ビジネスパーソンが抱える共通の悩みのひとつである、生産的な仕事と健康の両立。この課題にどう向き合うべきでしょうか。

前編では、サイエンスライターの鈴木祐さんと、健康経営を実践するクロスメディアグループ代表の小早川幸一郎による対談で、生産性の高さと健康の関係性、組織に健康意識を醸成する方法、そしてマインドフルネス瞑想の効果について語っていただきました。

前編【鈴木祐さんに聞く①】仕事のパフォーマンスが高い人たちは、どう「健康」と向き合っているのか

後編では、健康へ投資する価値、そして健康とパフォーマンスの関係について。二人の闊達な対談で掘り下げていきます。

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【鈴木祐さんに聞く②】健康投資のリターンは3倍。仕事で成果を出す人ほど「健康」を重視する理由

 

健康投資は「3倍」のリターンがある


小早川 前回から健康について話してきましたが、鈴木さんがおっしゃっていた「バンドワゴン効果」は、人を巻き込むのに大きな効果を発揮しそうですね。

鈴木 健康的に働く方が良いとわかっていても、なかなか実践に移すのは難しいですからね。やはり多くの人がやっている状況をつくることが、人は動きやすいかもしれません。

健康経営について、面白いデータがあります。健康プログラムの導入に成功した海外企業が試算したデータによると、健康投資1ドルに対して、社員のパフォーマンス向上などのリターンは3倍になって返ってくるとされているんです。

【鈴木祐さんに聞く②】健康投資のリターンは3倍。仕事で成果を出す人ほど「健康」を重視する理由

小早川 それは大きいですね。

鈴木 トレンドとして、いまは間違いなく世のなかは「健康的に働く」ほうへ向かっています。

昔はIQや学歴の高い人など“頭のいい”とされる人の収入が多いと言われていましたが、最近では「健康意識」の高い人がよく稼いでいるとされますよね。他の要素としては、「共感力」とか「コミュ力」です。そうした要素が高い人の方が、収入が多くなる傾向が出てきています。



小早川 健康意識が高いと収入も高いという傾向であれば、健康的な人が多い企業は業績も伸びていそうですね。良いコミュニケーションができたり、共感力があったりする人たちも、「健康意識が高い」という点で共通しているようにも思います。

鈴木 それは間違いないでしょうね。イライラしていれば、自分のことばかりで汲々としてしまいますから、人に共感する気も湧きません。会議の空気も悪くなり、心理的安全性も損なわれます。そうした人が多いと、個人だけでなくチームとしても機能しなくなっていきます。そういう状況は数多く見てきました。

健康であることは自分のことだけでなく、組織の心理的安全の担保という意味でも重要です。

小早川 すると、やはり会社で最も影響力があるトップは、なおさら健康に意識を向けなければなりませんね。

身体の健康は心の健康でもありますから、心が健康でなければ、さまざまなシーンで社内に悪い影響を及ぼしかねません。そうして生まれた空気の悪さは、顧客や取引先にも不快な印象として伝わっていくと思います。

効率化の落とし穴

鈴木 ビジネスでは「余裕」を生む手段として、無駄を省いて効率化したり、生産性を上げたりしますが、「健康」と「効率化」は必ずしも共存できるものではありません。

「効率化、効率化」と言って生産性ばかり求めていくと、心身の健康は保ちづらくなりますから。

むしろ効率を追求しすぎると、どうしても心理的な余裕が失われていくため、長期的な生産性は下がる傾向にあります。

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これは健康も同様です。「健康になるため」と言って、野菜しか食べないとか、必ず同じ時間に寝なければいけないといった「ルール」をガチガチに固めすぎると、ストレスが増加し、かえって老化につながる場合もあります。

