>>>前編より

世界のキタノを産んだのは桑田佳祐だった

 バブルの頃に顕著だったのは、売れっ子文化人やミュージシャンにいきなり映画を任せてしまう動き。村上龍や鴻上尚史武田鉄矢などは複数本演出したが、どれも酷い作品と酷評された。


 ことに村上龍監督の『だいじょうぶマイフレンド』は、忘れがたい駄作として映画史に刻まれている。ピーター・フォンダ、研ナオコ、武田鉄矢、タモリらが出演し、サントラには坂本龍一、桑田佳祐、来生たかお、高中正義、上田正樹らが参加するという贅を尽くした作品だったが、制作会社がつぶれるくらいの大コケだった。
 日本映画史に残る奇跡を起こしたのが、桑田圭祐の『稲村ジェーン』。映画は桑田の知名度のおかげか、そこそこのヒットを記録。しかし、サーファーの主人公が伝説のサーフボードを抱えなぜか山に登ったり、ラストでドラゴンが出現したりと、なかなかエキセントリックな内容。中身の評判は決してよろしくなかった。

 ではなぜこの映画が奇跡なのか。それは、世界の北野を生むきっかけとなった作品だからだ。
 なんと、この映画を見た北野武が「映画じゃない」と酷評したところ、桑田との喧嘩に発展。北野が桑田に反論する形で制作されたのが『あの夏、いちばん静かな海』だと言われている。
 この映画で、北野武は監督として確固たる地位を獲得、その後の活躍はご存知の通りだ。桑田のトンデモ作品がなければ、世界の北野は存在しなかった?

借金を抱えても二作目に挑んだガッツ石松

 最後にスポーツ界から。

ガッツ石松の『カンバック』だが、ストーリーはともかくボクシング場面だけは秀逸だった。しかし興行的には大コケしてしまい、ガッツは大借金を抱えてしまう。それでも懲りずに2011年にまた作った映画が『罪と罰』だ。 「犯罪加害者への罰則の甘さを糾弾する」作品らしいが、さすがに肩書は総合監督で演出家が別にいたようだ。やはり、素人に監督はできないということか。
 こうしてみると、映画を撮るまでは、割りと簡単にだとりつける。
しかし、映画ファンの評価はシビアなため、次の作品を任されるまで至らないケースが多い。
 無事に2作目を作っているタレント監督は、評価されていると見て良いだろう。

(文・編集部)

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