「テクノロジーの力で社会課題を解決する」
そんな熱意を持ったエンジニアやクリエイターたちが集う場所TechGALAが主催する「HackGALA(ハックガラ)」が、2025年2月6日に開催された。
およそ3ヶ月にわたり、出会ったばかりのメンバーと、社会を変えるアイデアを発想し(アイデアソン)、他者へ共有可能なプロトタイプをつくり(ハッカソン)、プレゼンをする一連のプログラムだ。
記念すべき第一回目のテーマは、「BLACK BOX」。
さて、どんな化学反応が生まれたのか?HackGALAの熱気あふれる現場の様子や、注目のプロジェクトなどをレポートする。
プレゼンター5組と審査員5名。優勝賞金は30万円!
会場となった部屋は、すべての席が埋まり、立ち見の人でごったがえすほどの熱気。観客が耳を傾けるのが、今回予選を勝ち上がった5組によるプレゼンだ。
プレゼンター
- チーム運命
- よりみちガイド
- 迷える子羊ちゃん
- カレー
- ビジョンコード
そして、選ばれた審査員5名がジャッジを行い、優勝者には30万円が賞金としておくられた。
審査員
- East Ventures フェロー:大柴 貴紀
- 株式会社メディアジーン代表取締役 CEO、共同創業者:今田 素子
- 42Tokyo 副理事長・事務局長:佐藤 大吾
- Qiita株式会社 代表取締役社長:柴田 健介
- 株式会社クラッソーネ:松本 哲
バラエティに富んだ課題解決プロジェクトが誕生
1組目:マッチングアプリの課題を解決
1番手のチーム運命は、大学生ならではの視点からマッチングアプリ疲れを課題として設定。
マッチングアプリユーザーの9割はアプリに疲れており、「会話を頑張って続けるのがだるい」「何人も予定を合わせるのがめんどくさい」などの声があるそう。
そこで解決策として、共有体験を軸にしたマッチングアプリ「運命'ker」を提案した。
登録した写真からユーザーの性格を診断したり、イベントで偶然出会うという共通体験を促すことが主目的。もし、マッチングできなかったとしてもイベント自体は楽しめるというアプリである。
2組目:視覚障がい者の移動を解決する
2番手のよりみちガイドは、視覚障がい者の移動を課題として設定。
視覚障がい者を祖母に持つプレゼンターの実体験がもとになって誕生したプロジェクト。
そこで視覚障がい者が楽しく街歩きできるアプリとして、「よりみちガイド」を提案。耳に振動機能を持ったイヤホンをつけることで、曲がる場所で振動したり、周りの風景を音声で解説してくれたりする機能などが実装されている。
3組目:小学生の悩み相談を解決する
3組目は迷える子羊ちゃん。課題は、悩みを抱えている小学生たち。プレゼンで示されたデータによると、およそ50%の小学生が悩みを抱えているとのこと。
でも、親や家族、先生、友達に相談するのは少しハードルが高く、悩みを抱えた状態でどうにもできず留まってしまっているのが現状だ。
そこで相談できる、相談に乗れる相談練習アプリ「迷える子羊ちゃん」を提案。匿名性が高く身バレしないアプリ上で、子ども同士が動物のアバターになり、相談に乗ったり、相談しあったりできる。相談の仕方もまだわからない子どもたちの練習の場として期待された。
4組目:シニアの再就職問題を解決する
4組目のカレーは、ブラックボックスを「加齢」に設定。
「なぜ老いはネガティブなのか」「カレーは熟すと喜ぶのに人は熟すことをなぜ恐れるのか」などのステレオタイプに対する問題提起からスタート。
カレーはシニアの再就職問題を解決するために、IT業界に目を向けた。IT業界は人材不足でありながら、シニアの雇用に積極的ではない企業もまだまだ多いからだ。
そこで、日本で1番シニアを理解する転職サービスを提案。資格と経歴、ハードスキル、ソフトスキルを重要視し、独自の評価制度でシニアを評価する。
何歳まで働きたいか、ITツールのリテラシーなどもヒアリングしながら、人材不足で悩むIT業界との橋渡しを目指す。
5組目:視覚障がい者の就職問題を解決
最終組のビジョンコードは、視覚障がい者の就職をテーマに設定。視覚障がい者であるプレゼンターは、「視覚障がい者の職業が限られている」「教育機会が十分ではない」といった実体験からくる課題を上げました。
そこでプログラミングスキルを身に付けたい視覚障がい者とプログラミングスキルで支援をしたい伴走エンジニアを結びつけるプラットフォームを提案。
音声やAIなどを使うことで、目が見えなくてもプログラミング学習ができるサービスで、目が見えない人と見える人に優しいサービスを目指している。
結果はいかに?
5組のプレゼンが終わり、およそ3ヶ月に及ぶ期間、アイデアを磨き上げてきたプレゼンターに拍手が送られ、弊社メディアジーン代表 今田から、優勝者を発表。
2組目の視覚障がい者向けの街歩きアプリを提案した「よりみちガイド」が優勝した。
よりみちガイドに対して、審査員からさまざまな意見が出た。
「AIでコストも抑えられて、今やるべきサービスなのかもしれない」
「ガイド内容は、みんなか投稿できるようなエコシステムが想像できた」
「考えたことはなかったが、これだけ素晴らしい景色を知る権利は目が見えない人にもある」
「高齢化社会を迎えている日本にとって、みんなが当事者になる問題です。楽しさにフォーカスしたところ、よりみちガイドという名前もすごく良かった」
また、実際にアプリを実装してユーザーに使用してもらったりなど、利用者の声に耳を傾けた部分も高く評価されていた。
すべての発表を終えて、最後に今田からハッカソン参加者にエールが送られた。
5組とも本当に素晴らしいプレゼンでした。
どのサービスも伸び代があります。経験を活かしてブラッシュアップし続けて欲しいです。これからの皆様の活躍を楽しみにしています!(今田)
HackGALAが生み出す未来
HackGALAの現場では、満員の会場で新たな可能性が生まれる瞬間を数多く見られた。
限られた時間の中で課題を深掘りし、アイデアを磨き、プロトタイプを形にしていく過程は苦労が多かったはず。
しかし、そこを乗り越え、単なるアイデアにとどまらない実践的な解決策が生まれていたことに感動した。
また、プレゼンテーションでは、技術先行でなく「なぜこの課題に取り組むのか?」という社会的な視点も重視されていたのが印象的だ。まさに、社会におけるブラックボックスをテーマにした第一回に相応しいフィナーレを迎えたのではないだろうか。
TechGALAをチェック!※本記事は、2025年02月06日掲載のライフハッカー・ジャパン記事の転載です。
制作:ライフハッカー・ジャパン編集部