フルーツたっぷりのパイやタルト? それとも甘いチョコレートケーキ? もしフルーツを使ったスイーツなら、あなたはなにを選びますか? ストロベリーケーキ? アップルパイ? それともブルーベリーパイ?
たぶんほとんどの方はどれも好き、と答えるのではないでしょうか。選ぶならこれだけど、でも別にこっちでもいい。
では、それがヒトだったら?
選ばれなかった女、エリザベスグラミー賞受賞歌手ノラ・ジョーンズ演じるこの映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』のヒロイン、エリザベスは、元彼の心変わりをきっかけに、彼の家の向かいにあるカフェに出入りするようになります。
毎晩、売れ残りのブルーベリーパイを食べながら、オーナーのジェレミーと話すことで癒されていくエリザベス。徐々に惹かれあう2人。
けれども、エリザベスはもう一歩を踏み出すことができません。呪縛のように彼女をすくませる呪文があったから。
「どうして、わたしじゃだめだったの?」
ジェレミーの店でいつもなぜか売れ残ってしまうブルーベリーパイを食べながら、エリザベスはまるで自分のようだとつぶやきます。けれども、ジェレミーはこう言うのです。
「ただ選ばれなかっただけだ」
売れ残ったブルーベリーパイは、他のパイより美味しくないのでしょうか。
味わいは異なっているかもしれないし、万人受けする味ではないのかもしれない。けれども、それが美味しくないこととイコールということにはなりません。
自分に問題や原因はないかもしれない事実、画面に大写しになるブルーベリーパイは、付け合せのアイスクリームがとろりとろけるビジュアルも相まって、涎が出そうなくらい美味しそう。
美味しくないから選ばれない。彼女より劣るから、選ばれない。美味しくても、選ばれないことはある。
チョコレートケーキに負けたからといって、それは美味しくない、が理由ではないのです。
まじめで努力家の女性ほど、なにかが起こったとき、自分に原因を探しがちです。もちろん、そういう部分もあるのかもしれませんし、理由がある方が納得しやすいのは事実です。
けれども、それはもしかしたら「ただ選ばれなかっただけ」で、あなたに原因や問題があるわけでも、劣るわけでもなかった可能性はないのでしょうか。
彼女が旅で見つけたもの自分を癒すためにエリザベスは旅に出て、さまざまな人びとと出会います。
それぞれ愛情にあふれながらも、すれ違ったり人生につまずいてしまう、ただただ普通の人たち。(レイチェル・ワイズの美しさは必見!)
それらの出来事をジェレミーへの手紙に綴りながら、彼女は理解していくのです。すべてのことに理由や原因があるわけではなく、ただそうなのだと思うしかないこともあるのだと。
旅から戻ったエリザベスは、ジェレミーの待つ店へと道を渡り、歩きはじめます。
自分に原因を探すことをやめたとき、答えを探すことをやめたとき、まわりを見渡せばきっとまた違う道を見つけられる。彼女だけでなくわたしたちにも、そんなことは多いのではないでしょうか。
マイ・ブルーベリー・ナイツ [DVD]
920円
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MY BLUEBERRY NIGHTS/マイ・ブルーベリー・ナイツ(2008年日本公開)製作国:香港、中国、フランス
配給:ワインスタイン・カンパニー、アスミック・エース
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン
第60回カンヌ国際映画祭のオープニング作品として上映されました。
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