とは言っても、まだまだこれらの分野は男性社会。
一方で、看護師や保育士など、これまで一般的に"女性が従事する仕事"とされてきた職業に就くことには依然として消極的な男性が圧倒的に多いよう。
米ザ・ニューヨーク・タイムズ紙の記事では、多くの白人男性が、たとえ職に困っている状況であっても、頑としてこのような職業に就きたがらない現状を紹介しています。
米労働統計局が、2014年から2024年にかけて最も急激に減少すると予測している2つの職業がある。ひとつめは、機関車火夫で、70%減。ふたつめは、自動車電気装置整備士・修理士で50%減。それぞれ、96%と98%を男性が占めている。一方、最も急速に成長している職業の多くはヘルスケア分野だが、その約90%は女性。最近の研究によると、もし男性がこれらのいわゆる"ピンクカラー"の職業に就いた場合、"ブルーカラー"の仕事よりも雇用が安定し、賃金も増加するという。
「The New York Times」より翻訳引用
同記事では、白人男性がもし"ピンクカラー"の職業に就いた場合、"ガラスの天井"に出世を阻まれがちな女性とは違い、白人男性というだけで"ガラスのエスカレーター"に乗せられて高い収入と好条件を得られる可能性が高いと説明しています。
しかしながら、それでも「"女の仕事"は恥ずかしいからやりたくない!」という男性が多い。
そして、このような傾向は日本にも見られます。
厚生労働省の発表した「平成24年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、平成24年時点における男性看護師の割合は6.2%。保健師は1.5%、准看護師では6.5%。年々わずかに増加してはいますが、依然としてかなり低い水準です。
筆者が医療従事者の知人に聞いた話によると、看護師は力仕事が多く、また暴れたり大声をあげたりする男性患者もいるため、男性看護師の存在は非常に頼りになるということでした。
でも、上記のような現象を「"男の沽券"にこだわるなんてくだらないわ」と一笑に付してしまってよいのでしょうか?
この背景には、あまり公に語られることのない深刻な"男性差別"が潜んでいると指摘されています。
この問題の研究者らによると、"ピンクカラー"の職業に対して男性が抱いている抵抗感は、多くの場合"男らしさ"の文化と結びついているという。つまり、女性とは共感性が高く面倒見が良い生き物であり、一方男性は力強くタフで、家族を養う能力がなければならない、と。
「The New York Times」より翻訳引用
そして、男性の肩に重くのしかかってくる"男らしさ"の重圧は、じつは女性に対する差別と表裏一体ではないでしょうか。
さまざまな分野に活躍の場を広げつつある女性たちを見つめながら、"男の分野"から踏み出せないまま俯いて沈黙している男性たちも多く存在していることも忘れてはなりません。
"女ならではの辛さ"があるのと同様に、"男ならではの辛さ"があるのは事実。
「男と女、どちらの方がより辛いか」でバトルするよりも、お互いの辛さを認めて歩み寄ることも大切。
女性の社会進出を推し進めると同時に、あまり語られることのない男性差別についても考えていかないと、女性自身の首を絞めることになるのではないでしょうか。
[The New York Times, 平成24年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省]