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Text by 今川彩香



話題を集めている1話3分半のショートアニメ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』(以下『ミルキー☆サブウェイ』)。今年7月からTOKYO MXでのテレビ放送に加え、公式YouTubeでは11言語にて全世界同時配信され、この9月18日、最終話を迎えた。

その放映後には、『ミルキー☆サブウェイ』全12話を再編集して新作パートを追加した劇場版公開の決定も明かされた。



本作の監督、脚本、キャラクターデザイン、制作というほぼすべての工程を1人で担当し、約2年の歳月をかけてつくりあげたのが、亀山陽平さんだ。映像系の専門学校の卒業制作としてつくった前作『ミルキー☆ハイウェイ』は総再生回数920万回にのぼり、それから本作へとつながっていったという。



個性あふれるキャラクターデザインをはじめ、80年代レトロと近未来感を融合したファッション、お喋り感あふれるセリフ回し、音楽と連動したアクションなどなど、魅力がつきない本作。今回は、亀山監督にロングインタビュー。随所に詰めたこだわりや裏話から、これからのアニメーション制作まで、たっぷり語ってもらった。



—『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』は亀山さんが監督、脚本、キャラクターデザイン、制作という、ほぼすべてを担当されたということですが、「ほぼすべて」とはどの範囲を指すのでしょうか?



亀山陽平(以下、亀山):そうですね。ほかの人に頼んだのは、背景の細かいモデリングだったり、ライティングだったりとか。そういうものは半分ぐらいお願いしてやってもらったという感じです。



—ライティングとは照明のことですか?



亀山:はい。3D作品はカットごとにライトの当て方を設定しなくてはいけないので。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

亀山陽平(かめやま ようへい)
1996年生まれ。

幼い頃から欧米スタイルの手描きアニメーションに憧れがあり、海外でアニメーターになることを目指していた。2016年夏からアメリカ合衆国カリフォルニア州に留学するが、欧米では手描きアニメーションが主流ではなくなっていること、そして3Dという媒体に興味を持ち始めたことから将来の方向性について考え直し、2019年に大学を自主退学し日本へ帰国。2020年に都内の専門学校に入学。2022年2月、個人製作兼卒業制作として作ったショートアニメーション『ミルキー☆ハイウェイ』を公開。フリーランスとして活動をはじめて以降、MV制作や企業タイアップ企画などに参加。2023年から新作『銀河特急 ミルキー ☆ サブウェイ』の制作を開始する。



—制作には約2年の年月がかかったということでした。まず、どこからつくられるんですか?



亀山:まず、自分のリソースとして、どんな規模感の作品になるのかという設計づくりから始めました。12話をつくることはもともと決まっていたので、そのなかで自分ができる数字で言えば(1話)3分半の尺だな、という数字が先に出てきて。



その3分半のなかで一番面白さを保てる物語の流れや、舞台はどういうものになるんだろうというところから考えて、プロットを進めました。その次はキャラクター。どんな魅力があるキャラクターをつくればいいんだろうという、ビジュアル的なところを決めてから、実際に制作に入っていくという感じですね。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—プロットとは脚本のざっくりしたものでしょうか?



亀山:そうですね。ただ自分はプロットのあとは、脚本はあまり細かく決めずに、Vコンテ(動画コンテ)に音を入れたものをつくっていったかたちです。それも3分半という短い尺だったので、それで十分足りると思い、脚本をつくる段階は飛ばして仮映像みたいなものをつくるところから始めました。



—セリフはどの段階で入れるんですか?



亀山:それもVコンテの段階ですね。まず自分で声を録音しないと、そのセリフがどれぐらい秒数がかかるのかがわからなかったので、その尺に収めて聞き取れるかといった確認をしていきます。



—Vコンテの次に、映像を最終段階までつくりあげていくんでしょうか。



亀山:Vコンテの次には声優さんによる声の収録で、その収録の声を全部いただいて、それに合わせてアニメーションを付けていきます。2年間のなかで1番時間がかかっているのは、やっぱりアニメーション制作ですね。



—『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』は、亀山さんが当時通っていた学校の卒業制作として2022年に発表された『ミルキー☆ハイウェイ』の続編となっています。『—ハイウェイ』から『—サブウェイ』につながったのは、アニメ制作会社のシンエイ動画から声がかかったという経緯があったとか。



亀山:そうですね。シンエイ動画さんから「何か作品をつくりませんか」と声をかけていただいて、そのときは具体的に続編を、という話ではなかったんです。

でも、当時「あの(ハイウェイ)2人(マキナとチハル)の話をもっと見たい」という意見も多くあったので、続編をつくってみたいと思いました。だから、自分から「続編をつくります」と提案をし、作品をつくるに至りました。



—『ミルキー☆ハイウェイ』にもこだわりが詰まっています。この企画の発想は、いつ頃から固められたものになるでしょうか?



