2つ以上の言語を話すことが、脳の発達にどういう影響を与えるかは、しばらく前から研究者たちの興味を引いてきました。
たとえば、バーミンガム大学が2016年9月発表した研究によれば、
バイリンガリズムは、注意力を強化し、ひとつの課題に集中する能力を高める。
「Les Echos」より翻訳引用
と考えられるそうです。
そう聞くと、なんとなく、2つ以上の言語を操ることで、脳が鍛えられるのだろうかと想像してしまいますが、じつはそうではないようです。
モントリオール大学Ana Inés Ansaldo(アナ・イネス・アンサルド)教授率いるグループが2016年10月発表した研究によれば、むしろ、バイリンガルな人は、必要なことだけに的を絞り、脳を最小限にしか使っていないのだそうです。
バイリンガル脳は省エネ脳同研究実験では、モノリンガル被験者とバイリンガル被験者に、空間情報を無視し、ビジュアル情報に集中する作業をさせ、脳の使い方を観察しました。
その結果、モノリンガル脳が、老化しやすい前頭葉全体を駆使するのに対し、バイリンガル脳は、脳の別な場所にある視覚処理専門領域のみを使うということが分かりました。
アンサルド教授は、
長年、2言語間を行き交いつなげる作業をしてきたことにより、バイリンガル脳は、必要情報を的確に読み取り、二次的情報をブロックすることに抜きんでるようになった。
「Slate.fr」より翻訳引用
と考えます。
つまり、バイリンガル脳は、多くの情報から、もっとも関連性の高いものだけを拾いあげ、脳内の必要な専門領域だけを使うので、より効果的で経済的なのです。言いかえれば、脳の効果的な省エネモード使用に長けているといえます。
また、老化がもっとも現れやすい場所として知られる前頭葉を酷使せずにすむバイリンガル脳は、老けにくいとも言えます。実際、同紙も、
バイリンガルは、脳の老化が遅く、比較的認知症にかかりにくいようだ。それは、(バイリンガル脳が経済的に働くという)この研究結果から説明できるかもしれない。
「Slate.fr」より翻訳引用
と考えています。
ある意味、脳のアンチエイジは、見た目のアンチエイジより切実な問題です。
先々、脳の老化を遅らせる効果もあると聞けば、英会話に通うモティベーションも、またひとつあがりそうです。
[Les Echos,Slate.fr]