それでも、わたしらしいリーダーとして基本軸を持っておけば、どんなフィールドでも戦っていけるのかもしれません。
そのためにも、部下がついてきてくれる自分づくりに改めて目をむけていきたいものです。自分との約束、変化を恐れずに受け入れる
今日いいと思っていたことも、明日になったら、もっと違う方法が生まれたりします。リーダーになるとこの変化と上手くつきあっていかないといけません。変化があるたびにおろおろしたり、迷って決められない人が上司だと、その人を頼れますか? 頑固にも昔のやり方に固執し、一切の変化を受け入れられない人があなたの上司でも、その人はついていけますか? (中略)
だから、リーダーは変化に対して強くないといけないのです。生き残るか残らないかもすべてはリーダーの決断と行動にかかっているのです。93ページより引用
前職では、売上などの動向にあわせた早い対応が求められる部署にいました。しかし、新米管理職の頃は、ロジックとして意味が理解できない変化に対して「なんだかな」という思いが払拭できない葛藤があったものです。たしかに最終決定というものは上から降りてくる一面もありますが、ただの伝言ゲームでは部下が悲劇というもの。変化する意味を自ら見出して受け入れる。経営判断に対して「こういう指示(変化)が出たということはこういう意味がある」と、翻訳して置き換える。
中間管理職は自分で采配・決定できることと、上からの指示を伝達すること、2つの性質の指示を部下に理解させる役割があるから。
部下へのトレーニングで、絶対に取り入れない方法がふたつあります。ひとつは、「仕事は先輩や上司の仕事を盗んで覚えろ」というやり方です。「OJT」とも言います。身体で感覚的に覚えるのが上手な人はいいのですが、そうでない人には時間がかかる方法だからです。けれど、後者が伸びない人かというと、人柄がよかったり努力家だったりと、いいところがたくさんあるのです。だからこそ、彼らが学びやすい方法でトレーニングしてあげるべきです。(中略)
そこで私は、仕事の段取りのフローをしっかり書いて、さらに自分の話している言葉をすべて書き出して、オリジナルのトーク集を作ってみました。本当に手間のかかる作業で、今で言うと、本一冊分くらいは書き起こしていたと思います。185・187ページより引用
わたしたちが新人だった頃、メモを片手に五感をフル稼働して先輩の動きを習得しようと必死だったものです。時を経て後輩が増えてきた頃、先輩の様子を見ながら仕事を覚えるタイプの後輩が激減していることに薄々気がついていました。そして、ある年の新入社員が私に聞いてきたのです。
「あの、さきほどお話ししていた内容のレジェメをください」。メモをとった様子がまったくなかった彼が、くったくなくそう言いました。そうか......そういう時代なんだと驚愕したのが10年前の話。この季節になると、昨日のことのように思い出します。
生きてきた背景が、時には親子や孫ほどに違う者同士が一堂に集う会社組織。実績をあげて人を育てることが役割である中間管理職は、教育面の変化にもしなやかに対応。仕事の段取りやフローを、根気強く部下に伝達していく必要がありそうです。
かつてのわたしの部下は、自分よりも年上や同年代が多かったため、一から若手を育てあげた経験はそんなに多くはありませんでした。しかし、いまだったら、もう少し上手にできたこともあったのかもしれないと、さまざまに思い返す季節でもあります。
環境をつくる約束、個人クリニックで部下の治療をする私は営業のマネージャーだったときにほかのマネージャーに、「和田はちょっと『過保護』だよ」と言われたことがあります。確かに部下一人一人に対して、個人的なクリニック(一対一でのミーティング、トレーニング)をほかのマネージャーと比べたら、多めにやっていたので、要領も悪く、構いすぎのように見えたかもしれません。(中略)
人ってある日、ドスンと自分の落ち込みに気が付くのですが、それまでも仕事でキャンセルがあったとか、ミスで怒られたとか、お客様に断られたとか、失恋したとか、そうなると身体の具合もなんとなく悪いとかで、山のように小さなマイナスが積もっていくのです。(中略)
だからこそ、少しでも下降したときに、早期発見、早期治療、それを発見するのがリーダーの仕事なのです。255~256・261~262ページより引用
部下との個人面談の大切さは、身に染みてわかります。わたし自身、特に販売の現場にいた頃は5事業所にいた約30人のスタッフと、毎日入れ替わり平均3人くらいの話を聞いていました。業務と直接には関係の無い家庭の話などを聞くこともあったものです。不思議にも、面談の時間を十分にとれていないスタッフが多い事業所は、売上が下がっていったことを覚えています。
仕事とプライベートは、微妙なところでつながっていて。だからこそ、自覚していないストレスを上司と部下で共有、業務的戦略を共に考えだしていく時間にもなったり......。
ただし、一対一の時間をとっていくことには、管理職である上司の身がもたないという側面もあります。さらに上に、聞いてくれる人がいれば一番よいのですが、管理職自身が聞く一方で話す場所が無いとなれば、自らが破たんしてしまう可能性も大きいように感じます。
特に、女性管理職の場合、先を走るメンターが少ないことから、孤独との折り合いも必要。部下の下降に対して早期発見してあげることと同時に、自らの早期治療を先延ばしにしないようにしたいものです。自分が倒れてしまったら、元も子もないのですから、健やかな心身で自分らしいリーダー像にとアップデートしたいものです。
著者:和田裕美
発行:幻冬舎
定価:1300円(税別)
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