亀山:『―ハイウェイ』に関しては、じつはつくり始める直前で決めた要素がほとんどですね。当時なんとなく流行っていたシティポップみたいなニュアンスだったり、絵的に映えるほうがいいから、カラフルな宇宙人とサイボーグみたいなビジュアルで、音楽に合わせてアクションを展開しようだったり。とりあえず、その当時にできることを全部詰め込んでつくった、そんなところですね。



—マキナとチハルという、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』にも続けて登場する2人は、この段階で生み出されたということですね。



亀山:そうですね。『—ハイウェイ』の初期は、あの2人は警察官の設定だったんですよ。ただ、警察よりも警察に追いかけられる側のほうがアクションとして展開しやすかったので、警察官はやめて一般人になりました。でも、本当につくる直前まではほとんど構想はありませんでした。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

チハル(左)とマキナ  ©亀山陽平/タイタン工業



—そうして『ミルキー☆ハイウェイ』が『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』に続いていくんですね。

登場人物がとても魅力的ですが、キャラクターデザインについてはどんなふうにつくり上げていったんですか?



亀山:デザインに関してはやっぱり、映えることを優先でつくっています。まずはぱっと見て、魅力的でかっこいいビジュアルであることと、それからキャラを並べたときに色のバランスが取れるような配色にしていますね。



—個人的には、カートくんとマックスくんが特に好きです。この2人は『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』制作以前から監督の頭のなかにいらっしゃったとか。



亀山:カートとマックスは短編のコミックでつくったキャラクターです。ただ、自分は結構制作を途中で投げ出しちゃうことも多くて、最後までやらずに放置していたキャラクターだったんです。今回キャラクターデザインを再利用してみたところですね。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

マックス(左)とカート  ©亀山陽平/タイタン工業



—では、アカネちゃんとカナタくんも、別のところで存在していたんでしょうか?



亀山:『ミルキー☆ハイウェイ』制作中に、こういう暴走族のキャラを出したら面白いなと、妄想程度には考えていたことではありました。新たにキャラをつくるうえで、アカネをつくって、ペアとして少年キャラみたいなのがいたほうがバランスが取れるなと思い、カナタを追加してみた感じですね。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

カナタ(中央左)とアカネ ©亀山陽平/タイタン工業



—例えばアカネちゃんとカートくんの目線の動きや仕草って全然違って、キャラクターそれぞれの動きに個性がありますね。



亀山:キャラクターの立ち振る舞いは、ある程度自分の人生で見てきた特定の人たちに寄せるように決めていて。人間の動きとして説得力のあるものがないと、そのキャラクターが本当に生きているという説得力を持たせられないと思っているので、その個性や動きの細かさはかなり意識してつくっています。



—人の動きを普段から観察されているのでしょうか?



亀山:意識的に観察してるようなことではないと思うんですけど……。やっぱり、つくるときにすごくこだわるということは、自分のフェティシズムみたいなものもそこにたぶんあると思うんです。自分が(観察が)好きなんだと思います。



—亀山さんのフェティシズムが、視聴者にも刺さっていますよね……。さらに、キャラクターのファッションも、80年代のレトロなテイストにされていて、すごくかわいい。ファッションへのこだわりも教えてください。



亀山:「リアルクローズ」であることは大前提としてあって。つまり、現実に存在しないようなシュールな服装をさせてしまうと、自分のまったく知らない世界の、まったく関係のない人たちの物語になってしまうと思っていて。そうなると、共感の余地がなくなってしまうと思うので、まずはちゃんと、現実に存在する類の衣装にすることを優先しています。ただ、それだけだと地味になりかねないので、ある程度は派手であることを意識して、それからキャラそれぞれが一目でわかるような配色にすることを意識しています。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—カナタくんが着ている服のバックプリントに大きく「川崎」って書いてありますよね。あの世界での日本語のフォントってどういう扱いなんですか?



亀山:彼らは地球から移住してきた人たちの末裔で、あの人たちからしたら「川崎」は、伝説のなんか怖い場所、みたいな感じになってて。

よく意味も知らずに「川崎」という文字を入れてるみたいな設定です。



—そうだったんですね(笑)。カートくんのジャケットには英字がプリントされているので、どういう位置づけなんだろうと思っていました。



亀山:カートの服の英字は、マックスがいたずらで入れたという設定にしています。カートのキャラ的に、自分であれは書かないだろうと。そこに文字を入れていることで、また色のバランスが取れる面もあります。



—カートくんは落書きされて怒らなかったんですか?



亀山:でも着てるってことは、そこまで嫌じゃなかったのかなと。



—脚本についても、わーっと同時にしゃべるような、リアルなお喋りの感じが特徴的ですね。意識されたところかと思うのですが、いかがでしょうか?



