小さな胸を「シンデレラバスト」と呼び、小さなサイズのランジェリーが人気を博したブランド「Feast」。美大に通いながら、10代にしてその事業を立ち上げたのがハヤカワ五味さんだ。
スタートして5年を経たいま、一部の事業をクローズし、生理用品を扱うブランド「illuminate」を立ち上げた。

ビジネスを精力的に進めながら、テレビやSNSでも積極的に意見を発信しているハヤカワさんは、ときに強く、ときに弱さを見せながら「何か」と戦っているように見える。その想いや強さの種類、考え方の芯のようなものを伺った。

生理用品通販の「illuminate」を立ち上げる

生理用品販売を事業としようと思ったのには、いくつかのきっかけがあります。もともと女性が多い職場で、毎月必ず休むスタッフがいる。生理だと聞いていないと「体調管理ができていないんだな」と思うこともあったんですよね。

「生理だから休みたい」と堂々と言えないことが、女性が社会進出する難しさに関係しているのではないかと思い立ったんです。

また、大学の同期の卒業制作が生理用品だったのもあり、そのデザインを商品化したいという想いもありました。それで今年、生理用品の通販サイトとメディアをオープンし、生理周期を管理できるLINEアプリもスタート。知って、選んで、考えることをサポートするサイトです。

女性向けのサービスにありがちな「モテ」などの広告を減らしています。「痩せやすい日」「妊娠しやすい日」といった表示もナシ。そんなこと言われたくない人も多いので……。

ユーザーを女性としてではなく、「生理のある人間」として接するように心がけました。だからなのか、デザインやコミュニケーションの評判はいいです。そういうサービスが今までなかったんですよね。

店舗とブランドをやめる決意。辛い感情を予想しておく

新事業のスタートと並行して、いくつかの事業をやめました。細身の人用のワンピースブランド「ダブルチャカ」と、ラフォーレ原宿の店舗「LAVISHOP」を今年の夏にクローズしたんです。

単純に収益性の問題と、うちでしかできないのか、というところ。他の会社でもできるのであれば、私たちが頑張ってやる必要はないので。いずれも、選択と集中のためですね。 とはいえ、やめるのはしんどいです。(例えて言うなら)どんなにダメな彼氏でも、だらだらと続けるほうが楽なのと同じで。

やめるのに伴う心理的コストはいろいろあります。

例えば、決断すること自体が辛いし、スタッフに事実を打ち明けるのも辛い。「これまでにお金をかけたんだから」「こんなに投資したんだから」という心理的負担もあります。感情と理性との戦いですね。でもある程度は、瞬間風速的な勢いで決断してしまいます。

失った後の喪失感や寂しさはもちろんあります。でも、それはある程度予想ができるんですね。予想しておけば、乗り越えられないことはない。想定していたものを甘んじて受け入れるだけです。

自信がないままに、事業が波に乗ってしまった過去

初めて「Feast」というブランドの事業を立ち上げたころは、無理して強がっていました。胸の小さな人向けのランジェリーは、需要が大きく先行していたため、過剰な仕事量や責任が肩に乗ってきたんです。やるべきことと、自分ができることの間に大きな乖離があった。自信をなくすような出来事があると、自分の未熟さをなかなか認められなかったんです。

しんどかった時期はありましたが、経営者でよかったのは、自分のパーソナリティと事業を切り離せたこと。

改善すべき点を指摘されたとしても、それは私の人格についてではなく、ビジネスパーソンとしての部分。また、それを素直に受け入れれば事業にプラスになる。

自信がなくて、外部からの声を受け入れられなかったときは、自分の弱い部分を守り過ぎていたんです。それをやめたのも、私にとっては大きな変化ですね。私が守っていると、相手も守り続けます。それではアドバイスが聞けないし、いい関係も構築しづらい。持っている盾を下ろして相手に寄り添うようにすると、多くの人は同じように盾を下ろしてくれます。

具体的には、早めに自己開示をしますね。その分、相手の言葉によってクリティカルに傷つく可能性もある。そこで致命傷を負わないためには、「死なない程度のライン」を知っておくことです。ここまでは傷つけられても最悪のことにはならない、というライン。漠然としていますが、そういうものは認識しています。

付き合っていたパートナーの言葉が図星だった

自分を守るための盾を下ろせるようになったのは2年半ほど前から。きっかけは、付き合っていた当時のパートナーと別れるときに言われた言葉です。「君は、本当は優しいと思うけど、硬い盾を持っているせいで殻に籠り、相手に踏み込ませないようにしている。それによって、孤独になっているんじゃないか」といった内容でした。それが本当に心に響いたんです。

それからの私は変わったと思う。ただ、今まで付き合いのある人に態度を変えても、関係性が劇的に変わるわけではありません。周囲が変わるには時間がかかるから、人間関係では最近ようやく大きな変化を感じるようになりました。

新しい事業の「illuminate」は今の私に合っているし、メンバーとも、自分を過度に守ることなく関係性を築けています。 1年半前に大学を卒業して時間ができたので、大切な友人とたくさん遊べるようにもなりました。私は友人と思っている人の範囲が広いので、もしかしたら相手は思っていないかもしれない(笑)。だけど、自分の意見の偏りや、自己中心的なところを忖度なく伝えてくれる人たちが周りにたくさんいます。

あとは、私が「本当にもうだめだ」と思った時に駆け付けてくれる人が5~6人ですね。

今でも自信をなくして落ち込むことはあるし、落ち込んだ気分を翌日に持ち込むこともあります。そんな時は、解決するものと解決しないものに分けて、解決しないなら友人に愚痴る(笑)。そうして試行錯誤しながら、新しい「illuminate」を大きくしていこうとしています。

FemTechと言われる女性向けの市場にあるベンチャーで、ものすごくうまくいっているところはまだないと思うから、私たちがけん引していきたい。私たちが上手くいけば、他の会社も資金調達などで交渉しやすくなるはずなんです。この市場がこのまま廃れると、社会によくないインパクトがある。だから、市場を大きくするためにも、初年度は売上1億以上、数年後は国外にも展開していくくらいのスピードで取り組んでいきます。

撮影/柳原久子

性や体の大切さを、等身大の言葉で伝えていく/女性ライフクリニック新宿・産婦人科医 遠見才希子さん

社会課題の解決に取り組む理由は、強い使命感からでも大きなきっかけがあったからでもなかった/GoodMorning代表取締役社長 酒向萌実さん

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