サントリー食品インターナショナルはこのほど、同社が展開する「社長のおごり自販機」の利用状況から、雑談がちょっと生まれやすくなる5つの条件を発見したと発表した。

「社長のおごり自販機」とは?

「社長のおごり自販機」とは、社員2人が自販機の対象部分に2枚の社員証を同時にタッチすることで、それぞれ1本ずつ飲み物が無料(費用は会社負担)でもらえるというもの。
職場で雑談のきっかけをつくる自販機として、2021年10月から首都圏エリアでサービスを開始し、2022年5月から全国で展開している。

企業では、コロナ5類移行に伴う出社回帰の流れに伴い、フリーアドレス制の導入・社内運動会の実施・社員食堂の充実など、社員同士のコミュニケーションを活性化する取り組みが増えている。そのような中、同サービスの設置企業は、導入から2年で360社を超え、設置台数は昨年比で3倍規模に増加。累計利用者は延べ600万人(300万ペア)を突破したという。

同サービスは、"あいさつ以上・食事未満"の気軽なコミュニケーションが生まれやすくなるのが特長で、利用者からは「気軽に話しかけやすい」「出社する楽しみが増えた」「初めての人でも話しかけやすい」などの声が寄せられているそう。

そこで今回、「雑談がちょっと生まれやすくなる条件」を探るために、雑談研究者・清水崇文氏(上智大学 言語教育研究センター教授)による監修の下、設置企業120社を対象にアンケート調査を実施。
また、同サービスの利用方法と合わせて分析した結果、「雑談がちょっと生まれやすくなる5条件」を見出したとしている。

条件1:「終わりの時間がよめる」

調査によると、職場での同サービス利用時の雑談時間は「約3分」、長い(負担になる)と感じる雑談時間は「約9分~」との結果に。また、なぜ「社長のおごり自販機」で雑談が生まれていると思うかとの問いに対し、「誘われる側も気軽に応じられる」(1位)、「気軽に誘いやすい」(3位)を挙げる人が多いことがわかったとのこと。

同サービスを利用する際は、誘う相手と自販機へ向かい、飲み物を受け取るまでがひと区切りで、時間にして数分間となる。誘う人・誘われる人の双方にとって"終わりの時間がよめる"ということが、気軽に雑談ができることへ寄与していると分析している。

加えて「約3分」という結果は、職場では、業務のすきま時間に収まる短さがよい(ちょっとした息抜きになる一方、業務の邪魔にならない)ということも考えられるのだとか。
また、短い時間で雑談を終えることで「もっと話したい」と、繰り返し誘う行動にもつながることから、「少し物足りないな」と思えるくらいの短さ(=約3分)がちょうどよい、つまり雑談は「腹三分目」くらいが適切といえそうと説明している。

条件2:「ながら・ついで」

前述の質問で、2位に入ったのは「無料で飲み物がもらえるから」だった。雑談の場面は、飲み会など雑談をする目的で集まる場合と、作業中など何かをしているついでに雑談をする場合に分けられる。同サービスでは、無料で飲み物を受け取りにいく行為をしている"ついで"に雑談が生まれており、"雑談をするために一緒にいる"わけではないので、よりリラックスした状態で会話が生まれることにつながっていると推測している。

反対に「ながら・ついで」の場面では、たとえ雑談が生まれなくても、気まずい空気になりづらいということも考えられるという。

条件3:「共同作業」

次に、6位の「タッチする際に共同作業が発生する」に着目。
同サービスは、社員2人がそろって自販機へ移動し、2枚の社員証を同時にタッチすることでそれぞれ1本ずつ飲み物を無料で受け取り、一緒に飲むことができるという仕組みになっている。

同社は、このような共同作業は、仲間意識の醸成につながると指摘。「一緒に自販機に向かう」「社員証を同時にタッチする」「一緒に飲む」などの共同作業により心理的距離が近くなり、仲間意識が育まれ、雑談が生まれやすくなっていると分析している。

条件4:「目の前にある共通の話題」

続いて着目するのは8位の「飲み物という共通の話題があるから」。「社長のおごり自販機」を利用する際は、誘う/誘われる双方の視界の中に、自販機そのものや飲み物という共通の話題がある状態となるそう。

天気の話や景色の話など、目の前にあるモノや出来事といった共通事項は、雑談の格好の話題だ。
相手も自分も同時に認識できる対象について話すことは「共通点の確認」をすることになり、相手との心理的距離を縮めるのに役立つとのこと。

条件5:「適度な距離でヨコ並び」

4位の「自販機まで移動しながら話ができる」にも多くの回答が集まっているという。

適度な距離感

自販機に向かって歩いている際、社員証を自販機にタッチする際などに、適度な距離(50~100cm程度)が生まれる。これは、相手の表情や雰囲気がわかり、個人的会話をするのに適した距離(個体距離)に該当するのだとか。

相手との関係性にもよるが、近づきすぎると緊張感が高まり、距離があると形式ばってしまうため、近すぎでも遠すぎでもない距離は、まさに雑談に適した距離といえるそう。

位置関係はヨコ並び

同サービスは、2人で一緒に自販機に向かう際も、社員証を同時にタッチする際も、位置関係としては「ヨコ並び」。
「正面同士」では、圧迫感を感じて、相手の一挙手一投足に敏感になり、緊張感が生まれやすいが、「ヨコ並び」の位置関係では、距離が適度にひらき、視界が開け圧迫されず、リラックスしやすい効果がある。これも雑談が生まれやすくなっている要因のひとつと考えられるとしている。