今やセレブのおしゃれの必須アイテムともいえるのが「パナマ・ハット(パナマ帽)」。

その名前から、パナマで作られる帽子と思われがちですが、本当のパナマ・ハットの産地は、赤道直下の国、南米エクアドルです。

他国でも生産される様になった今でも、マイケル・ジャクソンのトレードマークになった帽子をはじめとする、本物の世界最高級品パナマ・ハットはすべてエクアドル産です。

今回は、世界一高価なパナマ・ハットを編み出す魔術師パナマハットの魅力を紹介したいと思います。

セレブがこぞって身につけるパナマ・ハット

©Louis Vuitton 

なぜパナマ・ハットと呼ばれる様になったのかという点については、諸説ありますが、パナマ運河建設時に、多くの労働者がこのエクアドル産のこの帽子を使っていた事が、パナマ・ハットと名付けられたきっかけと言われています。

また、19世紀中頃、エクアドルの名前は広く知られておらず、それらの帽子がエクアドル・マナビ県モンティクリステ(Montecristi)産であるのにも関わらず、"パナマ産(Made in Panama) "として商業的に販売されたのです。

その後、1834年に時のセオドア・ルーズヴェルト大統領が、パナマ運河を訪問した際にかぶっていた帽子も、こちらの帽子。それがきっかけとなり、パナマ・ハットが一般に広まったとも言われています。

そもそも、パナマ・ハットは、エクアドルでしか育たないパハ・トキージャという、強くしなやかで、繊細な繊維をもつ椰子の一種の葉から作られており、エクアドルでしか育たない植物です。そして、エクアドルでも、気温・湿度ともにパハ・トキージャを加工するのに、最適なモンティクリスティで代々編まれてきたのです。

ファッション性の高さと、優れた加工技術、実用性を兼ね揃えたモンティクリスティのパナマ・ハットは、世界に愛好家がおり、高級パナマ帽はセレブ御用達として人気も高まっていきました。

ひとつ300万円のパナマ・ハットが生まれる

©Brent Black

1988年、この地にやってきたアメリカの帽子会社「Brent Black(ブレント・ブラック)」のオーナーは、モンティクリスティの小さな村「Pile(ピレ)」で、小さな家のなかでパナマ帽を編んでいる、シモン・エスピナル(Simón Espinal)の魔法のような技術に出会います。

その後、ブレント・ブラック社は、帽子史上過去最高の、ひとつ100~300万円の制作費を支払い、年に3~4つしか作ることのできないシモン・エスピナルの帽子を、海外のパナマ・ハット愛好家のためにオーダーするようになります。

非常に繊細なパハ・トキージャを使い、5か月かけてそのベースをシモン・エスピナルが作成した後、更に数週間かけて5人の職人より仕上げられるこの帽子は、その名も「The Hat(ザ・ハット)」。

技術の製作の行程も、下記のように細かく、実に丁寧で、さすがと思わされます。

シモン・エスピナル氏のパナマ帽は、手で注意深く裂かれたパハ・トキージャの繊維を、受け継がれた技術で編み込み、洗浄。その後柔軟性やしなやかさを出すための叩き込みが、帽子にダメージを与えることなく、均等に注意深く行われ、乾燥させます。ここまでが半分の工程。乾燥が終わると、昔ながらの鋳鉄金属をストーブの上で加熱し、アイロンがかけられます。そうすることで、目に見えない飛び出た繊維を取り除くことができるそう。次につばの先がほつれない技術で処理され、さらに蒸気を加えてアイロンがけをします。ここで、帽子の整形が行われます。

The Globe Wears Hats」より意訳引用

©Brent Black

2世代前はモンティクリスティに2,000人いたと言われる織士、残念ながら今は20人とのこと。

シモン・エスピナル氏の技術を始め、若者に受け継ぐ教育は行われてはいるものの彼らに匹敵する技術までは到着できないのが現状です。

特にシモン・エスピナル氏の作る帽子は、世界一繊細な編み方でしなやか、それでいて丈夫という、誰にも真似する事のできない技で編まれた帽子として、パナマ・ハットとしては破格の値が付けられる様になりました。

なかなか彼の作品にはお目にかかるチャンスはありませんが、彼の帽子を手にした人は「まるでシルクの様で、太陽にかざしてもその編み目から光が漏れる事がないほど、密に編み込まれて、帽子をかぶっている事を忘れる程の軽さ」と言います。

しかも、旅行鞄に丸めて詰め込んでも、丸めてポケットに入れて持ち運んでも、かぶる時には元の帽子の形が崩れることがないというから驚きです。

シモン・エスピナル氏は言います「ブレント・ブラックと20年間続けてきた僕の仕事のおかげで、僕の人生は変わることができた。生まれ育った村に、家族のために家を買う事ができた。この状況が続けられるように、毎日神に祈りながら、帽子を編むんだ」

一流を楽しむということは、その価値を理解し、対価を払い、そのよりよい芸術的技術を応援していける環境を作っていくことなのかもしれません。

The Globe Wears HatsBrent Black

(市川芽久美)

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