今、日本企業のDEIの現状は二極化していると言われている。DEIへの取り組みが順調に進む企業が増えている一方で、成果が思うように上がらない企業や、男女平等の考え方がまだ浸透していない企業も見受けられる。
「女性活躍推進はもういい」という声も、一部で聞こえてくる。なぜDEIに取り組むのか、立ち戻って捉え直す必要がありそうだ。

2024年9月26日、オンラインセミナーVol.15「『温度差』に課題!? 日本のジェンダーの今とこれから」にはESG投資の第一人者であり、SDGインパクトジャパン代表取締役の小木曽麻里さんが登壇。女性活躍推進の現状を俯瞰しつつ、グローバルでのESG投資の状況をレポート。さらに、小木曽さんが今後の課題として指摘する「女性活躍とウェルビーイングの関係性」についても掘り下げた。

女性管理職比率、男女賃金格差、日本は?

2023年4月に、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、そして男女賃金格差の公表が義務化されたことを機に、各企業で社内の多様性推進とジェンダーギャップ是正への取り組みが進んでいる。

政府が2030年までに女性管理職比率を30%に引き上げるという目標を掲げている中、役員数は増加傾向にあるものの、特に上位役職においては依然として女性比率が低いという課題が残っている。民間企業においても、部長・課長・係長といった中堅職への女性登用は進んでいるが、上位の役職ほどその割合は低い

一方、男性の育児休業取得率は大きく向上している。特に1~3カ月の長期育休を取る男性が増加しており、この背景には「各企業で育休を取得するかどうか、またその期間について一人ひとりにヒアリングするようになったことが反映されているのでは」と小木曽さんは話す。

2023年OECDが公表した各国における男女賃金格差のデータ。日本の賃金格差は非常に大きく、男性の平均賃金を100とした場合、女性は65.4に留まっており、賃金格差は36%に達している。 資料提供/小木曽麻里

そして、年々国際的にも重要視されている男女賃金格差。

データの公表が義務化された結果、2023年のOECDのデータによると、日本の賃金格差は非常に大きいことが浮き彫りになった。さらにこの賃金格差には、業種別に見ると大きな違いがあり、特に保険業界、金融業界、小売業界でその差が顕著である。この背景には、責任の少ない専門職やローカル職に多くの女性が従事していることが一因として挙げられるものの、男女賃金格差への具体的な対策をとる企業が少ないことも問題視されている。

「ヨーロッパでは、男女賃金格差の問題が重要視されるようになっており、格差是正を目指す企業が増加しています。こうした動きに対して、日本企業も早急な対応が求められている。男女賃金格差は、組織内のジェンダーバランスを測る重要な指標。この数値が改善されれば、組織全体のジェンダーバランスも向上していると考えられます」(小木曽さん)

日本企業の現状を海外の投資家はどう捉えるか

これまでESGスコアに関して欧米に遅れを指摘されていた日本企業だが、ESG情報の開示が進む中で、大きく改善していると評価されている。

さらに、機関投資家の影響力が強まってきている。小木曽さんは、「ESGの観点から、特に海外の機関投資家は『S(ソーシャル)』に属するジェンダーや人的資本に注目しており、無形資産や人的資本への投資を求める声が高まっています」と述べ、次のように続ける。

「投資家は、人的資本や多様性に対する本質的な理解と戦略を企業に求めています。具体的には、これらの取り組みがどのように企業価値に結びつくのかというストーリーを、企業側が明確に説明すること。また、ジェンダー課題は人材不足やITスキルの問題と密接に関連しているため、多様性を重視した包括的な人材戦略が求められています。インクルーシブで心理的安全性が高い職場環境を整えることで、自然と男女のバランスが良くなります。

単なる数字合わせではなく、本質的な取り組みを進めることが重要です」(小木曽さん)

セミナーでは、この後も、

  • 企業におけるジェンダー平等取り組みにおける閉塞感
  • 今後企業がジェンダー平等をさらに進めていくためには?
  • ジェンダーとウェルビーイング

などのトピックスを紹介。この続きは、YouTube公式チャンネルで無料でご覧いただけます

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