2025年2月14日、サステナブルコスメアワード2024の授賞式が、東京・代々木で開催された。
2030年、サステナブルが「当たり前」になる?
審査員長の岸紅子さん。アワードの取り組みを「メーカーも消費者もメディアも一緒になって世界を作るチーム戦」と表現した。 画像提供/サステナブルコスメアワード「サステナブルコスメアワードも今年で5回目を迎えましたが、実は2030年で終わるという宣言をしています。2030年までに、地球上に暮らす私たちにとってサステナブルな暮らしが当たり前になっているであろうという希望を込めて、私たちの活動もそこで役割を終えたい」
開会式の冒頭、同アワードを立ち上げた審査員長の岸紅子さんはこう語った。設立当初から掲げられてきた「2030年終了宣言」は単なる期限設定ではなく、「人にも地球にもやさしいコスメが当たり前の時代になる」という強い確信と希望の表明でもある。
サステナブルコスメアワードは、国内初・唯一の化粧品およびファイントイレタリー分野におけるSDGs視点での審査基準を制定した、「人にも地球にもやさしいコスメ」を表彰するもの。環境省森里川海アンバサダー有志が発起人となり、多分野からの専門家だけでなく環境活動をしている学生たちも審査員に起用して、2019年にスタートした。
審査は成分だけでなく、原料の生産現場から商品企画、販売に至るまでの全てのフェーズにおいて、環境や社会への配慮がどのようになされているかを調査・ヒアリングし、厳正な審査を経て決定される。
審査員の一人として参加する元環境省事務次官の中井徳太郎氏は、同アワードの意義をこう語る。
「このアワードの素晴らしさは、単なるエコ商品の表彰ではなく、製品を通じて社会課題の解決に取り組む姿勢を評価している点です。環境保全と経済成長の両立は、これからの時代の必須条件。受賞者の皆さんは、まさにその最前線を走っている」(中井さん)
シルバー賞「竹水フェイスミスト」は、環境問題解決にもつながる
「kiiks」では自然由来の成分100%を目指しており、「子どもが間違って口に入れても安心できるような製品づくり」がコンセプト。「食べるものと肌につけるものは同じ」という考えのもと、安全な製品開発に取り組んでいるという。ファッションモデル、女優として活躍する水原希子さん率いる株式会社KIKOは、2024年2月に、ナチュラルコスメブランド「kiiks」をローンチ。「竹水フェイスミスト」がシルバー賞を受賞した。日本各地で問題となっている竹害対策に取り組む製品である点が高く評価された。
竹害とは、放置された竹林が周囲の森林などに侵食する環境問題のことで、その解決策の一つとして「竹水」の活用が注目されている。水原さんは、三重県桑名市の「桑名竹取物語」という団体と協力し、実際に竹から採取した水を商品化した。
中国では漢方として飲まれていた歴史もあるという竹水について、水原さんはすごく甘くて美味しいと表現。「これをコスメにして、皆さんに竹水の存在を知ってもらいたいと思った」 画像提供/サステナブルコスメアワード映画の撮影のためにダイビングの免許を取ったことがきっかけで、自然を汚さないコスメを作りたいと考えるように。そのような思いをもって自ら起業した水原さんは、これから起業したい人々に向けてこのようなメッセージを送った。
「女性は時に、周囲からの期待や固定観念に縛られがち。でも本当に自分の好きなものを好きと言えたら、そこに人が集まってくるはず。『女性だからこうしなければ』という枠にとらわれず、一人の人間として好きなものを見つけて、喜びを感じてほしい。
今の時代は従来のレールがなくなったような感覚があります。
地元・糸島に根ざした「yokayo」、地方創生部門を受賞
審査員賞の地方創生部門を受賞した、株式会社yokayoの代表取締役・篠田麻里子さん(左)。 画像提供/サステナブルコスメアワード審査員賞の地方創生部門を受賞したのは、女優・タレントとしても活躍する篠田麻里子さんが手掛ける株式会社yokayo。受賞製品「yokayoボディミルク」は、福岡県糸島の天然温泉水を日本で初めて配合した、赤ちゃんから大人まで使えるボディミルクだ。
「私自身、アトピーで幼少期に悩んだ過去があり、原料や製造工程がはっきりと分かる、安心できる商品を作りたいと思って、yokayoというブランドを立ち上げました」
地方創生部門を受賞した「yokayo ボディミルク」。福岡県糸島の天然温泉水を配合し、地域資源の活用と透明性の高い製造プロセスにこだわった。 画像提供/サステナブルコスメアワード篠田さんは自身の子育てを通じて、幼少期から肌をケアすることの重要性を実感したと話す。
「私もワンオペで育児をしているので、慌ただしいお風呂上がりに親子で使えて、化粧水と乳液の2役をひとつで兼ねてくれる、そんなボディケアアイテムがあればと思ったんです。幼少期の肌のケアは、将来の肌の土台になるものと考えています。だからこそ肌にも環境にも本当に良いものを、安心して使っていただきたいという思いで、約2年かけて製品化することができました」(篠田さん)
その思いを形にしたyokayoでは、原料調達から製造まで、プロセスを透明化することにこだわっている。成分や生産者を積極的に開示し、オーガニック認証も取得。地元である糸島の生産者と連携し、廃棄予定だった素材から原料化を行うなど、地域資源を活かした取り組みも特徴だ。
「環境問題は、一人ひとりが意識することできっと変わっていく。yokayoのプロダクトも、土に還るということをすごく大切にしています。使うことだけではなく、買うことも気持ちいいと思える、そんな商品の選択肢を広げていけたらと思っています」と熱意を語った。
2030年へ向けた「チーム戦」、選ぶほどに地球が再生される社会へ
サステナブルコスメアワード2024の受賞者と審査員の皆さん。 画像提供/サステナブルコスメアワード多様な分野の専門家と、環境や社会課題の解決に取り組むブランド代表者が一堂に会し、持続可能な未来への決意を新たにしたサステナブルコスメアワード2024。
審査員長の岸さんは「このアワードはチーム戦。メーカー、消費者、メディアが一体となって、選ぶほどに地球が再生される社会を共に築いていきましょう」と語り、力強く授賞式を締めくくった。
取材・文/田邉愛理
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