ほどよく気を抜くほうが、健康には良いんです。たまには友人と酒を飲んでもいい、運動をサボってもいい。徹底も必要ですが、長期的に見ると余裕は必要なんですよね。

小早川 どうしても効率を求めてしまいますが、やはり人間らしい働き方のほうが、長期的に見れば仕事は進み、健康にも良い結果を生むんですね。この“人間らしい働き方”とは何かを考えてみると、つまりは健康的に働くということですね。

鈴木 その通りです。「健康」という言葉を持ち出して、“効率化工場”の道具にはなってほしくないですね。

さまざまな企業を見ていると、健康経営を標榜しながら、管理職が「健康」という言葉を使って無理に生産性を高めようとしがちなケースがあります。効率化によって人がより健康的に働けるようになればいいですが、健康を損なうのであれば健康経営とは言えません。

効率化が数字に表れるまで苦しみながら働くのではなく、従業員の健康を本当に促進する仕組みづくりを進めていくほうが、長期的に見れば業績が上がっていくと思います。

謙虚なリーダーシップ

小早川 私たちは二人とも団塊ジュニア世代ですが、いわゆる“スポコン”的な指導を受けていた最後の年代なんじゃないかと思います。

鈴木 そうかもしれませんね。当時は足腰を鍛えると言えばうさぎ跳びだし、部活で「水を飲むな」と言われることも当たり前でしたね。

小早川 そんな世代と比べると、いまの若い世代は軟弱だとか、気合が足りないと見られがちですよね。

でも、たとえば世代間でオリンピックのデータを比較してみると面白いんですよ。私たちの世代が活躍したアトランタやシドニーオリンピックでは、日本のメダル獲得数は20個未満でした。

一方でゆとり世代が活躍しているアテネ五輪以降では平均メダル獲得数で40個を超えているんです。こうして見ると、若い世代は勝負強いし、何より世界で勝ってるんですよね。

【鈴木祐さんに聞く②】健康投資のリターンは3倍。仕事で成果を出す人ほど「健康」を重視する理由

これは鈴木さんが言われていた「余裕」や「健康」の重要性の表れなんじゃないかと思うんです。

鈴木 スポーツに関しては詳しくありませんが、少なからず影響があるんじゃないかと思います。昔ながらのトップダウン方式で、上の言うことにすべて従わせるやり方ではなく、緩やかな関わりのほうが力を引き出すのかもしれません。

小早川 こうしたスポーツ界の状況を見ていると、ビジネス界も、スポーツからマネジメントを学ばなければならないと思うんです。

鈴木 最近はよく「謙虚なリーダーシップ」が必要だと言われています。自分の周囲を見ていても、トップダウンではなく、謙虚な指導者が増えているように思いますね。指導する側が絶対なのではなく、指導者も自分の間違いを認めるし、選手の実力を引き出すため対等に接する。

指導法の変化が選手の余裕を生み、パフォーマンスアップにも表れているのかもしれません。謙虚なリーダーシップの効果については、研究も進んでいて、従来のトップダウン方式よりも成果が出ることがわかってきているんです。

小早川 捉え方を変えると、不健康な指導が是とされていたときよりも、健康を追求するいまのリーダーシップのほうが成果を生んでいるとも言えるんじゃないかと思えます。

だって、「水飲むな」って不健康じゃないですか。

鈴木 あれはしんどかったなあ。いまの気候だったら倒れていたと思います。いったい何だったんですかね(笑)。

しかしおっしゃるように、リーダーの謙虚さと選手の健康は、関連しているかもしれません。



小早川 ビジネスでも常に結果が求められますが、スポーツ界を見ていると、なおさら健康を追求する重要性がわかってきます。

私も、“健康経営の金メダル”を目指して、どこよりも健康に力を入れていきたいと思います。今後もいろいろとご指導お願いします。

鈴木 自分も“謙虚なコーチング”で関わっていきますね。

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〈前後編終了〉

・鈴木祐 公式X :https://x.com/yuchrszk

・鈴木祐 公式ブログ パレオな商品開発室:https://nufu.online/

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