亀山:みんなが同時に喋り出しちゃうような現象は、現実にも結構あることだと思っていて。それは、あのキャラクターたちが観客に見られるために存在してるんではなくて、普通に生きて生活してるだけ、そういうところも意識してもらえる要素かと思います。作品としてではなくて、生き物を見せている描写として重要な要素のひとつ。キャラクターが生きてるんだというのを潜在的に信じてもらえることが、こういう映像作品ではやっぱり大事なのかなと思うんです。



—また、最終回を拝見して、音楽とキャラクターの動作を合わせる、いわゆる「音ハメ」にもこだわりを持ってつくられているのかなと感じました。



亀山:アニメーションと音楽のつながりっていうのは本当に歴史があって。ミッキーマウスの『蒸気船ウィリー』の頃から——映像に音楽を付けられるようになった頃からいままでずっと活用されている技術で。『トムとジェリー』のカートゥーンアクションもそうですし、あとは前作の『ミルキー☆ハイウェイ』が国内外問わず楽しんでもらえたことを見ても、アニメーションと音楽をリンクさせる演出は、誰でも楽しめる王道の手法だということをやってみて実感したところです。つくる側としても、すごい楽しい。映像ができたときの快感みたいなものがありますから、これからもやっていく手法なんだろうなと思います。



—言葉を超えて伝わるものですよね。関連して、『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』は11言語の多言語配信をされています。



亀山:そうですね。日本語話者の人も、各国の声やセリフを比較したり、違う言語で2周3周見て言語の勉強になったりしているという意見もあって、そういう楽しみ方もあるのかと、意外性はありましたね。



—話がちょっと戻ってしまうんですが……最終回のサブタイトル「マキナ 死す」は「城之内死す」(アニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』第128話のサブタイトル)から?



亀山:アニメーションの王道演出みたいなものを入れつつ、そういう日本の……何だろう、いわゆる俗っぽいカルチャーも入れる楽しさがあるかと思うんです。昭和の「予告バレ」は日本アニメの王道というか、よくある文化だったんですよね。



ちゃんと作品としてつくり込むところはつくり込むけど、そういった表面的に俗っぽいこともしたかったこともあって、タイトルで遊んだりもしました。



—ほかにも「俗っぽく」遊んだところはありましたか?



亀山:9話は、ちょっと俗っぽすぎたかなと思っているんですけど。わりと盛り上がっていたので、今回だけは良しとしようと。でも、そういうノリは日本アニメっぽい空気感だと思っていて。そういった日本アニメの独特のノリみたいなものを、どこかには入れたいなと思っていたので……もう、やりきりました(笑)。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—海外の方からの反応はいかがでしたか?



亀山:海外の人からの反応をあまり見られてはいないので実際はわからないんですけど、たださっきお話ししたことに限らず、例えば天丼など、日本っぽい文化の要素はたくさん入れていて、このアニメがきっかけとなって、そういうものに興味を持ってくれたらいいなと思っています。



—ちなみに天丼は写真ではなく、いちから画像をつくられたんですよね。



亀山:つくりました。結構時間かけちゃったんですけど、食べ物をモデリングするのは普通に好きなので。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—亀山さんのこれまでの歩みについてもおうかがいさせてください。アニメーターを志したきっかけはディズニー映画『アトランティス 失われた帝国』のメイキング映像だったと耳にしたのですが……?



亀山:『アトランティス』のメイキングで、主人公のキャラクターがなにか口論するようなカットのアニメーション制作工程の映像がありまして。俳優さんの声のデータに合わせて、キャラクターのキーポーズのような絵がどんどん動いていく——そんなメイキング映像でした。人の描いた絵がどんどん言葉を喋るキャラクターになっていく、そのプロセスが衝撃的で。ここまでこの域に達したら、アニメーション制作っていうのは本当に楽しいんだろうなと強く思ったことが記憶に残っています。



『アトランティス』に限らず、その時代からディズニーには凄腕のアニメーターの人がたくさんいて。そういう人たちがつくった、例えば『ターザン』のアニメーションなど、人間の立ち振る舞いを生き生きと描いているところが強く印象に残っているんですよね。中学2年生とか、それぐらいの年齢のときでした。



—もともとアニメはお好きだったんですか。



亀山:それこそ、日本のテレビ放送のアニメを毎週見るようなことは全然していなくて、たまにジブリ映画、宮崎駿監督作品を家族で見るみたいな、それぐらいだったんですよ。むしろ実写のハリウッド映画はいっぱい見てましたね。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—そうだったんですね。そこからアニメーターを志して、2Dアニメを学びにアメリカへ留学されたということですが、渡米されたのはディズニーの影響が大きかったんでしょうか?



