――そんなプレス発表会を仕切っていたのが、ドローンメーカーのDJI JAPAN 株式会社で働く、アソシエイト・マーケティング・ディレクター柿野朋子さんだ。
もともとは、生まれ育った京都でホテルマンとして働いていたという柿野さん。家族でよく訪れた旅行先で宿泊したホテルに憧れ、思いが叶った結果だった。
ところが入社して2年、長時間の勤務に壁を感じはじめる。実家から通う姿を見て、両親も心配していたという。「こんなに毎日忙しいままで時間が過ぎてしまうのか」という疑問から転職を考える。
高校時代に経験したアメリカ留学や、教員免許の保持、さらには縁が重なり、中学校の英語教師になった。
「部活の顧問を2つ兼任していて、これはこれでハードワーク。補導された生徒を警察に引き取りに行ったこともあります。
いろいろ思い出はありますよ。『卒業式に着ていく』と校則違反の制服を手にする生徒を、卒業式に出してあげたくて『もう、着てきていいよ』と言ったことも。そうしたら、当日着てこなかった。
5年の教師生活を経て、結婚のために東京へ引っ越すことに。2年ほど専業主婦をしていたが、元来の性格なのか、外へ出て仕事がしたくなったという。マーケティングの世界をもっと見てみたい、もっと勉強したい
得意な英語を活かして、家から近い外資系の会社へ派遣社員として入る。業務はWebマーケティングのアシスタントだった。
スタートはアシスタントだったが、徐々に他の仕事も任されるようになった。Webページなどの制作は外部に任せていたが、どのように作られるのか興味が出てくる。
「勉強がしたくて、Web制作の夜間学校へ、週2回通っていました。そのおかげで、その後は自分でコーディングを修正したりできるように。その後、もっとマーケティングに詳しくなりたいと思い、別の会社へ転職しました」(柿野さん)
マーケティングに強い外資系IT企業へ転職し、中小企業をクライアントに。難しくもあり、楽しくもある仕事は充実していたが、より大きなビジネスへチャレンジしたくなる。
「経験したことのない領域に魅力を感じ、大企業向けのマーケティングができる企業へ転職しました。やりがいはありましたが、組織や仕事のやり方に少しずつ疑問や不満が溜まり、徐々に転職を考えるように。
悶々としはじめたのは、いまから4年ほど前。3年間悩み続けたが「もう、動こう」と吹っ切れ、昨年の夏に転職活動をスタートする。偏見を持っていたドローンの魅力を知る
LinkedIn経由でエージェントからいくつかオファーがあったが、そのなかのひとつがドローンの会社だという。
「ドローンにあまりよいイメージを持っておらず、聞いただけで断っていたんです。ところが、エージェントの方が『柿野さんに合う会社だと思うから』と何度もおすすめしてくださる。4回目にお話をいただいて初めて、会社のホームページを見ました。
すると、ドローンで撮影したという動画が掲載されていて、いままでの偏見が吹き飛びました。私と同じように偏見のある方に広めていくことに、大きな可能性を感じましたね」(柿野さん)
面接はトントン拍子に進み、2015年の秋に入社。現在は20人ほどの部下を抱え、アグレッシブなメンバーの「お母さん役」なのだとか。
「親会社が中国なので、日本人以外に中国人も多い。若手も多い。コミュニケーションが非常に大切なので、毎日少しでも全員と話すようにしています。
クリエイティビティを創出する会社なので、あれこれ指示するよりも『やりたいようにやってください』という方針。アイデアをどんどん持ってきてもらえるよう『アイデアのデータベースをつくるといいよ』と言っています」(柿野さん)
若いメンバーを率いるのは苦労もあるが、中学校教師をしていた経験も活きている。
先日、新商品のイベントで発表したのは、折りたたんでバッグに入れられるドローン「MAVIC PRO」。これまでのイメージを払拭できるよう、女性モデルも起用した。
まだ自分で使うことを想像できない人たちに、自社の製品を広めていく。柿野さんには、ドローンがさまざまな用途使われる未来が見えているに違いない。
柿野朋子(かきの ともこ)DJI JAPAN 株式会社 アソシエイト・マーケティング・ディレクター
13年ほど外資系IT企業にて、マーケティング・コミュニケーションやパートナービジネス企画に携わる。ブランドが顧客との関係性を構築し、持続させていくための施策立案、実施に従事した。2015年、DJI JAPANに入社し、マーケティング全般を統括。ドローンが日本のために役立つと強く信じ、製品の優位性や特長を伝えるだけでなく、DJI製品を通じて"わくわく"体験と感動を日本の消費者やパートナーに届けている。
[DJI]
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