女性起業家、女性社長の比率は、企業内の管理職比率と比較にならないほどジェンダーギャップが大きい。
「女性起業家アクセラプログラム」は、2024年度のTOKYO SUTEAMにて採択された女性起業家向けの協定事業者による合同プログラムだ。シードステージからスケールまで、それぞれの得意分野で支援する5社がネットワーキングし、プログラムを提供することで支援を加速させていくというものだ。MASHING UPもその協定事業者の1社になっている。
去る2月19日、合同 Meet upイベントの様子をレポートする。
多彩な講師・メンター陣で最大のインパクトを目指す
スリール代表の堀江敦子さん。 撮影/中山実華会の冒頭では、本イベント主催者の一人であり、アクセラプログラムを提供する「WE Impact Tokyo」代表のひとり、スリール代表の堀江敦子さんより、女性起業家をとりまく現状についての発表が行われた。
金融庁政策オープンラボ「スタートアップエコシステムのジェンダーダイバーシティ課題に向けた提案」をもとに示された具体的な数字を見ると、起業家における女性比率は34.2%なのに対し、資金調達までいった、および上場した女性社長の比率はわずか2%と激減する。これは世界的に見ても低い水準であることがわかる、と起業におけるジェンダーギャップが大きな課題であることを指摘した。
今回、合同Meet upを開催した目的は、5社それぞれの特徴の紹介と参加者が繋がっていく機会にするため。「女性起業家アクセラプログラム」はTOKYO SUTEAMの支援を受け、エコシステムを一緒につくっていくミッションを掲げている。
Women AI Initiative
クオンタムリープベンチャーズのキャピタリスト、高井志保さん。 撮影/中山実華「Women AI Initiative」は、AI時代をリードする女性起業家を育成・支援するコミュニティ。
「誰でもプログラム開発ができることを目的とし、テックメンターがついてプログラミングを学ぶことが可能です。2023年11月よりスタートしており、延べ300人が参加。生成AIで事業計画をつくり、AIで仮説検証を行うなど、セオリーから実践まで学べるメンター、講師陣は第一線の人材が揃っているのが特徴です」(高井さん)
Women AI Initiative https://women-ai-initiative.com/
MASHING UPアクセラレーター
MASHING UPアクセラレーターを運営する、メディアジーンの東井孝允さん。 撮影/中山実華「MASHING UPアクセラレーター」は、メディア企業の強みを活かし、女性起業家を支援するアクセラレータープログラム。MASHING UPと、次世代リーダーのための経済メディア「Business Insider Japan」 が協働し、起業家としての視座を広げ、グローバルで活躍するための基盤づくりを行う。
本プログラム担当する東井は「アイデア段階からのサポートに特化した本アクセラレーターは、シードステージ以前の“起業の芽”を育てることに注力します。起業に必要な基礎知識やスキルを提供し、各業界で実績を持つ講師やメンターがアイデアの具現化から事業の実現まで伴走することが特徴です」と説明。メディア企業の強みを生かし、メディアネットワークに属する経験豊富な「講師・メンター陣」が、勉強会やメンタリングを通じて、アイデアを事業化する実践的なノウハウを伝授。業界のトップリーダーや専門家、投資家とつながる機会を創出できるのも強みだ。
MASHING UPアクセラレーター https://www.mashingup.jp/feature/mashingup_accelerator/
WE Impact Tokyo
「WE Impact Tokyo」の説明をする堀江さん。 撮影/中山実華「WE Impact Tokyo」は、経済的・社会的インパクトの最大化を実現する女性起業家支援プログラム。本Meet upの主催者でもある堀江敦子さんは、次のように話す。
「『私たちの社会は、私たちが変える』というメッセージのもと、事業成長のための事業戦略や組織化・体系化、目指す目標やありたい姿の明確化など、創業後にインパクトを出していく、ドライブをかけていくところの支援を行います。主にマインドセット、経営支援、事業成長がプログラムの軸となっています」(堀江さん)
WE Impact Tokyo https://we-impact.tokyo/
Femtech Community Japan
「Femtech Community Japan」理事の皆川朋子さん。 撮影/中山実華「Femtech Community Japan」は、女性ヘルスケアの課題をテクノロジーで解決する企業、スタートアップなど、Femtech領域の活性化と拡大推進に向けて、事業者とそれを取り巻く有識者・支援者によるエコシステム構築を目指す。
理事の皆川朋子さんは、「タブーの多い領域で、投資家の理解も難しいのが現状。皆さんと一緒に知見を高め、フェムテックのテクノロジーをビジネスに実装していくことを目的に取り組んでいます。また、ヘルスケアだけではなく、女性が働きやすい製品やサービスなどに関連する女性起業家も支援しています」と話す。
Femtech Community Japan https://www.femtechjapan.org/
EYアクセラレータープログラム
EYの藤原由佳さん。 撮影/中山実華EYアクセラレータープログラムは、成長を目指す女性経営者の育成、その事業の拡大を図ること、および社会貢献に資することを目的としている。
EYは会計、税務、コンサルティングなどのプロフェッショナル・サービス事業を展開するサービス企業で、アクセラレータープログラムでは、売り上げ10億からEXITまでを支援、IPOを目指す。
公認会計士でもある藤原由佳さんは「資金調達やIPO視点のマーケティングなど、経験豊富なメンター陣がサポートします。IPOを4回経験した人、グローバルで上場した人、VCのパートナーなど、トップランナーの方々など、成功事例を豊富にお持ちのメンターが支援します」と話した。
EYアクセラレータープログラム https://www.ey.com/ja_jp/about-us/corporate-responsibility/ey-accelerator-program
1分間ピッチと5人に渡す「会いたい人」
撮影/中山実華参加者には、希望する(すでに参加している)プログラム名と「今、会いたい人」をカードに書き込んでもらい、「今日、5人以上の人と繋がってください」と会の活用が呼びかけられた。
また、1分間ピッチを希望する人にも機会が与えられ、「子どもの性被害を生まないための研修やガイドラインの整備」「50代の活性化を促進する研修の提供」「経営管理のAIエージェント」「大学病院の医師向けの専門医検索プラットフォームを開発」など、既にスタートしている事業の紹介が行われた。
参加者による1分間ピッチも行われた。起業には繋がりが重要であり、会いたい人を繋いでいくのはエコシステムの第一歩だ。女性起業家を支援するプログラムはより広がりをみせている。
取材・文/島田ゆかり、撮影/中山実華