亀山:ディズニーに限らず、ハリウッド映画をずっと見ていた関係もあって、アメリカの、特にハリウッドのカルチャーにすごい興味があったんです。それを現地で見てみたいっていう思いがありました。制作の現場にも興味があるし、それがつくられるような文化のある国がどんなものなのか知りたかったんです。



—そこからさらに、3DCGアニメーターの道へと転向されて、3Dアニメを学ぶために再び学校に入学されます。それはどういった経緯だったんでしょうか?



亀山:もともと2Dをやりたかったんですけど、欧米の作品は3D作品がどんどん増えているところで。これからの時代、3Dを抜きにしてアニメーションをつくれないんだろう、という気持ちがありました。留学時に受けた授業で少しだけ3Dツールを触ってみたときに、アメリカじゃなくても学べることかもしれないなと思い。そこから、いちから3Dを学び直そうと帰国して、勉強したかたちです。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』で、ほぼすべてをご自身で制作を担当されるというあり方はやはり異例のことではないかと思い、「新しいアニメーション制作」というものに思いを馳せました。



亀山:こんなに小規模でつくるということはそこまでないことかなと思う一方で、技術は日々どんどん進歩していて、これまで通りのありかたでなくてもつくることができる映像や内容が増えています。だから、こういう特殊なつくりかたを採用している作品が出てくるのも、必然的な流れなのかなと。



—いいところは、裁量として自由度が高いというところでしょうか?



亀山:そうですね。自分の価値観というか、好きなものだけを詰め込める。現場の思いつきをすぐに反映できるタイミングがたくさんあるので、そういうフレキシビリティみたいな部分かなと思います。



—とはいえ前提として全部できるということに畏敬の念を抱いているのですが、今後は国内外でも広がっていくのでしょうか?



亀山:『第97回アカデミー賞』アニメーション部門賞に選ばれた『Flow』も、かなりの小規模でつくられたという話を聞きました。そういった体制も増えていると思いますね。逆にハリウッドでは大量に人を投入した結果、とんでもない予算になったうえに、脚本もガタガタになってしまい、商業的にも失敗してしまった作品の話も聞きます。だから、小規模の体制での制作で、短く楽しめるコンテンツが増えていく動きもどんどん加速してきているなと感じます。



—1人で小規模にもつくることができるし、ハリウッドのように大規模な制作もある。そういうかたちでさまざまなコンテンツが世に出てくることに対して、可能性を感じられていますか?



亀山:ハリウッドの大規模作品はやっぱり映像のクオリティなどがとても高いので、そういう意味での見応えもある。一方で、小規模でつくられた作品は新しい発想があったり、尖っていたりもするので、バリエーションという意味で、どちらも存在しているのが大事かなと思います。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—亀山さんご自身が、これから挑戦してみたいことはありますか?



亀山:『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』が、わりとテンポ重視、演出重視のつくりになっていったんですけど、ストーリーの内容を楽しんでくれている人も結構多くて。今回は、ストーリーに関してはそこまで注力できなかったと思っているので、少し凝ったストーリーを含んだ作品をつくりたいと思いますね。そうすると、尺も3分半だと短すぎるため、もうちょっと規模の大きいシリーズをつくりたいなと思っています。



—ストーリーに反響が集まることは、予想外だったんですか?



亀山:自分が思っていた以上に、視聴者はそこを重要視してたといいますか……ストーリーによって、キャラクターを好きになったという人が結構いたので。表面的に好きになるという意味ではビジュアルや立ち振る舞いで十分かなと思うんですけど、もっと深いレベルで感動してくれるということになると、やっぱり物語は重要なんだなと、つくりきって思ったところでもありました。



—例えば、カートくんとマックスくんの取り調べのシーンで、普通の仕事を辞めた理由について語るストーリーラインは印象的でした。



亀山:まさにそこ、6話7話でカートとマックスを好きになってくれたという人が多くいたんです。そこは重要な要素だったなと思うし、でも、もっとうまくつくれるだろうなとも思うんですよ。



『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』完結。実制作のほとんどを担当した亀山陽平監督に制作秘話を聞く

©亀山陽平/タイタン工業



—ほかにも、つくり終わってみて発見したことはありましたか?



亀山:細かい発見はいっぱいあって。反省点で言うと、会話劇メインになりすぎて、キャラクターのアニメーション、動きなどアクションの要素が少なくなってたかなと思っていて。結果として現状は視聴者の多くが日本の方で、もっと世界的に楽しんでもらおうと思ったら、動きだったり、あるいは音と映像のシンクロだったり、非言語的な楽しさをもっと入れないといけないんだと思いました。



—最後に、一つだけ気になっていたことを。クレジットロールで、制作が「タイタン工業」になっていますが……?



亀山:あれは、製作委員会の名前が「タイタン工業」なんです。



—楽しい……。ありがとうございました。

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