Text by CINRA編集部
映画『木挽町のあだ討ち』が2026年2月27日に全国公開される。
2023年に『第169回直木三十五賞』『第36回山本周五郎賞』をダブル受賞した永井紗耶子の同名時代小説を原作とする『木挽町のあだ討ち』は、江戸の芝居町で語り草となった大事件をめぐる物語。
主演は柄本佑。仇討ちに隠された真実に迫る田舎侍・加瀬総一郎役を演じる。総一郎は刑事コロンボを思わせる性格でありながら鋭い観察眼を持ち合わせ、探偵のように事件を暴いていく。
共演は渡辺謙。総一郎が訪れる芝居小屋「森田座」の中心人物であり、仇討ちを成し遂げたその裏で密かに謀略を巡らせていた黒幕の立作者(※江戸時代の歌舞伎における、企画から脚本執筆の総指揮を執る人物)・篠田金治役を演じる。2人の共演は初。
監督・脚本はドラマ『グレースの履歴』で『第42回向田邦子賞』を受賞した源孝志。
今回の発表とあわせてティザービジュアル2種が公開。3分割されたビジュアルには「この町が、観客を目撃者に変えた」というコピーとともに、総一郎、金治、2人の間に赤色の着物を纏い、雪道を歩く女性の姿が写し出されている。
もう一方のビジュアルは、一面に積もった雪の中、事件現場を彷彿とさせる赤い花弁を前に考え込むような総一郎の姿と、その傍に落ちている赤い和傘を収めたもの。「謎は、『江戸の町』で花開く」というコピーが添えられている。
【柄本佑のコメント】
何を隠そううちの父は木挽町の生まれでして、今作の小説が出た時に「これは読まなければ」と、あまり本を読まない僕が珍しく買って読んでた小説なわけなのですが、まさか自分にお話が来ようとは思いもしませんでした。
源監督は出演数の1番多い監督。
スタッフも勝手知ったる旧知の仲間。
皆さんとのお仕事はいつも楽しいばかり。
加えて京都太秦撮影所でのがっつり撮影ですから、隅から隅まで俺得でしかない現場でした。
原作を読んだことのある方は「あれ、どうやって映画にするのん??」と思われるかもですがご安心を。
流石源監督。ホンを読んで「そうきたかぁ」と唸りました。
是非お楽しみにしていただけたら、これ幸い。
【渡辺謙のコメント】
原作を読んだ時、この作品映画でやりたいなと思っていました。源さんから出演をオファーされた時、2つ返事でした。
脚本はミステリーと群像劇の要素が入り、東映らしい痛快なチャンバラ時代劇になりました。
【永井紗耶子のコメント】
この作品は、読者の皆様を江戸の芝居小屋にご案内するような気持ちで書いていました。
【源孝志監督のコメント】
直木賞を受賞して間もない『木挽町のあだ討ち』を映画化したい、監督してもらえないか?というオファーを受けたのは、「赤坂大歌舞伎」「中村仲蔵」など、江戸歌舞伎の世界を舞台とした作品が続いていた時期だった。正直、私的には歌舞伎ものはお腹いっぱいで、半ば断ろうと思っていた。
思っていたのだが……渡された原作を、ついつい一晩で読んでしまった。
生き場所を失って芝居小屋に流れ着いた江戸の演劇人たち。彼らの細やかな悲しみが丁寧に織り込まれたエピソードが、重層的にストーリーを動かし、次第に仇討へと収斂されていく展開が見事だった。
脚本をどう書くべきか? と悩んでいた頃、別作品のミーティングでたまたま会った渡辺謙さんが、「『木挽町のあだ討ち』読んだ? あれ、面白いよね。映画にならないかなぁ」と私に言った。私はシレッと聞き返した。
「謙さんなら、どの役がやりたいですか?」
「そりゃ〇〇〇でしょう?」
「いや、△△の方がいいと思いますよ」
「何それ? 源さんが撮るの?」
「いやいやいや…」
キナ臭い役者と監督の会話である。
この作品を映画化するにあたって、一つ難度の高い問題があった。
私に監督を依頼したプロデューサーは、この人情溢れる物語を、サスペンスタッチのエンターテイメントに仕立て上げて欲しいという。無茶な話である。
この無茶振りに対する打開策を数日ぐるぐると悩み、やがて唐突に「解」を得た。
ダラっと家で見ていた『刑事コロンボ』の再放送が、その『解』をもたらしてくれた。
コロンボの如く、ニュルっと仇討ちに隠された謎に切り込んでいくのは、原作では一言も喋らない男。
すぐに、柄本佑のニュルっとした笑顔が思い浮かんだ。
その前に立ちはだかるのは、渡辺謙率いる、クセ強めの〝森田座アヴェンジャーズ〟。彼らが守ろうとしたものはいったい何なのか? 役者の顔が見えてきたら、脚本は一気呵成に書き終えた。まだ完成前だが、原作を読んだ読まないにかかわらず、最後まで疾走感を感じるエンターテイメントになっていると思う。
【須藤泰司プロデューサーのコメント】
クリスティの『オリエント急行殺人事件』を江戸の町に置き換えたような上質のミステリー、粋で痛快なストーリー。
【ストーリー】
ある雪の降る夜、芝居小屋のすぐそばで美しい若衆・菊之助による仇討ちが見事に成し遂げられた。その事件は多くの人々の目撃により美談として語られることとなる。1年半後、菊之助の縁者と名乗る侍・総一郎が「仇討ちの顛末を知りたい」と芝居小屋を訪れるが…。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞く中で徐々に明らかになっていく事実。果たして仇討ちの裏に隠されたその「秘密」とは。そこには、想像を超える展開が待ち受けていた——。

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