Text by 川浦慧
Text by 山田由梨
山田由梨(やまだ ゆり)
作家・演出家・俳優。2012年に劇団「贅沢貧乏」を旗揚げ、以降全作品の劇作・演出を務める。
「思い入れのある街と人」についての文章を書こうと思った時、宮城県山元町の町民会館で、知らないおばちゃんやおじちゃんたちにお菓子をたくさんもらったことを思い出した。それは2011年4月のことだった。わたしは19歳で、ボランティアをするために、聞いたこともなかったその町に滞在していた。町民会館は避難所になっていたのだ。
山元町での思い出は、たしかに震災のボランティアに行った時のことなのだけど、何かいいことをした記憶としてわたしに残っているわけではない。
ただ何もできなくて、いろんな方々にお世話になって、優しくしてもらって、いろんな物をいただいて帰ってきた記憶としてわたしのなかに残っている。どちらかというとちょっと情けない記憶。後ろめたい記憶。
19歳だったわたしが、一人で、リュックを背負って、ジャージと長靴だけ身につけて、深夜バスに乗って、知らない街にボランティアをしに行ったというだけで、どちらかというと迷惑な行為だったよなと、いまでは思う。でも、そこで出会った人たちはとても優しくて、無謀で何もできないわたしを受け入れてくれた。
1週間ほどの滞在のあいだ、ボランティアセンターでその日に募集されているボランティアを見つけて、その現場に行くということをしていた。おもにどなたかの家の瓦礫の撤去や掃除をさせてもらいに行っていたと思う。やってもやっても終わらない途方もない作業だったし、1日に自分が運べる瓦礫なんて本当にわずかで、役に立っていたのかわからない。たぶんそんなに役に立ってない。
最初は、ボランティアの募集や志願をする掲示板で知り合った地元の女性に、ボランティアセンターのことを教えてもらったり、家にも泊めてもらったりした。猫がいる家だった。すごく良くしていただいた。
避難所の近くに滞在しているあいだ、知り合ったおばあちゃんが「うちにご飯食べに来ない?」と言ってくれて、お言葉に甘えたこともある。
瓦礫の撤去の作業が終わるといつも、避難所に行ってそこに寝泊まりしている方々とおしゃべりさせてもらっていた。家を失い、住めなくなってしまった方々だった。
「今日は、こういう現場に行って、家が泥だらけになってて、それを掃除してきたよ」とか、「タイヤがいっぱい転がってて動かすのが重くて大変だったよ、でもみんなでやってきれいになったよ」とか、そんな話をしに行って、避難所で出会った方々は、「そうなのそうなの」と聞いてくれて、「お疲れさまだったねぇ」と言って、お菓子をたくさんくれた。
「こんなのくらいしかあげられなくてごめんね」って言いながら、おじちゃんやおばちゃんはわたしにお菓子をくれた。わたしがもらっていいのだろうか、と戸惑いながら、「ありがとうございます」とありがたく受け取ることしかできなかった。
どんな被害を受けたかというお話もたくさん聞かせてもらった。「人生の最後まで快適に暮らすために、リフォームしたばかりの家が流されちゃったの」という話を聞いた帰り、わたしには想像できないような喪失と悲しみが無限にあって、でも、わたしの手には袋にぱんぱんに詰めてもらったお菓子があって、なんか情けなくて泣いた。
誰かの力になりたくて、助けたくて、その街に行ったのに、わたしはもらってばかりだった。誰かの力になるには、全然無力だし、助けるなんておこがましかったことを知った。
東京に帰るとき、お世話になった方々に「またきてね」とあたたかく送り出してもらった。帰ってから、避難所で出会った方々としばらく手紙のやりとりをしたり、電話のやりとりをしていた。当時から俳優や演劇をしていたわたしは、「いつかビッグになって仙台で公演やるからね!」などと出会った方々に言っていて、「たのしみにしているよ~」と言ってくれていたけれど、全然ビッグになれてないし、東北で公演をできたこともない。
そもそも、また来るねと言ったのに、山元町には行けてない。あたたかくて大きなみなさんのことと、無力で小さな自分を思い出して、まだまだ誰かを助けるには非力な自分をつきつけられる気がして、ちょっと苦い気持ちになるのだ。
もう11年経った。なんだかあの時のことをようやく正直に言葉にできた気がする。また山元町に行きたいな。
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