日常では心乱さず、しかしマウンドではハートを燃やす。マリーンズ移籍1年目の石川柊太投手は昨年からマインドコントロールに取り組み始め、今もなお探求の途中だ。
ホークスから移籍1年目となった今シーズン。最初はなかなか援護点に恵まれず、初勝利は7度目の先発となった6月4日のジャイアンツ戦(ZOZOマリンスタジアム)。大きな期待と重圧を背負いながらも、なかなか結果が伴わない日々だったが心を乱すことなく、取り組んだ。
 「変えられないものを変えようとしても仕方がない。平常心。そういうことで心を乱すことにエネルギーを使うのは違うかなとマインドをセットしている。去年くらいから、やれることをやっている上で結果が伴わないのは仕方がないと思うマインドを意識している」と石川柊太は静かに話す。
 屋外球場であるZOZOマリンスタジアムを本拠地で投げる上でいろいろな不確定要素は生じる。雨の日もあれば風が強くて投げづらい時もある。現に移籍後初先発のマウンドは雨天中止でスライドとなった。プレーの中にラッキーなことも起これば、逆に失策やポテンヒットなどアンラッキーな事もある。そんな時に「自分の力で変えられないものを変えようとしても仕方がない。
やれることをやるだけ」と気持ちを切り替える。心乱さず、一喜一憂しないことを、年齢を重ねていくうちに覚えていった。
 ただ石川柊太の場合は平常心でマウンドに上がるわけではない。「平常心がゼロだとすると、燃えるような状況であるプラスも勝負の場では必要。だからマウンドに上がる時は自分を燃え上がらせる悔しい想いとか起爆剤をあえて探し、それをエネルギーというかアドレナリンにする。そういう技術も大事だと思っている」と説明する。
 普段は心をフラットに保つが、マウンドという戦いの場に上がりボールを投じる時はまきに火をつけ、燃やす。まきは悔しい体験であることもあれば、守りたい人を想うことであったりもする。「マウンドではやるかやられるか。その瞬間だけは心を着火する必要がある」と独特の表現で説明をする。
 その意味では6月28日、ZOZOマリンスタジアムでの試合は燃える材料があった。相手は古巣ホークスだ。
「根本的にはどこが相手でも、あまり気にはしていないですけど、マリーンズファンの方に来てくれてよかったと思ってもらえるように結果を出したいと思ってマウンドに上がりました。逆に言うと向こうの皆さまには『アイツ、いいピッチャーだったなあ』と思ってもらえるように。必ずそういうのはFA移籍でつきまとうし、評価がある。そう思われるように頑張りたいなあと思いました」と振り返る。6回を投げて無失点で3勝目。チームは継投で今季初のホークス戦完封勝利を挙げた。
 「悔しかったりとかそういう気持ちを起爆剤、エネルギーにしていく。自分の中で試合に向かって気持ちを高ぶらせる材料を常に持ちながら。ただ試合が終わってしまったらいつも前向きに平常心で。そういうメンタル的な技術を考えている。それは去年の戦いの中で感じたこと」と石川柊太。常により良いピッチングをするためにも心も身体も磨いていく。
そんな背番号「21」を若い選手たちも慕い、相談している姿をよく見かける。夏場の苦しいシーズン。熱く冷静なこの漢の存在は頼もしい限りだ。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)
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