当日の様子より。PUROSIと連携したエンゲージメント調査に特化した会社、HYOUKAのCEOのアキ・クトヴォネンさんによると、イノベーションには「従業員のエンゲージメントと良好なコミュニケーション、時間、支援的な環境」が必要だ。

記事のポイント

  • フィンランド発「PUROSI」が、日本企業のウェルビーイングとイノベーションをテーマにイベントを開催。
  • 北欧企業の価値観やZ世代の特徴を通じ、心理的安全性と多様性の受容が生産性向上の鍵と議論。
  • セッションではコーチングワークも実施し、個人のウェルビーイングが組織全体に与える影響を考察。

日本企業には、組織内の心理的安全性の確保、インクルーシブな組織風土の醸成など多岐にわたる変革が求められている。優秀な人材の継続的な確保や企業の成長のためにこのチャレンジは不可欠であり、多くの組織は新たなステージへの進化が求められていると言えるだろう。

1月25日、渋谷で行われたフィンランド発の人材開発ソリューション「PUROSI」主催のイベントでは、日本の組織が直面する課題や変革の必要性、若い世代の価値観の変化、さらに企業と個人のウェルビーイングに至るまで、幅広いテーマについてパネルディスカッションが行われた。

ウェルビーイングはイノベーションに欠かせない

PUROSI共同創業者のサトゥ・アールマンさんとノーラ・ターグさん。従業員の幸福と可能性、ウェルビーイングを優先することで組織は成長するという。

PUROSIの共同創業者のふたりは「イノベーションを生み出すためには、従業員のウェルビーイングが欠かせない」と語る。PUROSIの調査によれば、エンゲージメントの高い人材は生産性が高く、イノベーションを創出しやすい傾向がある。また、仕事に対するコミットメントも強く、健全な労働環境が整えば、優秀な人材は自然と組織にとどまる。つまり、ウェルビーイングへの投資は、働く人と企業の双方にとってWin-Winのソリューションとなるのだ。また、PUROSIと連携したエンゲージメント調査に特化した会社、HYOUKAのCEOアキ・クトヴォネンさんは、イノベーションには従業員のエンゲージメントや良好なコミュニケーション、支援的な環境が必要だという。

そのために企業がこれらの改善を継続するためにはデータ面でサポートする必要がある

多様な価値観を受け入れるには

パネルディスカッションには、リアクター・ジャパンCEOの井上 淳氏、ノキア 北アジアクラスター長 兼 日本カントリーピープルマネージャーの柴岡千穂氏、ICEYE APAC戦略アカウントマネージャーの渡辺航平氏など、北欧企業の日本人リーダーが複数参加。

セッションの冒頭では、リアクター・ジャパンCEOの井上 淳氏が口火を切った。「労働者に対するプレッシャーが年々増していると感じます」と指摘し、「終身雇用の時代は終わりを迎えました。努力しなければ達成できないという従来の考え方も、見直すべき時期に来ているのではないでしょうか」と提言した。

これに続いて、ノキア 北アジアクラスター長 兼 日本カントリーピープルマネージャーの柴岡千穂氏は、北欧企業で培った価値観とZ世代の特徴について語った。「オープンであること、自分の力を信じることがNokiaのコアバリューです。私はこれを常に従業員に伝えています。40代、50代の方々が価値観を変えるのは簡単ではありませんが、コミュニケーションの透明性を保つことも非常に重要です。Z世代にとっては、自由に議論でき、自分の意見を率直に表現できる環境が当たり前なのです」と述べた。

また、ICEYE APAC戦略アカウントマネージャーの渡辺航平氏は、「日本企業は不確実性を避ける傾向が強く、リスクを取るのが苦手です」とコメント。

ディスカッションを通じて、日本企業が変革期にあること、そして古い殻を脱ぎ捨てた先にこそイノベーションが生まれる環境があることが強調された。

その中でウェルビーイングは、欠かすことのできない重要な要素であるという認識が共有された。

PUROSIのノーラ・ターグさん。セッション終盤に行われたコーチングのワークショップの冒頭で。「なぜ?」と自身に繰り返し問うことで、自分のコアとなる動機、価値観、根本的な優先事項を深く探る。

セッションの締めくくりとして、自分自身を理解し、強みを深掘りする簡易的なコーチングワークも実施。働く個人のウェルビーイングが、いかに組織全体の幸福と連動しているかを参加者一人ひとりが改めて考え、深い気づきを得る場となった。

取材・文・写真/遠藤祐子(MASHING UP)

編集部おすすめ