ダイナミックかつスポーティーなスタイルが人気の「レクサスCT200h」が、マイナーチェンジを遂げて高い評価を得ている。チーフエンジニア(開発責任者)は、加古慈さん。
前例のない「女性初」「会社初」を次々と経験した加古さんのしなやかな仕事術とは。

加古慈(かこ・ちか)/「レクサス CT200h」チーフエンジニア
1989年にトヨタ自動車株式会社に入社。ベルギーの研究開発部門に出向し、自動車における「感性工学」のあり方を学ぶ。レクサス初の女性チーフエンジニアとして、今年1月にマイナーチェンジした「CT200h」の開発に携わる。

機能や性能だけでなく、人の「感性」に寄り添うものづくりを

今年1月の発売開始以降、「たった1か月で目標の6倍の受注数を獲得」と話題を集めたのは、レクサスのコンパクトハイブリッドカー「CT200h」。マイナーチェンジを担当したのは、レクサス初の女性チーフエンジニア、加古慈(かこ ちか)さんだ。

「シートカバーやオーナメントパネルなどのインテリアは、82のパターンから選べます。ボディーは11色。新色の赤がとてもきれいなんです。乗り心地とオーディオの音にもこだわりました。素敵でしょう?」

開発にあたって加古さんが大切にしたのは「感性工学」に基づいたものづくり。感性工学とは、機能や性能だけでなく、快適さや安心感、楽しさ、優しさといった、人の「感性」に寄り添うという考え方。

「乗る人の好奇心を満たし、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を高めてもらえるような車をつくりたかった」と加古さんは話す。

ヨーロッパで出合った「感性工学」という名の思いやり

ベルギー駐在時代、レクサスCTと

加古さんは大学を卒業後、「ものづくりに携わりたい」との思いでトヨタ自動車株式会社に入社。車の材料を扱う部署にいたが、2001年にベルギーの研究開発部に出向する機会を得る。そしてそこで出合ったのが「感性工学」だった。

「ヨーロッパの人たちは、車のインテリアへの感性が繊細。素材と素材のマッチング、コントラスト、質感、色、ツヤなどについて、事細かに意見し合うんです。とても勉強になりました」

「感性工学」と言葉にすると難しいが、要は「相手の心地よさや快適さを大切にする」という"思いやり"の心。「デザインでなくても、人との接し方や仕事のやり方においても、大前提となる考え方ですよね」という加古さんの言葉には説得力がある。

しなやかさ、謙虚さ、そして扉を開ける大胆さが必要

「女性初の」「女性ならではの感性で」と枕詞のように冠されることについてうかがうと、加古さんは「ときどきプレッシャーになるけれど」と笑顔を見せながら、「ありがたいですね」としなやかに受け入れる。

女性初であると同時に「会社初」を多く経験してこられたのは、「たくさんの方のおかげです」という加古さんの謙虚さとしなやかさがあってのことだろう。そして、ここに至るには大胆さも不可欠だった。

前例のなかった女性社員のベルギーの駐在も、ベルギーで車のインテリアに携わるようになったのも、帰国後に車をつくる部署へ配属されたのも、すべて加古さんが思い続け、「行きたい」「やりたい」と、きちんと言葉にしたことが扉を開けるきっかけになった。

「怖いもの知らずなんでしょうね。でも、言わないで後悔するならダメでも言ってみたほうがいい。よく『思い続けて言葉にすれば叶う』なんて言いますが、仕事においては、それは事実かなぁと思います」

「思い続けて言葉にすれば叶う」は事実。次に叶えたいのは......

「ものづくりに携わりたい」「海外で働きたい」「車の内装を手掛けたい」「このデザイナーと仕事がしたい」などと思い続けて言葉にし、実現してきた加古さん。次に叶えたい思いとは――

「今回手掛けたCT200hはマイナーチェンジでしたが、いつかコンセプトから内装のすべてに至るまで、一台まるごと開発に携わり、その車が世に出るようなことがあれば素敵だなぁと思います」

まだまだ少ない女性エンジニアの活躍も、たっての願い。加古さん自身、女性エンジニアの先輩に励まされてきたという。今でも「がんばってるね」「新しい車、いいね」とメールをくれるのだとか。

「でも、とりあえず今は『CT200h』のことで頭がいっぱい。仕事が落ち着いて休みが取れたら、着物でお茶のお稽古に行きたい。それが、まず1番に実現させたいことかな」

(文/大森りえ)

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