゃなスクールガール〉サニー・ボーイ・ウィリアムスンI第三五章 〈月のクロ助〉ハウリン・ウルフ.あとがき.[付録]黒人英語とライム [Appendix: Black English and Rhyming][付録2]掲載曲収録CDガイド..【著者プロフィール】中河伸俊(なかがわ・のぶとし)1951年東京都生まれ。
大阪府立大学および関西大学名誉教授。専門の社会学の分野での主著は『社会問題の社会学』。1980年代から『ザ・ブルース』、『ミュージック・マガジン』、『ブラック・ミュージック・リヴュー』、『ブルース&ソウル・レコーズ』などに米黒人音楽関連の記事を多数執筆。共訳書に『ゴスペル・サウンド』(A・ヘイルバット著、ブルース・インターアクションズ刊)がある。

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