MAUという用語を聞いたことがあるが、その詳しい中身や企業の経営との関係について詳しく知っている、という方は意外に少ないかもしれません。今回は、MAUが重要指標とされる理由、MAUを使って売上を改善する方法などを解説します。
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1.MAUとは
MAUとはMonthly Active Usersの略で、月間アクティブユーザー数のことです。1ヶ月間の間に、サービスやアプリに実際にアクセスをした人の数のことです。
サービスの利用動向を知る上できわめて重要な数値です。この他、サービスの種類によっては、DAU(Daily、日間)、WAU(Weekly、週間)、YAU(Yearly、年間)などが使われることもあります。

2.MAUが重要指標とされる2つの理由
MAUが重要指標とされるのは、次の2つの理由によるものです。
(1)会員数、ダウンロード数よりも利用動向が把握しやすい
サービスの会員数、ダウンロード数も指標として使われることがありますが、いずれも会員になっても使わない、ダウンロードしたのにアクセスをしないという人が一定数いるため、利用動向を正確に表している数値にはなりません。
また、初回無料クーポン、会員登録でポイント還元などキャンペーンを行うと、登録だけして特典を使い切ったら使わなくなるという人もいます。
一方、MAUは実際に利用した人の数であるため、現実の利用動向を正確に知ることができます。店舗で言えば、会員数よりも来店客数を重視するのと同じです。
(2)MAUベースの指標を使うことで、必要な施策が打ちやすくなる
このようなウェブマーケティングで使われる重要指標は、ただ把握をしてグラフをつくるだけでなく、他の指標と組み合わせて分析することで、とるべき施策を導き出すことができます。

3.売上を改善するための公式
例えば、ECで、売上を改善するための公式は、次のようなものです。
販売額=MAU×商品ページ閲覧率×コンバージョン率×客単価
この公式は複雑に見えるかもしれませんが、ごく当たり前のことを言っているにすぎません。
「何人のお客がきて」「そのうちの何人が商品のページを見て」「その内の何人かが商品を買い」「平均単価がいくらか」を計算すれば、売上になるのは当たり前のことです。
「販売額=購入者数×客単価」という公式を細かく細分化しただけなのです。
しかし、細分化することに意味があります。なぜなら、ECの最終的な目標である販売額を増やすには、この公式の4つの各項目のそれぞれの数値をあげればいいからです。
具体的には、
(1)MAU:キャンペーンやインセンティブをつけ、アクセスする人の数を増やす
(2)商品ページ閲覧率:商品サムネイルを工夫したり、リコメンドを行ったりして、商品ページを閲覧する人の数を増やす
(3)コンバージョン:商品を購入してもらう優待施策などを実施する
(4)客単価:付属品、関連商品をまとめ買いすると割引されるセット価格を提供する
などです。
「売上をあげる」という漠然とした目標を設定してしまうと、何をしたらいいかもよくわかりませんし、さまざまな施策をやみくもに行っても、どの施策に効果があったのかも測定しづらくなります。
そこで、販売額を項目に分解して、項目ごとに指標を改善する施策を考案し、実行します。項目ごとの指標を測定することで、個別の施策の効果も測定できます。
このような公式は、サービス内容に合わせて適切なものをつくっておきます。例えば、ECの場合、コンバージョンをさらに分解して、「カートイン率×カート内コンバージョン」にすることもよく行われます。
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4.DAU、WAU、MAUのいずれを使うべきか
アクティブユーザー数を日間、週間、月間のいずれでモニターすべきかは、プロダクトの性質によります(YAU=年間は普通モニター対象にならず、年次報告書などに記載するための数値です)。
例えば、毎日使うSNSサービスであればDAUを見るのが利用動向を把握しやすいでしょうし、保険や旅行のサービスであれば、月に数回の利用が多いためMAUでモニターするのが適切です。
そこで、よく行われるのが、2つの期間のアクティブユーザー数の比を求めてみることです。
すなわち、
- DAU/WAU
- WAU/MAU
- MAU/QAU
です。
DAU/WAUを計算するときは、週7日間のDAUの平均値をWAUで割ります。
70%を超えていると、週に5日以上使われているデイリーなサービスということになります。なぜそうなるのかピンとこない方は、週に5日は全員がアクセスをし、週に2日は誰もアクセスしない場合のDAU/WAUを計算してみてください。
この値が高い場合は、DAUで利用動向をモニターすべきです。
同様にWAU/MAUが75%を超えると、月のうち3週間は使われているウィークリーなサービスとなり、MAU/QAU(QAUは四半期アクティブユーザー数)が66%を超えると3ヶ月のうち2ヶ月は使われているマンスリーなサービスとなります。
それぞれの値を見て、最も比が大きくなる指標が、利用動向を把握するのに適切だということになります。
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5.商品の価格設定をするための公式
商品の価格は高ければ高いほど、原価、仕入れ値が同じであれば、利益は大きくなります。
しかし、当たり前ですが、価格を高くすれば販売数は減少するので、売上が増えるかどうかわかりません。
この時に指標として使えるのが客単価の推移です。客単価が上昇傾向にあるということは、消費者が「高いものでも買う」「たくさん買う」と考えている時ですから、価格を値上げしてもそれによるマイナスの影響は限定的です。
一方で、客単価が下降傾向にある時は「安いものを買いたい」「買うのを控える」と考えている時ですから、価格を下げてテコ入れをする必要があります。
ただし、客単価は「総販売額/MAU」なので、あまり適切な指標ではありません。なぜなら、MAUはサービスにアクセスをした人の数なので、買い物をするつもりがなくアクセスする人の数も含まれているからです。
そこで、価格の変更をするときはビジター数=MAU×商品ページ閲覧率を使います。商品ページを見た人の数なので、買い物をしようと思っている人の数になり、そのような人がいくら使ったのかというビジター平均単価を見ます。
このビジター平均単価は、ビジター価値(Visitor Value)と呼ばれます。
ビジター価値は「コンバージョン×客単価」で計算ができます。このビジター価値の推移を見て、価格を変動させることによって、売上を安定させることができます。
6.オリジナルの指標を持つことがサービスの強みになる
このような計算式は、大まかな公式のようなものが存在し、ウェブマーケティングやウェブサービス分析の教科書を開けば、無数に見つけることができます。また、ネットではグーグルアナリティクスなど無数の分析ツールが利用できます。
しかし、重要なのは、自社のサービスに最適な指標を使うことです。指標に基づいて、その指標を改善するための施策を考え、実行するというのが目的なのですから、不適切な指標、多すぎる指標を使うのは、効果的な施策に結びつきません。
特に分析ツールを導入すると、大量の指標が得られるため、すべてをモニターしようとし、無駄な施策ばかりを繰り返すことにもなりかねません。
優れたサービスは、このような教科書の公式だけでなく、独自の数値指標を設定して活用しています。それがそのサービスのノウハウとなり、強みとなるのです。
7.まとめ
MAUとは月間アクティブユーザー数のことで、サービスやアプリの利用動向をモニターするための基礎となる指標です。
このMAUをもとに、さまざまな分析指標を活用することで、行うべき施策が導き出されます。自社のサービスに適切な指標を使うことが何よりも重要になります。